工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

鉋くずと職人の技量

鉋くず
写真は作業台の前の鉋クズです。汚くてスミマセン。
木工所の手作業場では親方はじめ弟子達がアテ台(作業台のこと)を並べて仕事をしています。
そこへ訪ねてきた人がそれぞれの仕事ぶりをしばらくながめてから、アテ台の周りに山のような鉋屑を多く出している職人を指して、親方に一言。「あの職人は1番良く仕事をしてるね・・・」と。
親方は困ったような顔でつぶやく「あいつは鈍くさいやっちゃ」
「?、はぁ。」
「いやね、仕事が上手くて速い奴はあんなに鉋くずは出しゃしないものよ。余分な仕事をしてるだけさ」


仕事の内容によってもさまざまですので、一概に鉋くずの量で、その人の技量を推し量ることはできるものではないでしょうが、しかしこの親方の評価はやはり正しいのでしょう。
仕上げ削りに至る加工段階で高い精度で、良い加工をしていれば、最低限の仕上げ削りで完成させることができます。しかし精度が悪かったりすると、例えば平滑性を出すための仕上げ削りも余分にしなければならないでしょうし、他の部位とのフィッテイングも難しくなりますから、余計な削りも必要になってきて、下手をすれば削れば削るほどおかしくなり収まりがつかなくなっていくものです。
いかに少ない作業量で、最高度の品質を確保するか、ということも熟練の職人の一つの指標であるのかもしれません。

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  • 手際よさと精度、その他に関する雑感(1)

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