FESTOOL社、国内販売戦略の憂鬱
過去本Blogにおいて独FESTOOL社の電動工具については2機種を対象として記事にしてきた。
・ハンドルーター《OF 1400EQ》
・DF500Q DOMINO JOINTER
いずれも加工精度、使い勝手などその機種に求められる性能を高く評価し、またこうした高品質な工具を開発、販売する企業の理念についても同業他社には無い、その独自性について紹介してきたところだ。
またDOMINOにおいては全く新しい機構を産みだしたその革新性についてある種の驚愕を持って迎えたものである。
さて独FESTOOL社は日本国内における販売体制を変更していることは既に投稿いただいたコメント欄でも既報の通りだが、過日、新たな国内総代理店となったHAFELE社のFESTOOL担当が来訪され、若干の経緯の説明を含む、機種のプレゼンテーションを受けたので、必要な範囲で記述しておきたい。
なぜうちへのアプローチがあったのかということについて疑念があるかもしれないが、このBlogでの数回にわたる記述に目を留めて、訪問したいとの申し出があったことによる。(電話ぐらいで結構だから、と固辞しては見たのだが、是非に、ということでもあったので快く受けることにした)
プレゼンしていただいたのは
1.ジョイントカッター ドミノ DF500
2.ルーター OF1400EQ-PLUS 110vバージョン
3.丸ノコ TS55EQ-PLUS &ガイドレール 110vバージョン
4.ジグソー PS300EQ-PLUS
5.プレナー HL850E-PLUS
6.ロテックスサンダー RO125FEQ-PLUS
7.小型サンダー DTS400EQ-PLUS
8.集塵機 CTL22ESG
など。
実は当地は木工産業が盛んなところでもあり、例年秋に木工機械展が開催され、Festool社も良く出展していて数回このプレゼンに立ち会うことがあったので、さほどめずらしいというものではなかったが、それぞれ現行の新しい機種でもあり興味深く拝見させていただいた。
冒頭述べたように、いずれも電動工具としては最高の品質を持った機種であることについて改めて確認させてもらったと言って良いだろう。
中でも注目のDOMINOだが、ほんの少しテストさせていただいただけではあったが、その切削性能、革新性についてはあらためて感嘆させられてしまった。
最も強い関心対象であった、穿孔された開口部と、ダボの嵌めぐあいであるが、実にぴったし。堅すぎず、全く緩くもなく、ジャストフィットであった。
専用のカッターは左右に振動しながら回転しつつ被加工材を穿孔していくという複雑な機構でありながら、全く揺るぎないタイトな加工を確保している。
このダボはLamelloのビスケット同様、圧縮され、また糊だまりが刻み込まれたブナ材であるので、実際にはかなりの緊結度を確保することが出来るように思えた。
既に独本国のオフィシャルサイト、米国のオフィシャルサイトなどには動画を多く含む紹介があるので、詳細はそちらに譲るが、その革新性についてはもはや多弁を要しないだろう。
次にハンドルーター OF1400EQであるがボクが所有しているものと比し、パワーが増強されたものだった。(銘板上がボクが購入した米国内販売のもの。下が日本国内販売のもの)
テストさせてもらったが、体感的に判るほどのものではなかったが、仕様においては若干の差異があるようだ。
商用電源の差異など、日本向けにローカライズされたものであろう。
他は、必ずしも手にしてテストした訳ではないが、担当者は《ロテックスサンダー RO125FEQ-PLUS》について強くアピールしていた。
これは手元スイッチの切り替えで、粗研磨、仕上げ研磨の適切なモード切り替えが可能というものだ。
なお集塵機も使わせていただいたが、パワーがありながら、意外な静粛性にも感心させられた。
さてところで、新しい販売体制の方であるが、輸入代理店が昨年秋まではエフツール社というところであったが、HAFELE社に変更されたことは紹介してきたところである。
ご存じの通り、HAFELE社は独最大の木工金具の製造、販売会社であり、日本でも法人が設置され広く展開していることは衆知のところ。ボクも以前より積極的にこのHAFELE社のものを使わせていただいてきたところである。
主要にはハンドル、ヒンジ、スライドレール、システム金具類であるが、日本の金具メーカーには無い独自のデザイン、性能のものも多く、高い評価をしてきたところだ。
したがって同じドイツのメーカー、FESTOOL社の製品を扱うことにはさほどの違和感があるわけではなく、首肯できるところだ。
しかしそうは言ってもFESTOOL社の直営ではなく、あくまでも代理店という制約下での取り扱いであることに変わるものではない。
叶うならばぜひFESTOOL社独自の展開を望みたいところだ。
しかしこれは国内電動工具の市場が既にくつかの国内メーカーによる寡占状態にあり、さらにまた日本固有の流通制度を考えた場合、これをかいくぐっての新たな展開の困難性を考えたとき、ほとんど望み薄なのかなと暗澹とならざるを得ない。
なお、何故かDOMINOに関しては、さらにその販売代理店である「テクノトゥールズ株式会社」が取り扱う、ということだそうだ。
(その理由については判然としないが、これまでのFESTOOL商品の日本における販売体制の歴史的経緯が反映していると解釈しよう)
■ HAFELE Phone:045-828-3111
担当:鈴木、秋本
■ テクノトゥールズ株式会社 Phone:042-569-1502
【関連記事】
■ FESTOOLから新機種リリース07/02/23
■ 魅惑の「Domino」FWW誌に掲載07/03/13
■ Lamelloは使ってますか?07/07/31
■ DOMINO活用(脚部延伸)07/12/18
Tags:Domino DF500
acanthogobius
2007-6-24(日) 23:21
木工機械の中にも中国製品があふれる現在
made in germanyにはある種の憧れがあります。
今回のartisanさんの記事はHAFELE社のへたな宣伝よりは
よっぽど影響力が大きいのではないでしょうか。
ただ、DOMINOのようなアデバンテージのある商品は別に
してもプロの方がコストを考える時どの程度Festoolが選択
されるのか難しい所だと思います。
なお、「このダボはLamelloのビスケット同様、圧縮され」
とありますがFestool USA のDOMINOの記事の中のFAQによれば
Domino® tenons are made from solid beech wood, not compressed beech shavings like a biscuit joint, so they are far less susceptible to swelling from humidity.
となっており圧縮はされていないようです。
もちろん糊溜まりの部分はある意味圧縮されて作られていますが。
これだけタイトフィテッィングで圧縮されていると
糊の水分による膨張でホゾ穴が繊維方向に割れる可能性が
あると思います。
Pongoo
2007-6-25(月) 10:16
はじめまして。
趣味で木工を楽しんでいますPongooともうします。
私も知人を通じてDominoを入手し、使っています。
DominoDowelは圧縮材ではないよ、という実験をしてみました。
http://www.geocities.jp/pongoo3/DOMINO.htm
Festoolは趣味には分に過ぎた道具かもしれませんが、
使ってとても楽しい道具です。
日本の代理店ももっと、普及を念頭に入れた販売展開をすれば、他のメーカーにも良い影響を与えると思います。
プランジソーが普及すれば、丸ノコで怪我をするひとはいなくなるかも。
木っ端
2007-6-25(月) 15:01
始めまして、
木工が趣味の老人です。
Davetall Jig を使う為に、1010 を在米社員経由で入手しました。8ミリ軸ビットの多さは欧州の新デフォルトなのでしょうか?
静かな回転音や、パワーがあってのコンパクトさ、100ミクロンでの送りが、一段と木工が楽しくなりました。
artisan
2007-6-26(火) 00:12
acanthogobiusさん、確かに仰るように
>ロの方がコストを考える時どの程度Festoolが選択されるのか難しい所だと思います。
という懸念は拭えません。
訪ねてくれた担当者の口からも、Festoolユーザーにはリッチなハイアマチュア層は多いそうです。
圧縮ブナの件は、完全にボクの思いこみでしてね。訂正して間違いを謝りたいと思います。
artisan
2007-6-26(火) 00:13
Pongooさん、はじめまして ! コメント感謝します。スピーカー自作など、DIYを楽しまれていらっしゃる方のようですね。
しかしながら工具等の導入を拝見しますと、世界のクラフトマン御用達のものばかり。プロの木工家から怒られませんか?
Dominoについても早速導入し、使っていらっしゃるようですね。大いに楽しんでください。(圧縮材というのは、ボクの完全な思いこみでした)
作業台(ワークベンチ)の自作も興味深く拝見しました。テールバイスの使い勝手は良いのではないですか。
Pongooさんの作業内容(スピーカー自作など)ではその効果は図りかねますが。ぜひショルダーバイスも付加させ、使い勝手の向上をめざして欲しいですね。
(ハードウェアは海外からの個人輸入で可能ですし、日本国内のものでも改造すれば対応可能ですね)
Festool製品の国内普及についてはPongooさんらのこうしたネットを介した紹介も有効だと考えられますので、今後も積極的に紹介してやってください。
artisan
2007-6-26(火) 00:13
木っ端さん、初めまして ! コメント感謝します。
OF 1010 EQはシャンクが8mmだったのですね。
OF 1400 EQ(米国内販売のもの)にも8mmコレットが標準添付されていましたので、8mmシャンクビットというのも日本とは違って、かなり一般的なようですね。
少し機種が違いますがShaper(日本では縦軸面取り盤、と言いますが)では日本は1”のみですが、米国では1/2"、5/8"など様々な径があります。
それだけDIYの需要が大きいということが伺えます。
また8mmは決してデフォルト、とうことではないと思います。
欧州でのプロ仕様はむしろシャンク径は大きいと思います。
ハンドルーターは一般に12mmです。たまに16mmというのもあります
なお日本の木工機械のシャンクは1"が一般的ですが欧州は30mmです。
8mmはDIY向け、という位置づけではないでしょうか。
いずれにしましてもFESTOOL社の品質の良さは、仰るように木工を快適にしてくれる何ものかを備えているようですね。
AUDIN
2007-6-30(土) 23:30
こんばんは。
artisanさんに趣味性の高い工芸職と看破されてしまった者です。
御慧眼、まことに恐れ入りました。
(以下、少しクドいです。お見苦しい点も多々あるかと存じますが、こちらにお邪魔するのも最後かとも思いますので平にご容赦のほどを)
DOMINOはテクノトゥールズ扱いになるんですか。初めて知りました。
OF1400EQも日本向け仕様がある、というか国内導入されていたのを初めて知りました。
テクノトゥールズさんやPーTOOLSさんは勿論、HAFELE社さんのサイトにも情報が見当たらないもので。
国内メーカーとは価格・流通他での競争が厳しい以上、いっそ価格を思い切り高く設定し
高級嗜好品として金に糸目をつけないセレブな(死語?)ハイアマチュア相手に売りつけ、もとい展開していこうと言うことのようですね。
ところでFESTOOLは日本国内で充電ドライバードリルを売ってるのだろうか?
TS75EQは?MFTは?プレシシオは?アングルスライドソーは?
FESTOOLの存在を知り、興味を持って捜してみてもそんな事すらわかりません。
・・・HAFELE社のサイトには2006年の木機展に出展したとの記述のみ。
FESTOOL_guidanceのpdf!ファイルはリンク切れ。
取扱商品すらわからない状態。こちらの記事で担当者と連絡先を初めて知りました。
積極的な宣伝広報はブランドの価値を下げるということなんだろうか。
実ユーザーのホームページ、ブログ、口コミがメインの情報源とは情けない。
やる気がない、やるべきことをやらない、家具金物が本業で片手間だと云うのなら
輸入総代理店なんか辞めてFESTOOL USAの取次業務でも始めればいいのに、などと他愛もないことを思ったりしました。
ちなみに日本と同じくHAFELEがFESTOOLの総代理店となるカナダですが
かの国のHAFELE社はちゃんと取扱のFESTOOL製品カタログがサイトからダウンロード出来る事をご報告しておきます。
乱筆乱文、場違いな愚痴、失礼いたしました。
artisan様、皆様も怪我などなさらないように充実した木工ライフをお送りください。
さようなら。おやすみなさい。
artisan
2007-7-1(日) 08:21
AUDINさん、ご指摘の事柄に関して知りうる限りでのお話しをいたします。
仰るようにテクノトゥールズ社もHAFELE社もWeb上ではFestoolラインナップの詳細情報の提供はなされていません。
理由として考えられることとしましては、まだ作成作業がなされていない、営業戦略における位置づけが弱い、価格設定上の問題(日本固有の流通の在り方)などのいずれか、あるいは全て、ということになるでしょうか。
一方HAFELE、カナダには、仰るようにカタログがpdfにて提供されていますね(情報感謝します)。
挙げられている機種につきましては、恐らくHAFELE日本での扱いはあるはずです。来訪担当からいただいたカタログにもリストされています(どこまでローカライズされているかは不明ですが)
どうぞ担当へと請求してください。
AUDINさんの“愚痴”は、ボクも含めて恐らく多くの日本のFestool関心者の共通のものでしょう。
記事中でも述べたように、Festool社の日本法人としての進出がなければ、こうした様々な障壁の改善は望めないかもしれません。
HAFELEへと販売網が移ったことにより、よりユーザーとの距離が近くなり、Festool工具の高品質さを正当なルートで、適正な価格帯で手に入れることができるようになることが望ましいのですが、現段階では未だその方向性が見えないというのが現状のようです。
なお断るまでもありませんが、ボクはあくまでもユーザーとしての1個人ですので、こうしたコメントもその範囲を出るものではありません。
知りうる限りについては情報の開示はいたしますが、詳細についてはぜひ各販売店、担当まで問い合わせいただきたいと思います。
AUDIN
2007-7-27(金) 17:49
懲りずにまたお邪魔致しました。
前回は色々と詮無いことを書き立ててしまい
お気を悪くされたことでしょう。
まことに申し訳ありませんでした。
ご忠告に従い、折良く訪ねてきた販売店の営業に
聞きましたところFESTOOLの製品展開については
よくわからないので確認してみるとのことでした。
FESTOOLに関する問い合わせはたまにあるということですが
最後は必ず「でも高いなぁ」と言われるそうで。
やはり内外価格差を指摘する方が多いとのこと
「ウチは総元じゃないからどうしようもないんですけどね」と言ってました;
そんな中、その独自性で話題のDOMINOの紹介ビデオが
見られるとの知らせが届きました。
http://jp.youtube.com/watch?v=NzFtHtwzHtQ
なるほど〜こういうことも出来るのかと思い
少し食指が動きましたが・・・
「でも、18万は高いなぁ」
お後がよろしいようで。
artisan
2007-7-27(金) 20:44
AUDINさん、ようこそ、
>お気を悪くされた
何を仰いますか。いつもドアは開いています。
>こちらにお邪魔するのも最後
という前回の物言いも、このBlogへの批評の1つでありますでしょうし、あるいはFestool社の日本展開における非関税障壁とも言うべき障害への抗議でもあるでしょう。当管理人としてもそれらは甘受せねばならないものです。
YouTube紹介ありがとうございます。Dominoについての数多くの投稿がありますね。
今も米国、欧州ではこのジャンルのエポックであるようです。
価格ですが「テクノトゥールズ」社では発売キャンペーンということで見直しがされるようなメールも頂いていますが、詳細は不明です。
この場では詳細に記述するのを控えますが、海外からの入手ルートも無いわけではありません。
ボクは既にテスト的に使用していますが、「this tool is big news」「Domino is an impressive tool that could change your woodworking」(FWW誌)と評価されるだけのことはあるという感触を持っています。
因みに地元のマキタの営業所でお見せしましたところ、$700という価格は納得していました。(苦笑)
藤井 卓
2015-12-7(月) 10:10
お世話になります。日本国内の代理店制度に泣かされています。
アメリカの通販会社にfestoolの製品を注文しても、日本国内の代理店で購入しなさいと言って取り合いません。国内の販売店の価格の上乗せは、あまりにも高すぎます。結局アメリカの友達に頼むしかありません。馬鹿げた話です。二度手間ですよ。
先日も向こうから5千円で購入できるdominoの部品が国内では16000円もしまづ。あまりに法外です。こんな事をしていたら代理店は見放されますよ。
artisan
2015-12-7(月) 13:17
藤井さん、コメントありがとうございます。
海外メーカーの国内販売戦略も多様です。
代理店展開している場合には、そちらから買え、という障壁は必ずしもめずらしいことではありませんが、Festool社の場合、海外との価格差はご指摘のように、非常識とも言うべき水準で困惑してしまいます。
これはFestool社、および日本総代理店であるHÄFELE Japan社、いずれにその責任があるのかは分かりませんが、Festool社にとってみれば、日本での普及を妨げる「非関税障壁」のようなものですので、企業戦略として見た場合、理解に苦しみますね。
藤井さんのような「怒り」の声をもっと広く共有し、改善を望みたいものです。
なお、米国などからの個人輸入の場合、友人に依頼する方式の他、転送サービスをビジネス展開している会社もいくつかありますので、利用されるのも良いかと思います。