展示会を終え、次なるステップに
日本橋三越本店での、2週間という長〜い展示会が終わった。
別注での制作依頼を含め、“それなりの”成果をもたらしたが、それとともに東京都内での開催ということで、多くの顧客、知人、友人などが訪れてくれ、励ましの言葉を頂戴し、旧交を温める場になったのはありがたいことだった。
百貨店での展示会は個展、グループ展、それぞれ少なくない数での経験があるものの、初めての日本橋三越本店ということで、いくつもの戸惑いもあったが、定時に奏でられる中央吹き抜けの2階に設えられたパイプオルガンの荘厳な響きは、老舗百貨店ならではのもので、それらにも助けられ、心地よく過ごすことができた。
売り場担当の一人からは、いわゆる”手作り家具“をテーマに訴えよう、とのアドバイスを受けたものの、内心では却下。
通路を挟み、隣にはカッシーナ、アルフレックス、ドレクセル、といった東西の高級家具メーカーの品々が並ぶという売り場環境。
そんな場所で、”手作り家具“トークは確かに異彩を放つものとして訴求効果はあるかも知れないが、手垢で汚れたそんな”営業トーク“は使いたくは無い。
品質での真っ向勝負でいかなきゃ、○△がすたる。
ところで、日本橋三越本店の家具売り場は、他の百貨店同様、昔と較べれば店舗床面積も狭くなってきている。スタッフに聞けば担当社員も半減以下の寂しさだという。
しかし、まだまだ他と較べれば、かなりの床面積で展開していると言えるだろう。
そんな中、気づいたのは、いわゆる家具産地のメーカーものは皆無と言っても良いほどに扱われていない。
輸入高級家具が半分近く占め、残りの半分がカンディハウス、他、ダニエル、マルニ、カリモク、柏、飛騨産業、等々といったラインナップ。
つまり、品質、ブランド力、オリジナリティーが明確で無いと、市場からは排除されてしまうということである。
こうして、いろいろと学習させられた2週間であったわけだが、気がつけば、今年も残り2月を残すのみとなっていて、慌てふためいている昨今。
帰宅後、鈍った体を奮い立たせ、さっそく個人の注文家具の加工に取り掛かるやら、終業後もドラフターに向かい、三越での別注ものの設計に取り掛かるやらと、また忙しい日々が舞い戻ってきたわけだが、なぜか喜々としている自分に気付き、またうれしくなる。
展示会立ち会いも大切な業務ではあるが、やはり家具職人は現場で木屑にまみれるのが心身ともに喜ぶようなのだ。
もちろん、会期中、表敬訪問、そして家具の制作依頼に来て頂いた方々、あるいは閉店後、酒席を供にした方々には、展示会、立ち会いならではのありがたい副産物であったことは、感謝とともに記しておきたい。