工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

友達甲斐のない我

9 soku
友人との久々の食事処に向かったのは祭りの最終日に当たる雨の午後。
雨の中を法被と兵児帯で決めた若い男女がうつむき加減に歩く傍を走り抜けていく。
車1台がやっと通れるという入り組んだ住宅地の奥まったところにあるようだが、目的地を指し示すカーナビでも迷いに迷って、やっと辿り着いたのだったが、その空間だけは傾斜地を巧みに使った思いの外開放的なエリアだった。
何やら不思議な店構えの「パヤカ」というアジアンレストラン&ショップ。
アジアンテイスト、あるいはバリの風物に彩られた異空間。
既に友人は来ていたが、誘われるままに食事の前に隣接している古道具屋の「9 soku antiques」にお邪魔する。
画像でご覧のように、何か映画のセットのような空間。
白磁、花器、ライト、什器、弦が切れたウッドベース、家具など。
主の趣味なのか、小さな小さな器を中心としたコレクションであったが、その白磁がとても良かった。
オーナーは30代の白い清楚なTシャツの男性。古道具屋の主人と言えば、気難しそうなオヤジという通り相場のイメージとはかけ離れ、「これまけなさいよ‥‥」と言えば「いくらなら良いでしょうかね‥」と気弱に応えそうなやさしく、おっとりしたお兄さん。
福祉の仕事をしながらの2足のわらじという。
こんな判りにくい場所での店舗運営だと経営もさぞ大変だろうと思わされるが、ディスプレー、道具収集にセンスを感じさせる店なので成功するだろう。
店舗の片隅に置かれた小さなデスクにiMacがあったので、しばしMac談義。Webサイト構築、クラウドコンピューティングの現状やら、iTunes管理の裏技 etc.
孫とジジみたいな年の差の客からMac指南をされるのは気分の良いはずもないが、素直に聞き入れてくれる。
Webサイト構築などでは、今や技術的な領域のハードルはめちゃくちゃ低くなっているので、むしろ重要なのはコンテンツとデザイン。
この若者にはあふれんばかりのものがあるだろうからITテクノロジーの差異など問題ではない。
iTunes プレイリストを拝見すれば、Glenn Gould などのピアノ曲を中心としたクラシックがほとんど。
ボクなどより、よほど純粋なんだろう。(かつてはボクにもそのような頃があった、かな)
店内でBGを流すなら、ちょっとくだけて、高橋アキのサティーあたりが似合うようなお店だ。


邪魔したことを詫び、「パヤカ」に場所を移し、既に満席近い店内の一角に席を占める。
パヤカ1生春巻き、野菜のオーブン焼き、オムレツ、そして数種のカレーに舌鼓を打つ。
お酒が恋しいが、50kmほど走行しなければ帰れないので諦める。


パヤカ2友人とは「邂逅」というほどのものでもないが、久々の会食。
家族、仕事、社会、人生、ボクと同世代の者であれば誰しもが抱える様々な問題に留まらず、彼独自の困難な問題もあり、適切な助力も助言もできない身を恥ながら、聞き役にまわる。
今の時代、抱える問題は個人的なものとはいえ、その個人には如何ともし難い壁の厚さがあり、それを突破して、明るい未来を切り開くというのは容易ではない。
会って話しを聞くだけでは、その重荷の負担軽減に寄与できるはずもないのだが、共有することに何某かの意味はあると思いたい。
美味しいカレーを提供してくれたパヤカのシェフにも感謝しつつ降り止まぬ雨の中、友と別れた。
ともかく日々生きていくのが人生というもの。
それぞれの人生を確認しつつ、重い足取りであっても、明日になればまた足を踏み出すことができることを感謝する。
その先に希望を持てるかどうかは、個としての生への欲望の強さと、類としての社会的コミットへの責任の果たし方か。
パヤカ

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  • わー。
    古道具屋さん、すっごくステキ空間デス!
    早速チェックしてみたら浜松市鴨江。
    実はワタクシ、小学1年から3年まで鴨江小学校に通っていましたー。
    地理的なことはもう殆ど覚えていませんが
    機会があれば行ってみたいです。

  • サワノさん、あのあたりにいたんですか。
    シティーガールというワケじゃ。
    この古道具屋の主(あるじ)、あなたと同年代か、少しお兄さんだね。
    話が合うんじゃない。
    Mac教えたがりはちょっと控え気味に接近してみてください。
    ‥‥ そうそう、とても細い路地裏を抜けていくアプローチですので、暴走は控えてくださいね。

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