工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

テーブルの脚は無用か

テーブル脚組み上げ
ある著名な木工家の個展で作家本人から伺った話。
「テーブルというのは天板さえあれば使えるんだから、脚なんて無くて良ければそれで構わない」
空中浮遊できるならそれでも構わない。機能としての天板があれば十分、ということになるのかな。
確かに正論でもあり、また暴論でもあるね。
しかし現世では脚がなければテーブルとしての機能を満たせないというのがニュートン先生から教えられた万有引力の法則が貫かれる地球上の法則。
そうであれば、あと問題となるのは工学的解析であり、またデザイン学の世界の話しになる。
要するに求められる天板のボリュームに対し、十分に使用環境に耐えられる脚部の構造的強度があるか、家財、調度品として求められる意匠と仕上げ精度、つまりは美しさがどうであるか、ということである。
如何に天板が立派なものでも貧弱な脚部では、構造的にも意匠的にもバランスが悪い。
また小ぶりな天板にあまりに重厚な脚部を付けても具合が悪い。
要するにバランスだ。
テーブル脚、塗装今日はウォールナットの大きなテーブルの脚部を仕上げ、やっと組み上げ、塗装の第1ステップまで進めることができた。
これはズリ脚と上部の吸い付き桟の位置関係がずれて垂直ではないので、ちょっと組み上げるのが大変。
そんな理由もあり、2脚1セット分を然るべく、ずれ調整を補正させてのプレス機での組み上げとなる。
枘のストロークも90mmほどあるので、他の方法では正しく組めない。
しかしウォールナット(但し天然乾燥のもの)のオイル塗装は、実に美しく変化するね。
ところで天板とのバランスはどうかな。また後日画像upできれば良いのだが。

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  • これだけ太い材を天然乾燥させるには先を読んだ準備と
    時間が必要ですね。在庫負担も大変です。現代の工業生産的な考え方では
    なかなかできないことです。
    ジョージナカシマの作品の写真を見ていて重厚な天板に華奢に見える
    脚が意外にバランス良く見えることがあります。
    必要な強度があるのかどうかは私には分かりませんが。
    日本の住宅事情が考えると脚はなければない方が良いというのは
    分かるような気がします。
    小さなテーブルに4-5人が座っているのが日本の食事風景という
    感じです。

  • ジョージ・ナカシマのテーブルには教えられることが多いですね。
    彼は元は建築を学んだ人ですので、構造力学には長けていた人であるのでしょう。
    確かに日本の住環境でのテーブルとは、いわゆるちゃぶ台からですものね。
    個食と言われる現代の食事風景と較べ、果たしてどちらが幸せな光景なのかビミョウなものがありますね。
    建築分野において家族の在り方というものが問題設定されることもあるように聞きますが、家具の分野においても同様に重要なものかもしれません。

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