工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

横浜クラシック家具「ダニエル」

ダニエル伊勢原工場
かつて修業時代、あるいは独立後の数年、機会を見つけては家具工場の見学にいそいそと出掛けたものだった。
今回久々にその頃のような新鮮な探求心を思い起こし、ある工場見学へと同行した。
工場は伊勢原にある「ダニエル」。言わずと知れた日本における洋家具の発祥の地、横浜でも老舗のメーカー。
この見学会はOZONE会員向けの企画。
OZONE企画の催しものには過去、研修会などには参加してきたが、工場見学は初めてのこと。OZONEとしてもこうした企画の展開はまだ日も浅いようだ。
見学会の内容はとても盛りだくさんなものだった。
まず午前中はダニエルの本社工場のほぼ全域を、同社の責任者からの解説を受けながら巡回見学し、その後少し離れたところに最近開設したという「ハウススタジオ」へと案内いただき、同社の主要な商品のラインアップを観賞させていただく。
午後は横浜の事業部へと会場を移し、椅子張りの現場を見学させていただき、さらには同所に併設されている「ダニエル」のユニークな活動である「家具の病院」を見学。
ボクは松本民藝家具の関連木工所で修行をスタートさせたのだが、実はその後1年間、「横浜クラッシック家具」と言われる関連会社で長く働いていた親方の下で修行させていただく機会があった。
また、ここで「横浜クラッシック家具」系統のある家具メーカーからの受注のものを親方の指導の下、制作することも多かった。
つまり松本民藝家具制作手法の基礎の上に、横浜洋家具のテイストを涵養するという環境から家具つくりの基本が形成されてきたと言っても良いかも知れない。
したがってまたこの度の「ダニエル」の工場見学はそうした自身のルーツの1つを確認するためのものでもあったし、一方日本の家具産業が斜陽化しつつある中、老舗の洋家具メーカーの奮迅ぶりをその現場で見学せていただくことで、将来への揺るぎない展望を確認させていただくものでもあった。
見学会という性格上、全貌を見た、などというものではなくわずかに1日での急ぎ足での見学会でありその一端を垣間見ただけ。
したがって「ダニエル」というメーカーの全体像を適切に紹介することはできないが、まずは特徴的なところだけでもピックアップして老舗メーカーというものの、企業理念をさぐって見ることは出来るかも知れない。


今回の見学会の案内をしていただいたのは同社の「営業企画推進室」を担う咲寿さんという若いスタッフ。
この咲寿さんは、ダニエル創業者の系譜を受け継ぐサラブレット(こんな形容はあまりに俗に過ぎ、好きではないのだが‥、咲寿さん、ごめんなさい)。いずれ後継者として経営を担っていく人なのだろう。
そうした系譜を辿る方だということがバックボーンにあるのだろうが、見学会冒頭のダニエルの沿革の解説では洋家具の発祥の地での創業ということに企業としての大きな自負と責任というものを強く感じさせるものがあった。
決して押しつけがましいメッセージというのではなく、若さから醸す真摯な思いの語りは、なかなかに説得力を持つものだった。
ダニエル工場内その後お借りしたお揃いの白衣を着て、工場の各部門を見て回る。
・材木乾燥
よく知られたようにダニエルの材種は定番のほとんどが樺材。道産の真樺が中心のようだが、近年需給が逼迫し海外に代替材を求めてもいるようだが、これはなかなか困難なようだ。
一定の天乾の後、人工乾燥、そしてシーズニング
・木取り
・加工
板剥ぎ(ここのキャビネットは框ものも少なくないが主には板ものが多いので板剥ぎセクションは重要)。
剥ぎのクランプは、ボクが使用しているものとほぼ同様なものだった。
ホゾ加工(角のみ、丸鋸傾斜盤)
板差しへの対応として角のみの定盤のエクステンション補助板が目に付いた。
成形(縦軸面取り盤、ルーター)
ハイスの面取りカッターのその多いこと多いこと。あえて聞かなかったが、刃物屋がつくるだけではなく、自社で職人さんが必要に応じてグラインダー加工するのだろうと思う。
・塗装
いわゆるダニエルカラーと言われる、独自のシステム。
樺への塗装としては1つのスタンダードなシステムと言って良いのかも知れない。
素地着色の段階ではその色は淡く、中塗りの目止め着色段階で目的の色へと近づける。
樺は導管がとても小さいが、ここに目止め着色が定着することで、樺特有のとても繊細な木目が引き出される。
ラッカーは肉付きが悪いと言うこともあり塗装工程はなかなか大変だが、それだけにウレタンには無いラッカー独特の暖かみがあるのかもしれない。
(以下、次回後編へ)
ダニエル
*画像上:ダニエル伊勢原工場、正面
 画像下:挽き物機械(旋盤)の特徴的な動力
     面取り盤の刃物
▼《横浜クラシック家具「ダニエル」(その2)》
▼《横浜クラシック家具「ダニエル」(その3)》

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  • 興味深い企画ですね。
    私もozoneの会員にはなっていますが
    professional会員向けの企画だったのでしょうか?
    こういう企画だったら仕事をさぼっても(笑)
    参加したかもしれません。

  • acanthogobiusさんも会員でしたか。
    ‥‥そうでしたねプロ会員向けの企画だったようです。
    実はボクも会員としての権利を行使することは本当に少ないです。首都圏にいれば活用したくなる企画も多いのですがね。

  • 横浜 家具

    家具は、長く使うものだけに、機能的にもデザイン的にも、満足のいくものを選びたいものです。 家具には、ダイニングのテーブルやイス、リビングのソファ、タンスや書棚、キャビネットなどの収納家具、ベッド等さまざまなものがあり、それらの個々の家具が部屋全体の雰

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