工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

職人の不在と業界の低迷と‥

擬宝珠
少し早めに昼食を済ませ、途中、生花を買い求め、病院へと。
時折雨がぱらつく生憎の天気。天気のせいでもあるまいが、病気見舞いはやはり気が重い。患者の苦しみに寄り添うわけだから当然なのだが‥‥。
地域の総合病院ということで多くの患者、家族が詰めかける中を、病室へ。
面会時間を案内する表示には午後2時からとなっているのを無視してエレベーターを上がる。
昨夜教えていただいた部屋番号には確かにSさんの名札が掛かる。
まだ安静でなければならないために個室だ。
設置してあるボトルから消毒液を手にとり消毒し、マスクを装着、入室。
本人、意外と血色も良く、照れ笑いで迎えてくれる。
いつものように話が弾む。声の力はやや弱いものの、倒れて搬送されたとは思えぬような顔つき。
しかし身体にはチューブが1本繋がっている。いかに急性期を悪化させることなく安定期へと移行しつつあるとはいえ、予後の治療は大切。
寒冷期に入ってきていることもあり、風邪など合併症には要注意だ。
暫くして奥さまもやってきて、仕事の話しになる。
遣り掛けの仕事の采配。そしてそれら発注元への代替業者の紹介など、可能な範囲でやらせていただくことを快諾。
長居は良くないと判断し、仕事のことはあまり考えず、困った業者に付き合う必要もなく治療に専念することなどをやや強く奥さまに伝え1時間ほどで辞去する。
外は雨。敷地内に植え込まれた今を盛りに燃え上がるような紅葉も、雨に打たれて沈んでいる。(画像下)画像いずれもクリック拡大


帰宅後、静岡市の産業支援部門のM氏に電話をして、挽き物組合のリストの請求とともに、腕の良い職人のいる木工所の紹介を受ける。
また元親方にもアドバイスを受ける。
しかし昨日記したように、残念ながら責任持って紹介できるほどの職人の情報は得ることはできなかった。
業界の高齢化、家具産業の低迷と、いくつかの事情で家具様式でのロクロ加工業界の衰退しつつある現状というものをまざまざと思い知らされてしまった。
そのような現状も含め、数軒の取引業者に伝える。
ところで親方の話しによれば、最近のこと、あるところで擬宝珠を製作してもらったものの、まるで擬宝珠になっておらず、仕方なくボール盤にホゾを咬ませ、四方反りの小鉋と鑿でで修正せざるを得なかったほどだったとか。やれやれ。
この“余人をもって代え難い”職人。
その熟練に熟練を積み重ね、技能を高度な水準へと高め、美質を研ぎ澄ませてきた職人技というものは、なかなか容易に代替させられるものではないという、この世界での真理は、本人の不在を持って初めて知らされる。
ところでそのあんたはどうなのかって、?
そうだねぇ、そのような評価を受けたいと思わないはずはないが‥‥、
いやいや、ボクの場合は、憎まれっ子世に憚る、という方なので、なかなか倒れそうもありません。悪しからず。(笑)
Top画像、小さな擬宝珠は15年ほど昔にSさんに製作してもらったもの。
紅葉

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  • 早く元気なるといいですね。
    以前伺った時に話に出た方かと
    思いますが。
    ほんと、健康第一、安全第一です。

  • kentさん、今晩は。
    Sさんはあなたのように病気知らずの頑健な人だったのですがね。
    かえってこのような健康な方の方がヤバイのかも。(脅しです 笑)
    ボクは見舞いの帰りに人間ドックの予約を入れてきました(これまで胃カメラさえ飲んだことがないのでした)。

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