工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

角ノミの刃を研ぎ上げて

角ノミでホゾ穴作業をしていて、少し慌てた。
煙がモクモクと上がったからだ。

作業は中断され、錐を研ぐ。

15mmのものだが、家具のホゾ穴としては比較的大きなサイズだ。
それだけ負荷も大きく、被加工材によってはこうしたこともままある。

ままあるとは言え、要するに切れが止まりつつあることの指標が“煙りモクモク”なので、研ぐしかない。

こうした錐の研磨は皆さんどのようにされていらっしゃるのだろう。
旧来のヤスリでシコシコと。ダイアモンドヤスリでシコシコと‥‥。

いろいろな方法があると思うが、やはりボクはグラインダーでの研ぎが具合がよい。
切削力もさることながら、シャープに仕上がるからだね。
(というより、手持ちでのヤスリ作業が下手くそなだけ?)

グラインダーを回す前、あらかじめ研削部、および刃先角度をしっかり確認し、
回転砥石にはあまり強く当てず、軽く、しっかりと安定した角度で当てること
近くに冷水を用意して、焼きが戻るのを抑えることも重要

この際、せっかくだから箱の方も研いでおこう。
うちでは三角錐の砥石を6mm軸のトリマーに取り付け、研いでいる。
丸い軸のハコ刃を固定するのは難しいが、手持ちのトリマー装着砥石で、案外うまくいくもの。

三角錐の角度は30度ほどだろうか。

こちらもあまり強く当てない方が良いし、トリマーが可変速であれば3,000rpmほどに落としてやると、なお良いだろう。

研削すると、刃返りしてバリが出るが、これは番手の細かいダイアモンド砥石などでサッと取っておくと良いだろう(研ぐ、という感覚だと、サイズが変わるので具合が悪い)

それぞれ、しっかりと工具油を注しておこう。

〈余談〉
こういう業務上におけるテクニカル的な記事は、価値中立的で実にラクチン。

社会がどうのこうの、原発がどうしたこうした、菅降ろしがどうなった、などと
価値判断が一律ではなく、相反することすらある問題を取り上げるのは疲れる。
読者も疲れるよね。

でも、時代が大きく変わろうとしている時に
「テクニカル的閉鎖空間」
「工芸至上主義」
「芸術至上主義」
に閉じこもっていることにはホントに耐えられないからね。

hr

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  •  箱を下手に砥ぐと、矩も狂いますね、昔イタイ目に遭いました。

     余談のおしまいのくだり、同感ですねぇ。
     「技術」「芸術」などは都合のいい逃げ場になることが多いですね。
     「技術」「芸術」は仰る通り、「中立的」であるべきもの、そこで水掛け論や、重箱の隅つつきをする必要は全く無いですね。
     僕も耐えられていないですし、それに対して何かをする術を知らない状態ですが、他に閉じこもったり逃避したり(つついてみたり)は止めようと思っています。

    • たいすけさん、
      〈余談〉の後段ですが、こうした領域の話しは、実際はかなりビミョウなもので、個々の振る舞い方は様々ですよね。

      でも仰るように判断停止、思考停止、の言い訳として「○▽至上主義」に“逃げる”のは、処世の道としてはあまり誠実なものとは言えないでしょうね。
      苦悶し、葛藤しながらも、真摯にその事態に向かい合い、深く考えるプロセスというものを記述するという姿勢でありたいと思いますね。

      (数日、留守していてレスが遅くなっちゃいました \(__ )

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