工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

晴れ時々バタフライ

ウォールナットのテーブル製作も大詰め。
天板の寸法について、木取り過程で悩まされる。
顧客要望のサイズに微妙に問題が生じた。
引っ越ししたばかりでネット接続環境が整備されていない状況下での情報のやり取り。
どうしたかと言えば、天板画像(.jpg)をセブンイレブンのネットプリントへとデータを送り込み、これを顧客居住地、最寄りの店舗の端末(いわゆるコピー機)で受信、印刷するというサービスを使い、受け取ってもらう。
電話だけでは微妙なニュアンスが伝わらないものでも、画像データがあれば、例え遠方ではあっても納得するまでキャッチボールが可能だ。
問題は木口割れが想定より深く、これを完全に取り除くと10cmも短縮せざるを得ないというもの。
この天板に木取った板は7年ほど前に近隣の突き板屋から売り込みがあり購入した物だ。突き板屋が求める原木であるからして当然にも優良品である。
ややチルトしてはいたが、突き板にしたいと考えただけあって、素直で美しい木目であったし、ほとんど瑕疵の無いすばらしい板が獲れた。


バタフライ雄ただ6尺の合板用にと求めたのであろう、原木は7尺の長さであったが、木口割れが一部深く食い込んでしまっていた。
そうした事などをやり取りした結果、その1箇所の割れをバタフライを埋め込むこみ割れの拡張を押さえるということで長さを確保することとした。
そこでストックが切れてしまっていたバタフライを製作することになり、以下序でながら、天板への埋め込み下加工を含め簡単にそのプロセスを記す。
(アマチュア向けの専門誌などにも多く紹介されていることなので、デジャヴな感じだろうから、そのような人は読み飛ばそう 恥 ;)
まずバタフライの製作から。

  • 木取り
    材種は硬く、経年変化の起きにくい、良質なものを用意する(ここではブラジリアンローズウッド)。
    所定の大きさのブロックを用意する(画像では完成形のサイズのものを複数個、両面接着テープで固着させたものであるが、材木の木取りに余裕があれば、最初から大きなブロックで用意した方が良いだろう)
  • 所定の傾斜角に傾斜丸鋸昇降盤の鋸を傾ける
    (画像のものは12°)
  • 材料の長さ/2 よりやや短いところまで丸鋸を出す
    (これは1.5mmほど短くした)
  • ブロック木を丸鋸の刃の切れ味に合わせながら、移動スピードをコントロールしつつカットする
    上下ひっくり返し、同様にカット。中央部分に3mmほどが残る
    左右ひっくり返し、この残ったところをフェンスに当て、反対側を先と同様にカットする。
  • 中央部の3mmほどの切削残りは手のみなどで払う
    これでOK ! 。

以前も書いたことがあったが、ローズウッドの切削加工は、むせかえるほどの薔薇の香りに包まれてしまう。
そのそのエッセンスが添加された作業服で街に出れば、女性がまとわり付いてくるかも知れない(そんな訳はない。蜂に追われるのが関の山 ?)。
バタフライ雌さて次に天板の彫り込み加工だ。
ここではハンドルーターを用い、テンプレートによる倣い切削で行う。

  • テンプレートを作成
    6mm合板で十分だろう。
    この後倣い切削するのであるが、相当の寸法制度が要求されるので注意して作ろう。またこのテンプレート板をそのまま使うと、ルーター切削で吐き出される切削粉が、倣い切削を阻害させる要因となるので、この影響を排除させるために、テンプレート板の下側に、切削粉が隠れる余裕を持たせた、ステ板を張り付けておこう。
  • 因みにこの作業でのルーター刃は超硬の替え刃を使う。何故ならば切削される彫り込み寸法がテンプレートとの関係性において安定したものにするため、研磨することでルータービットの刃径が変わるのを防ぐためだ。
  • 天板、割れ位置にしっかりテンプレートを固定させ、ハンドルーター(プランジルーターが良いだろう)で彫り込む
    深さは天板厚さの2/3以上は欲しいもの。
  • ルータービットでは隅が取り切れないので、手のみでカット、成形する
    この時のノミは鎬(しのぎ)が使いやすいね。
  • キレイに成形彫り込みが出来たら、先に作成しておいたバタフライのブロックの入り面を取った後、接着剤を施し、埋め込む
    (接着剤だが、このような箇所にはエポキシ接着剤が良いだろう)

なお当然ながらも、あらかじめテストピースでオスメスのフィッテイングは良く確認しておくことが絶対的に必要だね。

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