工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

顧客宅での撮影取材

ルームディバイダ今日は雑誌取材があり、納品されたものを撮影したいというので、県内西部地区の顧客宅へ出向いた。5年ほど前に納品させて頂いたものがメインで、その後数点追加受注を受けた顧客だったが、県内とはいえ80Kmという距離もあり、交流は決して頻繁ではない顧客の1人で、久々の訪問だった。
写真撮影となると顧客の生活部分へと深く入り込むので決して愉快なものではないだろうが、今回は快く受けて頂いた。
この顧客との出会いは同地域にあるギャラリーでの個展の時に、ある作品(キャビネット)を見初めて頂いたことがきっかけだった。
ただ残念なことに、対象の作品は売約済みであったもので、あらためて制作することになったものだったが、どうせならということで、大小2台を製作させて頂いた。
置かれた部屋は東向きの陽当たりの良いリビングルームであったので、オイルフィニッシュ仕上げの色調は、かなり褪せたものとなっていたが、しかし技法を究極的に追求してしつらえたものではあったが、全く往時の機能を損なうことなく、またドアパネルの〈単板(4mm)+積層芯〉の歪み、暴れ、剥ぎ切れもなく、偉容を誇っていたのには、正直、安堵と共に、いささかの自負を確かめるものとして十分なものだった。


いずれまた機会を見て改めて塗装し直すことを約束してきたのだったが、加えて新たな調度品の制作依頼に関する話も出て、そうした意味からも成果のある訪問だった。
取材クルーも写真写りとしては悪くない印象を持ってくれたようで、快調に仕事に精励してくれていた。
ボクより少し若い世代の取材スタッフだったが、旧知の関係という事もあってかフレンドリーに、かつ忌憚無く木工についても語ることもでき感謝しておきたい。
雑誌メディアの人とは言え、木工、インテリア、家具、に長期にまた深く取材を重ねてきているので、ボクなどより数倍も業界について知悉していて、しかし業界におもねることなく、批評精神を持ち続け、共にこうした木工の仕事を社会に広く認知させていきたいという熱い想いもある方々で、日本の木工の未来も決して捨てたものではない、という思いにもさせてもらい、またそうしたこともあり自身でも数十年前の初心へと立ち返ることもでき、いささか得難い非日常の1日でもあった。
数ヶ月後には書店に並ぶようなので覗いていただきたい。
*Top画像:「ルームディバイダー」
       木曽檜、ブラックウォールナット、他。2,000年製作。
*下画像:顧客エントランスにあった「三猿」(見ざる・聞かざる・言わざる)苔むして良い感じだ。三猿

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