工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

親方工房への訪問

ロールトップ部材
資材調達などの所用で静岡の街に出掛け、途中元親方の工房に出向く。
過日訪問された時に依頼された(というより、申し出た)ロールトップ(鎧戸)デスクの内部、宮部のデザインに関わる資料の提供のためである。
既に木取りが進んでいて1台の机用とも思えぬ分量の部材がきざまれつつあった。
ホンジョラスマホガニーを主材としつつ、ロールトップに当てる材料は、様々な色調の材種が積み上げられている。
象嵌のためのものだからだ。
ロールトップの仕様には様々な手法があるようだが、彼が以前制作したものは、琴糸でテンションを掛けるというものであった。
今回はさらに伸縮性が少ない、別のものを選択したという。
化学繊維の高度化は年々進んでいるようなので、そうした視点での選択なのだろう。
仕口などの話しで盛り上がっているところへ、TV局スタッフが訪れて取材の打ち合わせが始まったので、これを潮に帰路に就いた。
オンエアはは8月になってからだが、また詳細が判ったらお知らせし、ご覧いただきたいと思う。
全国各地域、様々な民放系列局の1局が放映する。(発見・人間力


70歳を越える木工職人の晴れ舞台でもあるだろうから、本人もかなり緊張気味であることも伺え、「これやりきるまでは死にきれない」などといつになく真剣な眼差しを向けて寄こした。
本人が懸念する鎧戸への象嵌については長く交流のある金沢美大のM教授からもアドバイスを受けたようであり自信ありげであった。
TV取材という、〆切をはじめいくつもの制約の中での制作とはいえ、親方は滞りなくやりきってくれるだろう。
もし心配があるとすれば、「これをやりき」った後、気が抜けてしまい老いてしまわないか、ということ。
あまり全霊を注ぎ込むというようなものではなく、いつもの淡々としたマイペースで、長い、長い木工人生というものを総括させるような良い仕事を見せてもらいたいとつくづく思う。
そうそう、このロールトップを親桟に嵌め込み開閉するための鎌錠が必要となってくるのだが、これに適合するスガツネの鎌錠が1個単位では入手できないとい言う。
ボクの手持ちの分を提供することにしたことを忘れないようにしなければいけなかった。(メーカーからの供給は箱単位での取り扱いということのようだが、ちょっと納得いかない話しではある)

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