工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

雑誌掲載と広告

今日、雑誌社から電話が入る。
「『○○グラフ』という全国誌の△□です。静岡、島田の企業の方々からご紹介受けたのですが、取材させていただき紙面を作りたいと思うのですがどうでしょうか?」と関西なまりの営業マン的アプローチだ。
「有名な俳優の■■さんと同行し、その方のインタビューを受ける、という内容になります」と続いた。
うちには決して多いと言うほどでもないが、メディアからのこうした依頼が飛び込むことがある。
多くの場合、断ることになる。
これは掲載とは言っても取材される側が掲載費用を支払って紙面構成するというものだからだ。
つまりこうした電話アプローチのメディアはいわゆるジャーナリズムなどではなく、出版業務をしているとはいうものの広告業というわけだね。
雑誌掲載に応じるということは、一般に取材費用は取材される側が頂戴する、ということなのでは?(これまでの経験では決して多額ではないけれどいくばくかの謝礼をいただいている)
今回は電話の応対をしながらMacを起動させ、ブラウジングし対象サイトをググって、このメディアのサイトを探しその実態を調べることも出来たので、速攻で断ることになった。
広告業なのではないかと問いただせば、「取材費用は頂きます‥‥」と、潔く明かしてくれた。


その後さらにネットでこの会社名をキーワードとして探せば、出てくる、出てくる。いわゆる各ポータルサイトの質問コーナーに「『○○グラフ』という会社から取材に行きたいという電話があったのだけれど、どういう会社なの?」と言った内容。回答者はさすがに的確に答えている。
逆に、うちはこの『○○グラフ』に紹介されました、と誇らしげにページ構成しているサイトもある。確かに著名(昔?)なタレント、スポーツ選手、俳優などが訪問しているようだった。
そうか、最近あまり見かけないと思っていたら、こういう営業をしていたのだね。
「広告」はボクのような業務においてもその必要性を認めないではないが、こうした取材依頼は全て断る。
必要であれば、自ら構成企画し、持ち込めば良いだろう。
しかし何故うちが‥‥、
無作為にうちに営業してきたのでは無いだろう。恐らくは静岡の企業さんから聞いた、というのはウソで、ネット発信している工房などから選択して電話掛けたのだろうね。
つまり彼らの餌食になりそうなところがうちだったって訳?
それだけスキを見せているということか (苦笑)
さて少し話は変わるが、前回の記事で「個展」のお知らせをしたが、こうした展示会の展開においても「ギャラリー企画」での開催を基本としている。
つまりギャラリーにも大きく分類して画廊企画によるものと、貸し画廊によるものの2つがあるが「貸しギャラリー」ではしないということ。これにはいくつかの理由があるが、雑誌掲載における自己規制と同様な考えからと言えば理解していただけるだろうか。
武士は喰わねど‥‥、の類かな(苦笑)
余談になるが、全国紙(新聞)などにも、いわゆる【広告】ではなく、取材で構成された紙面のようなスタイルを取ったそれこそ1面全部を使った大きな記事が、よくよく見れば広告記事であったりすることがあるが、あれは実に紛らわしく、読者を惑わせるものだと思う。
如何にもその新聞社の編集、記者が取材対象として臨んだかのような装いをもっているものの、その実、取材対象が費用を払って(広告費用を払って)、構成されたものであるから、詐欺とは言わないまでも、許容範囲ぎりぎりのところだね。
気をつけられたし !
ボクはほとんどTVも見ないし広告に影響を受けることのないよう自己規制しているが(今朝の朝日新聞の見開き2面広告〈New iPod nano〉には驚いたね、しかし)、民間メディアの不況知らずの放漫経営は如何に広告に金が流れ、人々がこれに無自覚に振り回されているかということの証左なのだろうね。
メディアの荒廃がさけばれて久しいが、これをのさばらせているのがボク達視聴者、購読者の側からの需要があってのことだという関係性が変わるものではない。
少し内容が本論から離れてきたので、今日のところはこの辺で‥。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  •  「『○○グラフ』取材と言う集金時に見せて頂く号と、提載された号が送られ拝見する以外にまず見ることの無い雑誌ですね、偶に何かの店に入った時にその店の提載された号が置いてあり経営者の方の見識を****があります。旬を過ぎたタレントさんとお話できたと思えば安い気もします**で今現在の取材費用は如何程でした?。まだ 継続していたんですね。
     全国紙(新聞)などにも、いわゆる【広告】ではなく、取材で構成された**云々 週刊誌等にも有りますね あれ提載する新聞社や雑誌社が一番いかんですね 本当は買って読むの辞めましょう まあ今日はこんな処

  • 現在、千葉の片田舎のギャラリーで行われている私の先生の
    個展の片隅に私の作品も数点置かせてもらっています。
    artisanさんのギャラリーに関する考えは一理あると思うのですが「ギャラリー企画」の場合はあくまで、ギャラリーの客であって作家の客ではない訳で30パーセント前後の販売手数料がギャラリーの客から注文を受ける度に取られることになります。
    反面、「貸しギャラリー」の場合は販売の努力は作家自身が
    しなければなりませんが、作家自身の客が作れるはずです。
    個展の終了後には考え方によっては販売手数料の分だけ安く販売することもできる訳です。
    プロでもない者がこんな話をして申し訳ありませんが
    その辺どんなふうに考えていらっしゃいますか?

  • 木之輔さん あなたも経験がお有りのようですね。
    >現在の取材費用は如何程
    そこまでは聞きませんでしたが(それを引きだすと断るのがやっかいだから)、ネットで見ますと80,000円だそうです。
    雑誌、週刊誌に限らず全ての商業メディアは広告で成り立っているということは、これに影響を受け購買に走る人たちがごまんといる、ということです。
    ま、皆さん欲望の赴くまま財布の紐を緩めてやってください。

  • acanthogobius コメントありがとうございます。
    やや誤解を招くような言及だったかもしれません。
    これはあくまでも木工家artisanとしての活動のスタンスに関わる考え方です。
    優劣を問うものではありません。
    大事な指摘ですのでボクの考え方をこのコメントという制約の範囲で述べますと‥
    木工家は販売の専門家ではありません。工芸美術への造詣に基づいた販売の専門分野というものも社会的に必要とされます。ここを窓口として様々な分野の作家と美術工芸愛好家が結び合うことになります。
    顧客の立場からすれば必要な経費(販売費用)を負担してもギャラリーの鑑識眼と品質基準への信頼を元に新しい作家との出会いが可能となります。
    >ギャラリーの客であって作家の客ではない訳で
    という捉え方もできるでしょうが、そのような見方は物事の半分しか捉えていないように思いますね。購入客側の購買動機を正しく言い当てるものとは言えないでしょう。
    今の時代、ギャラリー側の薦めで簡単にサイフを開かせるほど安易でもありませんし、購入客もこのギャラリーとの交流の中で研ぎ澄まされた美意識に従い“買う”という最終決断をしていくのではないでしょうか。
    ギャラリーは紹介者であり得ても購入する顧客の同伴者ではありません。作家、ギャラリー、顧客、それぞれが自律独立した存在です。
    最後にもう1つの経験をお話ししますと‥
    若い頃、あるギャラリーで木工のグループ展を企画参加したことがありました。
    残念なことにその中の幾人かは必ずしも十分な準備をせずに出品(いわば習作)したことで、ギャラリーオーナーから強いお叱りを受けるという苦々しいことがありました。
    これは展示会という厳しい世界に立ち向かう作家としての資質を問うものであったのでしたが、その後ボクは安易な形でのグループ展への出品は自己規制することになりました。つまり作家もギャラリーという専門家から育てられるという側面があることは案外知られていないことなのかも知れません。
    なお販売手数料のことを重点的に問題にされているように伺えますが、確かにこれはボク達木工家にとっては頭の痛い問題ではあります。流通経費といっても良いかも知れませんが、できるだけ造り手側に戻るようなシステムを考えていかねばいけないというのは大きな関心事であることは言うまでもありません。
    なおここでは紙面の都合上触れられませんでしたが、貸画廊の方はまた別の意味から社会的に有為なものであることもその通りです。

  • 丁寧なご意見感謝です。
    「そのような見方は物事の半分しか捉えていない」は確かに
    そうかもしれません。
    私の意見は単に作家側から見た金の流れる方向だけを捉えたものです。
    習作を叱ったギャラリーも含めてartisanさんの言われるような
    理想のギャラリーが見つかればそれは幸せな事です。

  •  企画展示主体のギャラリーの場合、高水準の催事を続けていれば「ものを見る目があり」かつ「気に入れば実際に買ってくれる」、いわゆる上客が付きます。お客に「このギャラリーが推奨する作品だからきっといいものに違いない」という期待や信頼が醸成されるわけですね。ギャラリーの方も、質を落とさずしかも一定以上の売り上げをあげないといけないので、おのずと作品や作家に対する評価は厳しくなります。
     対して場所貸し主体のギャラリーの場合は、作品の良し悪しにかかわらずとりあえず「日銭」が入るので、どうしても質の低下や展示内容の混交を来しがちです。
     さらに言えば、大企業のショールームや市民美術館の類いで無料で展示できるところがありますが、その多くは販売をおおっぴらにはできません。ここを訪れるお客はなにかのついでに寄るとか、はじめから買うつもりはないひやかしが多いので、たいていは来客数と評判のわりには売り上げがよくありません。
     プロの作家であれば、高い評価プラスとにかく売れないことには話になりません。お金は正直です。身銭を切ってその作品を入手するか否かとなると、お客の目はものすごく厳しくなります。付き合いやお世辞ではまず買ってくれません。知人・友人・記者等の口先だけの評判がいくら高くてもそれはほとんどあてにはなりません。
     プロの作家なら評判の良い企画ギャラリーで個展をするに限ります、というのが私の意見です。

  • 大江さん コメントありがとうございます。
    ボクの不手際な説明を補って余りある過不足の無い適切なご意見、助かります。(^^ゞ

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