工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

職業としての家具作りについて (2)

2回目の記述を始めるに当たって、少し「職業としての家具作り」と言うものの在り方(存在形式)について考えておきたいと思う。つまり業態によってその捉えられ方も異なってくるだろうから。
しかし実は業態をいくつかの形態に分けると言ってもその線引きは難しいだろうと思う。したがってかなり荒っぽい区分けをせざるを得ないことを断っておきたい。

  1. 資本を市場から調達し、大規模な設備を備えた家具メーカーというものに従事する職人
  2. 零細な規模の木工所に従事する職人
    ・1.のメーカーの下請けとして業務する木工所
    ・大きな家具販売店、問屋などと繋がって受注生産する木工所
    ・一貫生産しつつ、独自の自社ブランドで販売する木工所
  3. 個人が独立経営する木工所(一人親方、あるいは数人のアシスタント、弟子が付く場合も含む)

とりあえずいくつかの形態を挙げてみたが、今回の記述の対象は3であることは自明だが、これはさらにいくつもの形態に分かれるので、まずここで概観しておきたい。

  • 自身のオリジナルなものの制作に特化させ展開する、いわゆる個人家具作家
  • 特定の、あるいは複数の木工所の下請けとして制作することを業務の中心に置き、一方で空いた時間に自身が作りたいものを制作し、展示会などを行う職人兼作家
  • 木工教室などを業務の中心に置き、一方で自身のものを制作する講師兼作家
  • 訓練校、美術学校などの制作助手を兼ねながら、一方で自身のものを制作する助手兼作家
  • 特定の、あるいは複数のデザイナー、あるいは建築家の依頼を受けて制作することを業務の中心に置き、一方で自身のものを制作する職人兼作家

あるいはこれらには該当しない形態もあるだろう。
また一人の職人を対象にしても、時間の推移とともにこれらの形態を様々に移行していくことも多いだろうし、複雑に絡み合っていることもあるというのが実態だろう。
このように個人経営の職人にしても家具製作の態様は実に様々。


この様々な業態にはいくつもの差異が認められるのは当然。製作される家具の品質レヴェルの差異。用いられる原材料とそこに投下される労働力のバランス(付加価値)の差異。製作されたものに付随する匿名性と、顕名性の差異。仕事の安定的受注と不安定な受注という差異。仕事の達成感のレヴェルの差異。社会的な評価における差異。これらが複雑に絡み合い、隣の芝生が青いと嘆くことにもなるかもしれない。

しかしそれらの差異にはボク個人の思考の基準に照らせば本質的なところでの差異とは思えない、とひとまず言っておきたいと思う。

下請けに甘んじている業態であれば、安定した仕事量も確保できて淡々と業務に励むことができるだろう。しかしふと立ち止まって自身の木工人生を振り返り、いささかの悔悟に自省を迫られるかも知れない。

一方、展示会展開で少しばかりの売り上げを確保し、少しメディアにも名が売れ出して個人作家の歩みを始める人も多いだろうが、それまでの下請的な業務を断ち切ることで、実は不安定な所得に甘んじざるを得なくなるかもしれない。

以前、他のところでも記述したこともあるが(参照)、こうした作家志向にはある種の「断念」を自らに強いることからしか臨めないものであることも確かなことなのだ。
この両者には大きな差異があるとも言えるし、上述のように社会的に見てさほど本質的な差異が認められないという視座に立つことも可能なのだ。

1つのものを得るためには何某かのものを捨てるしかないというのが普通の人々の世の倣いだ。

結果得られるものの差異は、その人が人生の最期を迎える時に覚えるであろう達成感という奴の差異となってくるのだろうが、それらの評価基準もまた一様ではない。

さてこのように家具製作に従事する木工職人とは言っても業態によって様々なスタイルがあり、職業としての家具製作とは言ってもその人の獲得目標によって、与えられる道は多様であることをはっきりさせ、自身にとってはどの道が適切であるかを洞察できる力というものを持つことにより、ストレスフリーで日々の業務にも励むことができるのではないだろうか。

しかし、なかなか自身の適性と力量を見定めることは至難なんだな、これが。
(2回目は早くも完全に脱線してしまった。次は宮本さんに失礼の無いように軌道修正し、《家具製作のもう1つの本来の姿》というところから少しでも論考を深めたいと思う)

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • こんにちは、アフィリエイトサイトのe−アフィリと申します。
    突然のメール失礼します。
    ブログ拝見させていただいて内容・デザイン共に”見せるブログ”としてとても質の高いブログだと思いました。
    是非、e−アフィリに参加して頂けないでしょうか?
    登録はもちろん無料です。
    《1クリック1円〜・1登録1000円》
    と幅広い報酬システムにて運営させて頂いております。
    詳細などシステムはURL先で確認して頂けますので宜しくお願いします。
    何かご質問等ありましたら、メールにてお気軽にお問い合わせ下さい。
    ご参加、心よりお待ちしております。
    既にご登録頂いてる方、または我社から同様の内容の書き込みをさせていただいたことがありましたらば誠に申し訳ありません。
    e−アフィリ http://e-af.net/?hr

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.