工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木材資源の多様化と刃物メーカーの悩み

旧聞に属する話しで恐縮だが「名古屋国際木工機械展」には出掛けたいと考えていたものの残念ながら行くことが出来なかった。
木工機械としては日本最大規模のものだから、毎回とはいかなくとも見ておきたいイベントだ。
見てもいない話題を取り上げるのは、今朝出展していた刃物メーカーの担当者が工房に立ち寄り話題を提供していってくれたから。
現在刃物メーカーの目下の課題の1つが多様な素材にどのように切削刃物を対応させるか、ということなのだという。
無垢材であれば全く問題にならない切削性能も、現在の木工、建築の分野での素材の多様化は刃物メーカーを大いに悩ませているということだ。
驚いたのはパーチクルボードの素材にはコンクリートパネル(コンパネ)の再生品が含まれ(再生パーチクルボードというのかな)、当然にも石材、セメントなどが混入しているとのこと。
したがって超硬刃物も1回で切れが止む。
ダイヤモンド刃物で無ければ対応できはしない。
あるいは木型なども樹脂素材へと転換しているように樹脂加工分野への切削技術の応用が拡がってきている。
例えば木型などでは成型切削後、サンディング仕上げの過程でエッジ部分が“だれ”てしまう。これを回避するには良く切れる刃物でフィニッシュにまで持って行きたいとの要求もでてくる。
訪ねてくれたのは機械展の招待券を贈ってくれたドイツの刃物メーカーの担当者だったが、カネフサなど日本のメーカーと較べれば、こうした素材の多様化への対応はどうしても国境を越えてしまうという制約において競合できないのだと嘆く。
あるいは昨今の尋常ではないユーロ高はコスト面において営業戦略を大いに悩ます要因となっていることも確かなところだろう。
はてさて‥‥、
考えさせられたね。量産家具メーカー、あるいは建材メーカーの多くはコストカットのためにはチップボードにコンクリート混入があれども使わなくてはならないという時代の要請は、ちょっと尋常ではない。
しかし一方、何でもかんでも無垢材というのも大衆消費社会にあっては無理難題。
ボクたちの狭い世界であっても如何に無垢材を有用に活用するのかということは現実的問題として俎上にあることも確か。
いわゆるランバーコアなどの活用、あるいは自からランバーコアを作ることも含め、貴重な天然素材のサスティナブルな活用という問題は避けて通れない課題だ。
*参照
パーティクルボード:
JIS規格:JIS A 5908

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 何年か前に 廃材の受け入れの現場を見学に行ったことがあります。 
    建築の解体の廃材もあるし
    パレットの古いのとかいろいろ。
    金属は かなり混入してしまうな というのが印象。
    釘の類 兆番 ドアノブ とかですね。
    磁石で とりのぞくということはあるのですが
    とりきれるものではありません。
    壁紙 コンクリ タイル なども混入します。
    ある意味では そういうものだ と
    割り切らないとしょうがないという程度のものだと感じました。

  • たんす屋さん、さっそく記事を補強していただけるコメントをいただき、感謝です。
    実態はかなりすごい状態のようですね。
    もう ア・ゼ・ン (@_@;)
    記事では触れませんでしたが、こうしたボードを扱う工場では、ダボ穴などが所定の寸法に開かずに困っているが刃物が悪いんじゃない?、などとクレームがくるのだそうです。
    これは刃物のせいではなく、ボードの品質にあるという自己認識が無くて困るという話しです。(苦笑)

  • 9月にコルクの椅子を作ったんですが
    その中に粉砕されたプラスチックが混じっていて
    ビックリしました。
    素材がどんな風に作られてるかって
    考えたこともありませんでした・・・

  • Humaniteさん、コメントありがとうございます。
    コルクからプラスチック?
    あれまっ。
    食品偽装オンパレードの日本ですが、人体に影響がない(?)とは言え、工業製品としての(通産省 ?)一定の規格はあると思われますが一体どうなってるの?

  • 思わず 反応しました。
    認識新たにします。
    有難うございます。

  • zziさん、コメントありがとうございます。
    しかしこの分野、zziさんの良質なお仕事のフィールドでは関わらないことかもしれません。
    いやそんなこともないか。工場設営、ジグ、などには用いられるでしょうからね。

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