工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

チョコレートブラウン

ブラックウォールナット
ブラックウォールナットの色調を言い表すのに、最もふさわしい名称は何だろう。
物の本では「紫褐色」、「暗紫褐色」などと紹介されることが多いようだが、実はその実態は多様であって様々な色調を見せてくれる(魅せてくれる、と言いたいほどだ)。
もしや違う材種なのでは、と思わされるほどに異なる色調のものもあったりする。
また一方、近年では市場に流通しているその多くが、色調においては本来備わった色が損なわれ変化させられてしまっているので、元の色調をご存じのない職人もいるとのことだ。
過去、このBlogでも何度も触れてきたように、人工乾燥の過程で詐術されてしまっていることによる。

※ 人工乾燥の過程で詐術( = 歩留まりを改善させる目的で、心材の色調を白太部分に移行させるのだが、その結果心材の本来の色調は失われ、平板な灰褐色に劣化する)

また、特徴的なこととして、良質なものでは木理が絡むとともに、いくつかの色調が縞状に交錯することもあり、そうしたことも化粧的価値を高めるものとして高く評価される要因となっている。
ボクの見立てでは、このような縞状のものは別としても、本来の良質なブラックウォールナットの色調はと問われれば、チョコレートブラウン、と答えよう。
オイルフィニッシュで美しく装えば、まさに良質のチョコレートが溶け出す時のあの艶めかしい魅惑的な色に近似する。
アフリカ系アメリカ人として初めてオスカー主演女優賞に輝いたハル・ベリーHalle Maria Berry)(2001年『チョコレート』)のような、と言えば分かりやすいだろうか(どういう意味って‥‥、そういう意味さ)
ここ15年来、ボクが用いる用材の5割ほどはブラックウォールナットで推移してきている。
これにはくつかの要因があるわけだが、この色調というものにノックダウンされてしまっていることが実は大きいのかも知れない。
(過去、鉋掛かりが良いだとか、反張しにくい安定した木だとか、加工していて快適だ、などと語ってきたわけだが、やっぱりここは単純に色と言ってしまおう、というわけだね)

Chocolate

画像は現在進行形のキャビネット脚部。
本体は刻み始めたばかりなのだが、先に仕上がった方の脚部には軽くオイルを。
このところの天候不順続きの環境に生地のままで捨て置かれれば具合がよろしくない。
オイルを拭いておけば少しは防御できるからね。
乾燥して良いお天気だった先週末に組んだので接合部が切れてくる恐れは無いとは思うが、オイルを拭いておけばなお安心というわけだ。
では今夜は一粒の溶ろけるような生チョコを舐めなめ、スコッチでも傾けて‥‥

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