工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

systainer® と マックパック と システムケース と L-Boxx

sustainer

工房の年末整理を終えたところかもしれませんが、今回は電動工具などの収納整理に関わる四題噺でも…。

既にこのBlogではFestool社が先行的に採用してきたsystainer®という規格品の収納Boxについては何度か触れてきたところです。

さて、これと互換性があると思われる収納Boxが国内でも販売され始めていることにお気づきお方も多いかもしれませんね。

マキタや日立工機(おっと、現在はこの社名は無くなり、本年8月から「工機ホールディングス株式会社」[HiKOKI] という名称に変更されてますね)などの工具を購入したところ、この収納Boxに納められていることに気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、名称はsystainer®ではなく、〈マックパック〉(マキタ)あるいは〈システムケース〉(HiKOKI)という名称で・・・。
(HiKOKIの場合、海外においては〈STACKABLE CASE SYSTEM〉、あるいは〈HIT-System Case〉とも呼称されているようですが、いずれも製品としては同一のものと考えられます。国によって、あるいは時代の変遷により呼称も違っているのでしょうか)

余談ですが、Link先のWebサイトをご覧いただければお分かりのように、HITACHI という名称は欧米においても強いブランドイメージがありながら、本家本元の日本ではHITACHIの名称は消え去り、HiKOKI (ハイコーキ)などと良く分からない社名に変更されるというのは、いちユーザーとしても残念なことではあります。
この新しい〈工機ホールディングス株式会社〉という会社ですが、日立本体との資本関係も全く無いとのことですのでやむを得ない経緯なのでしょう。

参考までに社名変更にあたっての前原社長のコメントを記しておきます。


「社名を変更し、『工機ホールディングス株式会社』として第二の創業を迎えることができました。これまで70年間培ってきたお客様の信頼をさらに強固なものにすべく営業強化を進めるとともに、今後もユーザーベネフィットの高い製品・サービスのご提供に努め、さらなる事業の発展をめざして持続的な成長を実現してまいります。第二の創業を機に当社は、お客様の現在と未来のニーズに応え、電動工具のコードレス化をますます加速させていきます。」
新生・工機ホールディングスは、揺るぎない信頼性と革新的な製品を生み出す世界最高水準の技術力をもとに成長を加速し、グローバル市場におけるリーディングカンパニーをめざします。

第二の創業ということですので、大いに期待したいと思います。

ところで、RYOBIという伝統ある工具メーカーも、京セラに吸収されたのは一昨年でしたか。
社名も「京セラインダストリアルツールズ株式会社」と変更。

〈RYOBI〉というブランド名は残るようですが、恐らくは〈KYOCERA〉に丸ごと変更されるまでの暫定的な措置であるのかもしれません。株の80%は京セラですので。

マキタ/マックパック
マキタ/マックパック

少し余談が過ぎましたので、話しを戻しましょう。
マキタもHiKOKI も収納Boxをそれぞれ大小様々な規格品と、それらを活用させるためのキャリーケースなども展開しているようです。(画像上・下参照)

HiKOKI /システムケース
HiKOKI /システムケース

残念ながらいずれも現物に接する事も無く、私は試していないのですが、〈マックパック〉、および〈システムケース〉は外観上、systainer®とは微妙な差異が認められるものの、サイズ展開や、その独自の機能における規格では近似していて、相互を積み重ね、連結するビルトアップも可能と思われます。

systainer®の大きな特徴は上蓋の開閉操作の機能を持つ左右の4つのラッチ操作でビルトアップ(積み重ね、連結)が可能となるというものですが、この収納性能と機能性、そしてABS樹脂という堅牢性から高い評価を勝ち取り、現在では工具の分野に留まらず、欧州を中心に医療部門など幅広い分野で急速に普及しているようです。

このハイスペックな工具収納Box、元々はTanos社というFestool社の系列会社が開発したものであるようですが、少し調べてみたところ、Systainerの開発経緯の途上において、マキタや日立の開発部門も独自に研究開発していたようで、マキタの方は、systainer®が4つのラッチからT-Rocという新たな機能性を開発する時期に前後し、特許登録(US Design Patent)を行っていることが確認できます。

日立はその後、数年遅れ、Yi-Hung Linという名前で2015年に特許登録が行われてます。(こちら

現在、マキタはこのsystainer®を、独自ブランドの〈マックパック〉という名称で展開していますが、前述のようにsystainer®とは基本仕様が同一で互換性があると思われます。互換性というのか、メーカーの垣根を越え、連結して積み重ねる事が可能だという意味ですね。

基本仕様においてsystainer®と共通させているという事が意味するものは何か、少し考えればお分かりのように、マキタも日立も、欧米において幅広く商品展開しています(RYOBIというブランドも欧米で展開していますが、日本のRYOBIとは商品そのものもかなり異なっています。その経緯などについては不明です)。

したがって、Tanos社主導でのsystainer®開発に乗ることで、ユーザビリティを図りつつ、一方でブランドイメージを打ち出すために、基本仕様を共通としながらも、デザインや細部仕様等の領域で独自性を追求してきた、といったところでしょうか。

systainer®のスタンダードな基本的な製品サイズは 400×300(実寸:396×298)で同一ですし、高さのバリエーションの1、2,3,4,も同一です(1:105、2:157.5、3:210.、4:315mm ←52.5mmの倍数になっている)

ラッチの仕様、位置も同じでしょう(たぶん)

工房 悠の場合のsustainer®(旧型クリップ式とT-Roc式の混在)
工房 悠の場合(旧型クリップ式とT-Roc式の混在)

なお、systainer®ですが、ご存じの通り、現在このラッチ式の仕様は旧型の〈クラシック〉と呼称されるものであり、現在はもっぱらT-Roc式というものに進化させてきています。

私が購入した Festool社のDominoやハンドルーターは旧型のラッチ式のsystainer®に入れられて来日したのでしたが、その後間もなくT-Roc式に改められています。

T-Roc式
ラッチ式は左右に4つのラッチが配置され、単独使用では後部の2つは固定のまま置かれ、前の2つのラッチの開閉で扉が操作されます。

 ここに別のsystainer®を連結させる場合、4つのラッチを開放し、上に重なるsystainer®のラッチ受けまでせり上がらせ、パチンと止めることで連結固定されます。

対し、T-Roc式の場合、単独使用では正面のT-RocをT字型にすれば扉は閉まり、半回転させればロックが外れ開きます。

別のsystainer®を連結させる場合、扉上部奥の左右に穿たれた溝があり、ここに別のsystainer®の後部を滑り込ませ、正面のT-Rocを、上のsystainer®のポッチに被るように1/4回転させればロックされ、連結されるという優れた機構となっています。(上の画像参照)

T-Rocタイプの場合、結合されたまま、内部アプローチが可能

ただ、旧型でも新しいT-Roc式のBOXを連結可能にするため、ラッチも受けられるよう、刻みは残してありますので新旧混合でも連結ビルトアップは可能です(うちのsystainer®の場合の画像参照)。
この辺りの新旧混在するユーザビリティは高く評価されて良いでしょう。

なお、〈マックパック〉および〈システムケース〉については、systainer®のT-Roc式が採用されるということはたぶん無いでしょう。

これは他でも無くパテントの問題があるわけでして、今後もラッチ式で展開していくものと考えられます。

systainer®は電動工具の販売において付属されてくる筐体なのですが、もちろん単独でも販売されています。

因みに、確認したところ、マキタは工具販売での筐体として付属させているようですが、HiKOKIはあくまでも筐体だけの単独販売で市場展開させているようです。

なおsystainer®ですが、日本国内では正規代理店(HAFELE)の他、多くのところでの販売も始まっているようですが、価格面の問題から私は米国から買い求めたことがあります(Festoolブランドの他、Tanos社のものなど(画像、墨黒のもの)。

この価格問題ですが、いわば非関税障壁というか、欧米での市場価格とは大きな乖離があり、大変困った問題ではあるのです。

その点、マックパック、あるいはシステムケースは国内で幅広く市場展開され、競争原理も働きますのでユーザーとしてはありがたい展開と言えるでしょう。

このsystainer®と、T-Rocではない旧型ラッチ式のマックパック、あるいはシステムケースを価格面を含め、どう比較 評価し、選択するかはユーザーの価値の置き所での違いとなりますね。(加え、ブランドイメージもあるのでしょうか)

両方を使っていらっしゃる方もおられると思いますが、ぜひ使い勝手などについてコメントいただければありがたくおもいます。

さてところで、もう少し話しを進めましょう。(続く

hr

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