工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

天板止めコマ金具

キャビネット、テーブルなどの天板を駆体本体、あるいは脚部に固定する方法はいくつかありますが、皆さんはどのような方式で固定されていらっしゃるでしょうか。

私は寄せ蟻や吸い付き桟などを使う場合もあれば、一般的にも良く使われる〈コマ止め〉を使ったりします。

先頃、当地の家具屋、木工家など、数社がまとまり、1つのコマを家具金物屋に製造依頼し作ったところなのですが、今回はこれを含めたコマ金具の紹介です。

これらはありふれた既知の情報でしかないかもしれませんが、Blog読者の中にはポンッと膝を叩くほどの新発見があるかもしれません。

今回のコマ金具リスト

写真右から

  1. 平板
  2. L型金属
  3. クランク型金属(米国の市販)
  4. 木製(自作)
  5. クランク型金属、縦、横(今回製造したカスタムメイド)

コマ金具に求められる条件

手元にあるコマ金具をその特徴とともに紹介させていただきます。
まずはじめに、コマ金具にはどのような要件が求められるでしょうか。
さしあたって以下のような条件が挙げられるのではと思います。

  • 駆体、あるいは脚部と天板をしっかりと緊結する構造であること。
  • コマという機能面での要請から、相応のテンションが掛けられる構造であること。
  • 天板が無垢材である場合、この天板の伸縮に対応し、緊結度が緩まぬような構造であること。
  • 経年使用に耐えられる強度が継続確保されること。
  • 駆体への取り付け、使用においては容易な加工が望まれること。

個々の金具の特徴

では、ここからは個別に視ていくことにします。
ここでは5種のコマ金具を俎上にしましたが、もし読者でもっと画期的なモノがあるんだけれど…、といったようなことがあれば、ぜひご教示ください。

平型金属製

size:25×37 2t の平板に天板固定のための木ねじが通るスリットが開けられ、反対側には駆体に取り付けるための2つの下穴が開けられている。

日本国内ではもっとも一般的に用いられているコマ金具だろうと思われます。

取り付け方法ですが、まず駆体にはこの金具の厚みに加え数mmのクリアランスを持ってルーターなどで彫り込み、ここに金具を落とし込み、木ねじで固定させます。
(数mmのクリアランス)というのは、天板位置とフラットや、あるいは逆に突き抜けているようでは天板は緊結しないからですね。多少の空きが無いことには緊結しません。

この彫り込みの加工ですが、ルーターで簡便に加工できるとはいえ、やはり今回の5種の駒の中ではもっとも手の掛かる工程になりますし、さらにまた木ねじで固定させる工程も必要となります。

L型金属製

size:25×25 2t
構成は平型金属とほぼ同じで、中央部をL型に折り曲げたもの。
取り付けはクリアランスを設けた適切な位置に木ねじ留め。
平型のような本体への予備的な彫り込み加工は不用で簡単ですが、ただ取り付けの位置決めは墨付けなどによるものとなり、確度や作業性から考えた場合、意外と面倒なものです。

平型金属も同じですが、木ねじ留めという構造から、経年劣化や使用状況による緩みの懸念もあります。

クランク型金属製(米国の市販品)

size:16×28 2t
クランク型に屈曲した形状です。加えてこの屈曲も延びてしまわないようなプレス加工も施されています。
縦横の区別は無く、1種です。

肉厚が2mm ですが、取り付けには1.8mmの丸鋸でスリットを開け、ここに打ち込むという方法を取るだけですので、とても作業性が高いと言えます。
また木ねじ留めとは異なり強度的な確度は高く、また経年使用による取り付け強度の劣化は考えにくく、耐久性は高いと考えられます。

ただ縦横が無く1種類という問題があります。縦方向であれば脱落しかねず、また横方向の動きにも対応の難しさがあるように思います。
そのため、用途は伸縮が大きくはならない小型の家具に用いる限定的なものと考えた方が良いでしょう。

米国の木工関連通販会社から求められます。

木製(自作)

size:30×36 24t
木で自作するコマです。2.5〜3分(7.5〜9mm)厚みのツノを設けたシンプルな作り。
駆体に2.5〜3分のスリットをルーターなどで開口し、ここに打ち込み、固定させます。

クランク型金属(米国の市販品)同様、縦横の種類は無く、1種類です。
縦方向にはツノの出し入れで対応させ、横方向にはスリット内を自由に動く、というものです。

縦横、それぞれに適合させるべく、天板に揉み込む木ねじ下穴を縦横のスリットにするという方法も考えられますが、木という素材の特性から、このスリットを木ねじが自由に動くということはできず、あまり意味は持たないと思います。

木製ですので、木部の家具本体と親和性が高いということが言えます。
耐久性ですが、木の痩せでツノが緩むリスクがありますので、良く乾燥された素材で作るようにしたいものです。

クランク型金属製(オリジナル)

size:25×35 2t
クランク型金属製(米国の市販品)とほぼ同じ構造ですが、縦、横の2種があり伸縮に対応します。
米国製のものと較べると、かなり大きく、またGB色にメッキが施されています。
取り付けは米国製同様、1.8mmのスリットを開け、打ち込みます。

以上、5種類の紹介ですが、私は昔からほとんどの場合、5番目のクランク型金属製(オリジナル)を使っています。
緊結度の強さ、使い勝手の良さ、加工の容易さなどの評価からです。
その上で、よほど見栄えに拘る様な場合に限り木製のコマを自作して用います。

ただこの金具は残念ながら日本国内では市販されていません。
したがって金具屋に製造してもらわねばなりません。

ということで、冒頭にある通り、数社がまとまり製造することにしています。
これは単価を抑えるためですが、1度に数千個単位での製造で10年おきくらいに作ってきています。 

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.