工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

椅子、張り生地に悩む

座椅子の張り
昨年、顧客の求めに応じ座椅子の制作をさせていただき、その後椅子の展示会などでも好評を得るなど数度にわたり制作を重ねているが、張り生地の選択では決定打が無く迷いがある。
画像は今回新たに制作したものだが、この生地はウールで、そのテクスチャーとともに色合いも気に入って選んだ。
ただ今回もそれぞれ左右の肘付き、合わせてたったの2脚分だけということもあり、新たにカタログから選び取り寄せてもらうことは忍びなく遠慮してしまった。
わずかに残った在庫の残り生地から選んで作ってもらったという次第。
ただそうは言っても、最も高価な部類のカテゴリーに属するものだ。
こうして仕上がり、取り付けてみて、やや当初描いていたイメージと少し異なることで一瞬冷や汗を掻いた。
どこがどうというほどのものではなく、最初見たときの平面でのイメージと、3次元の形となった段階での差異でしかない。つまりボクの想像力の問題ゆえの差異だろう。
これはこれで良い選択だったと思う。
ボクは自分で身につける服飾については並のセンスしか持っていないが、殊、素材については一家言を有するつもり。
アウトドアスポーツには、綿65%:ポリエステル35%が堅牢性が高いとか、スーツ生地にウール60%:シルク40%は着心地と風合い、テクスチャーが最高とか、アルパカ、リネンの混紡はシャリ感と風合いが良いとか‥‥。
ところでこれは余談だが、モノヅクリの職人などでも、良い仕事をしている人というのは身につけるもののセンスは良いし(上質なものを纏っているということでは無いよ)、所作も綺麗(稀にまったく相対しないパタンもあるが)
というよりも、生活スタイルのセンスに疑いのある人に良いモノヅクリを期待するのはハイリスク(稀にまったく相対しないパタンもあるが ← ボクの場合のように‥‥)
脱線しているが、張り生地の選択はホントに難しい。
ただ木工職人が気に入ったからといって、客に押しつけるわけにはいかない。
使われる場所によっては、高い撥水性、防染性が要求されるだろうし、子供達が使うような場合は高い引っ張り強度、堅牢性が要求される。
季節による快適さの維持もまた考慮の対象とされねばならない。
事ほど左様に複雑な要素が関係し、加えてデザイン、色調、好みといった個々の要請があるのでなかなか、これだっ !! と決定づけるのは難しい。
まぁ、これらも仕上がりまでの過程の1つとして楽しみながら臨むのが良いのだがね。
実践的には、まず良質な生地を選び、そのシリーズの中から色調の異なる数種の生地サンプルを用意するというのが一般的な展開となるのだろう。
今日は終日冷たい雨に打たれた。明日まで続くとのこと。
このエントリ記事のup後、てるてる坊主でもこさえようか。

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