工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

山形から世界へ(奥山清行氏の挑戦)

「イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした男」・プロダクトデザイナー奥山清行氏による「山形工房」展開、その頂点とも言えるスポーツカーをともに制作した「モディー社」のジュネーブ・モーターショーへの出品までを追う。
今日(5月1日)のNHK「クローズアップ現代」だ。
奥山氏はカーデザイナーとして、その世界的評価を高らしめたニンファリーナ社を辞めた後、イタリア・トリノ、ロサンジェルス、東京、山形にオフィスを構える。
山形は故郷でもあるが、苦闘する地場産業に乗りこみ、歴史的に培われてきた世界に誇る職人技術を再生活用し、新たにデザインし、これを首都圏に売り込む、のではなく、一気にパリ、ミラノへと出展、評価を受けていくという戦略。
自動車、鋳物、染織、家具など、山形に古くからある様々な地場産業の職人技術を活性化させ、これを優れた世界的デザインで製品化し、世界へと売り込む。
いわばデザイナーとしての本来の職能、使命を全面的に展開している頼もしい男。
恐らくは国内展開では、その評価を受けるまでには様々なプレゼンテーションや、コネクション、人脈をたどりつつの、かったるい時間と経費を要して、しかしそうした代償の割りには受ける評価は必ずしも正当なものとはならない。
そこでいきなりパリ、ミラノへ出展し、魅力あるものを正当に、かつ「Modern Vintage of Japan」という味付けをキラー戦略として売り込むことで、ストレートな評価を勝ちとることができる。


こうした奥山氏の「山形工房」展開の最終仕上げがスポーツカーだ。
それまでは試作屋でしかなかった小さな町工場の職人達を奮い立たせ、すばらしいレーシングカー様のスポーツカーを制作し、ジュネーブ・モーターショーへ出展する。
ボデーは軽量化をねらってカーボンファイバーとアルミ。無塗装。
MacBook Airもアルミ合金(おっと、余談だった)。
その成果は大きく1,500万円の車への注文が殺到している。
日本の技術と、品質、開発力の底力というものを見せてくれるものであった。
家具は天童木工、他数社のものがちらと出ていた。
「山形工房」、「モディー社」にはぜひ成功してもらいたいね。
彼らにはジャパンブランドの品質と、魅力を売り込む世界戦略の突破口を作ってもらいたい。
三宅一生のように、あるいはイサム・ノグチによる様々な日本におけるデザイン業績のように。
やはり制作するのは職人集団であったとしても、これを高度なレベルで優れた商品としてデザイン、制作し、かつ販売戦略まで練り上げるまでの一貫したプロセスとシステムを担うのは、才能と強い意志をもつ一人のデザイナーであるというところに鍵が隠されているのだろう思ったね。
Macが優れているというのもスティーブ・ジョブズという男の存在があることによる、というのと同じように(おっと、またまた余談であった)
個人的にはイタリアの「チェコッティ社」の工房の様子が取材されていたので、これは想定しなかっただけに嬉しい。
ウォールナットのベンチ(ラブチェア)の制作途上だったかな。
チェコッティ社長、まだ若いね。
《参照》
奥山清行オフィシャルサイト
山形工房
モディー
過去関連記事
イタリア・チェコッティ社

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  • 過去の記事でチェコッティ社が取上げられた時に
    千円払ってカタログを取り寄せました。
    その価格にも驚きましたが、「これで大丈夫なの?」という
    感じのいかにもイタリアらしいデザインでした。
    時々、大丈夫じゃないことがあるのがまたイタリアらしい
    所でしょうか。

  • acanthogobiusさんは番組をご覧になりましたか?
    わずかに2分ほどの枠内での映像でしたが、職人の誇らしげな姿が印象的でした。
    (手で一所懸命にサンドペーパー掛けしているおばさんもいました)社長のチェコッティ氏は手触りの感触を大切にしているようでしたね。
    ぜひ、目黒本店、あるいは銀座和光で触れてみてください。
    >時々、大丈夫じゃないことがあるのがまたイタリアらしい所
    爆笑 !

  • TBありがとうございます
    すでに放送されていたのですね
    artisanさんもいきなり「カンブリア」に出演したりして

  • 地場産業の国際化

    昨夜 カンブリア宮殿 を見ていたら急須の逸品が紹介されていました山形県の一地場産業の会社が作ったものですこの会社は茶の湯の茶釜を作っていたそうですが近年頭打ちだったそ

  • 奥山さんは地方に活動拠点を定め、ここからいきなり海外へと発信していくという発想がすごいですね。
    当地はテレビ東京の視聴エリアではないので視たことがありませんでしたが、ケーブルでは視られますので、チェックしましよう。
    村上龍のインタビューは興味ありますからね。

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