工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

SYSTAINER(システナー)という優れたツールケース(追記あり 2014.10.22)

はじめに

私たち木工職人にとり、電動工具を合理的に使いこなすことは、制作プロセスの効率化、快適な作業工程において重要な領域の事柄と言って良いでしょう。

その時代の産業技術の粋を集めた道具を使いこなすことは、より高精度で、より効率的な加工工程を獲得することに繋がり、高品質な制作を補助してくれるものになるわけです。
これは作業者にとっても、ムダの無い手さばきに繋がることでもあり、より快適に臨むことができるとも言い換えることができますね。

今日紹介するSYSTAINERというたツールケースは、こうした道具、とりわけ電動工具を整理、収納するためのものです。

快適な作業を補助してくれる優れた電動工具も、作業の全体の流れを抑えてしまうような収納、整理の方法では困ります。

スムースに出し入れができ、その道具のアタッチメント、専用ツールなどが適切な場所に然るべく整理されているのは、使い勝手をより高めることになり、どうせならそうしたことを適えてくれるツールケースを使いたいもの。

SYSTAINER新旧

SYSTAINER 新旧


また、電動工具の収納方法として、まま見られるのが、オープンの棚に置かれるケースです。

サム・マルーフの工房の画像を見れば、開け放たれた大きな棚収納に、様々な電動工具が無造作に置かれているのが記憶にありますが、日本のような湿潤な大気が特有の環境に、裸のまま、長期間にわたり置かれれば、間違いなく錆び付いてくること請け合いです。

できるだけクローズのケースに仕舞いたいものです。

余談ですが、これは手道具のカンナなどにも言えます。
良く著名な木工家などの作業所壁面に、ダダーッと並んだ壮観なカンナのストレージ方式が見受けられます。
これはディスプレー効果を狙ったものであったとしても、カンナのためには決して良いものではありません。
鋼はサビが来るでしょうし、台も日本の四季の変化により歪んでしまいますね。
私の場合、カンナの全てをキャビネットの抽斗に整理しています

そうした目的を適えるための1つの解決法がSYSTAINERというたツールケースの導入です。

Festool社の搬送ケース

私がこれを最初に導入したのはFestool社のハンドルーター〈OF 1400 EQ〉を買い求めた2006年のこと。
この〈OF 1400 EQ〉がSYSTAINERに収納されてやってきたことによります。

翌年の春には続いて〈Domino〉を導入しましたが、もちろんこれもSYTAINERに納められてやってきたのでした。

このボックスは40×30cmサイズの駆体で、数種の深さの展開があり、電動工具のボリュームにより選択されます。

駆体はプラスチックの中でも剛性が高く、耐衝撃性のある、ABS樹脂で作られています。
軽量にするためと思われますがその厚みは比較的薄く、それを補強するために随所に骨組み的なデザイン構成になっています。

SYSTAINERの特徴

特徴的なのは、ビルトアップできる駆体の構造と、連結システムです。
画像を見ればお分かりのように、前後左右、4つのクリップでSYTAINER同士を上下に連結、開放することができるシステムです。SYSTAINERという名称の由来も、このビルトアップ方式からのものでしょう。

連結システムのクリップは、意外と簡単な構造をしていていますが、その結合強度は十分なものがあります。
ただ後に詳述しますが、少し扱いにくいのも事実ですね。

この内部は収納されるものに合わせ、パーテーションを施したり、収納するものに合わせ、成形されたソフトなクッションを敷いたりと、いろいろと工夫されています。

(またこれを細かく仕切り、抽斗機能を付けたものもあります。➡こちら
またキャリングが容易にできるよう、このSYSTAINE専用のキャスター付き台車まで展開してます。
(私はコストカットの意味から自作しましたが 汗;)

このように、それまでの電動工具の収納には見られない、いくつかの特徴があるわけですが、実はこのSYSTAINERという収納ボックス、決してFestool社のものではありません。

TANOS社

Festool社と同じ独のメーカー、TANOSという会社の製造によるもののようです。

したがってFestoolで海外に知れ渡ったSYSTAINERですが、今では様々なメーカーがOEMで提供を受けているようです。(事例
ただやはり、まるで自社開発したかのような親和性を持って展開しているのはFestool社であることに違いが無いような勢いですね。

自社の様々な電動工具の全てをこのSYSTAINERとともに販売していますし、また同社の集塵機の上部をDockとして機能させ、SYSTAINERをジャストフィットさせる機構になっていることからも、ただならぬ蜜月を感じさせます。(Festool社webサイト)(資本上での関係もありそうですが、詳細は不明です)※〈追記〉に詳細な情報を記述しています

Festool社以外の電動工具メーカーでの活用

他では、ネット上で確認できるところでは、おなじみの日立工機、BOSCH、マキタ、Lamello、LeeValleyなどですね。

なお、日本の電動工具メーカーのロゴ入りのものもあるところを見れば、欧米のそれぞれの販売網ではSYSTAINERを導入してはいるものの、本家本元の日本国内では取り扱いが無いという現状があります。
それぞれのファンが知れば、不満も出ようと思われる実態ですね。

また、他にも電動工具に留まらず様々な領域で使われていると思われます。
需要層の多さを考えれば当然としましても、メディカルの領域にも活用が拡がっているようです。

(どなたか読者の方々で、日本国内でFestool社以外の使われかたを知っていらっしゃればぜひご案内ください)

新機構・T-Lock

T-Lock

T-Lock

さて、こうして様々なところで活用が拡がっているSYSTAINERですが、数年前、大きくモデルチェンジしました。
T-Lockシステムという結合法が開発されたのです。

上述のように、それまでの4つのクリップで連結方式に変え、正面のT型のクリップ1つで連結、開放を適えてくれるという革新的な方法です。
Festool社のものもいち早くこれに切り替えています。


T-Loc

T-Loc

私もこの度、Festool社の電動工具ではなく、Festool社提供のSYSTAINERのみを1つ追加導入しました。
他社の電動工具を収納するためのものです(画像 下)。

それまでのSYSTAINERはT-Lockシステムに替わったことにより、クラシックと呼称されるようになりましたが、このクラシックとも結合ができるよう、4つのクリップの受け部は残したままですので、互換性は全く心配ありません。

T-Lock型SYSTAINERの爪

T-Lock型SYSTAINERの爪

このT型ロック、とても良く考えられていて、それまでの4つのうちの背部2つはクリップでは無く、本体駆体の底に楔形の駒を付け、これを相手の上部蓋に穿たれた溝に噛み合わせる機構とされています。

前部の2つのクリップの方は、T型のLock 1つで確実に連結できる機構に更新されています。

同時に、蓋の開閉もT型ロックの回転位置で開け閉めできる機構になっています。

入手に関して

このように、とても優れたSYSTAINERですが、上述のように日本の電動工具メーカーの海外法人では活用されているにもかかわらず、日本国内では疎んじられている現状は、はなはだ非関税障壁の如くに、疎ましい限りです。

さらには、OEM先のFestoolのものを輸入して販売している正規代理店も数社あるようですが、いずれも価格は現地価格の倍を超えるほどの設定になっていて、とても手が出せる状況にはありません。

SYSTAINERに収納されたDewaltルーター

SYSTAINERに収納されたDewaltルーター

こうした正規輸入販売会社は、日本国内の消費者に取り、海外から取り寄せる手間を考えれば、一見、購入のハードルを下げるもののようでいて、私見を述べれば、逆ですらあります。

どういうことかと言えば、こうした日本国内展開があるために、それらの商品は日本向けに輸出させないという障害が設定され、個人輸入しようという意志を阻むことになるからです。

最後に購入にあたり、1つ注意点を・・・
上記のように、国内でも取り扱いがあるようですが、このSYSTAINER、既に4〜5年前にT-Lock型に更新しているにも関わらず、クラシックのタイプが販売されている可能性もあるようです。

T-Lock型に較べ、あえてクラシックの方を選択するメリットは無いと断言できますので、注意してください。

しかしこのところのアベノミクスの余波を受けた円安は本当に困ったものですw

【参照】
■ Festool社 Systainer ® and Sortainer Storage Systems


【追記】(2014.10.22)
本稿で記したように、SYSTAINERはFestool社とTANOS社のものがあり、この両社はどのような関係にあるのか、少し調べたところ、同じ親会社の下にあることが判明。

TTS Tooltechnic Systemsという親会社(持株会社)の下に、電動工具のFestool、エアツールのFest、そして輸送·貯蔵システムのTANOS、およびその他、といった構成になっているようです。

本稿では「蜜月」などと書きましたが、同一の会社のようなもの。

TANOSはSYSTAINERを開発製造し、それを同系会社のFestool社に提供するとともに、
一方、汎用品としても無印のSYSTAINERを製造販売している。

さらには求めに応じ、工具メーカー各社へもOEMでの製造提供を行っている。といったところのようですね。
(最後のOEM云々は、私の推測ですが・・・)

▼ 〈TTS Tooltechnic Systems〉公式Webサイトはこちら

hr

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 道具の収納はなかなか悩ましい問題ですね。
    それぞれで使いやすい方法を考えているのでしょう。
    このFestoolのシステム、統一性とか、省スペースとか、デザインとか
    優れた面もあるのでしょうが、下の物を取り出すために、上に乗った物を
    全て移動しなければならないので、特に無精者の私にとっては使い易いと
    思った事は無いですね。
    Systainerを2個しか所有していないんですけどね。(笑)
    必要の無い人にとっては、箱のために余計な出費を強いられる訳で
    選択の幅があっても良いように思います。
    それと、現場作業中心の日本の電動工具市場では、このような角ばった
    箱の需要は多く無いように思います。

    • acanthogobiusさん、コメントありがとうございます。
      本文中にもあるように、様々な考え方があり得るストレージの1つの解決法として紹介させていただいていますので、そのように理解していただければうれしいです。

      まぁ、モノ作りに従事する私のようなものにとっては、こうしたシステムとして物事を解決しようとする合理主義のドイツ的な発想、洗練されたクールな思考とデザインは、好ましいと考えるわけですね。
      (・・・そもそもデザインとは、物事を解決するという意味があるわけですが)

      評価すべきは、統一した駆体と、連結システムにより、効率的、機能的に整理整頓が可能となるところでしょうか。

      なお、現在、業界でこうしたものに相当する、あるいはより高度なものが他にあれば、ぜひご教示ください。

      以下、それぞれの疑念について、少し逐次的に回答を試みてみましょう。

      >下の物を取り出すために・・・
      下のものを取り出す場合にも、T-Lockによりワンタッチで取り外せますね。
      ビルトアップが過ぎますと、当然にも上部は重くなりますが・・・

      T-Lockでの接合、切り離しがご不満であれば、個々にスライドレール機構抽斗に収納させるというキャビネットもあるようです。(こちら
      これは購入するより、我々であれば自作が可能でしょうけれどね。
      (ただ私は現在のスタイルで十分ですので、こうしたものは不要です)

      >必要の無い人にとっては、箱のために余計な出費を強いられる
      仰る事は分かります。
      ただ、いずれにしても裸、あるいは段ボールで、ということは、こうした現場作業に携行する工具ではあり得ず、何らかのハードなケースが必要です。

      多くのメーカーの場合、一般に工具ごとにジャストフィットするケースを用意しているわけですが、同一メーカーでも、機種ごとにバラバラな仕様で提供されるスタイルよりも、こうした統一的で、かつシステムとして提供された方が、使い勝手と管理は、はるかに良いのではと思われます。
      スマート(賢い)な選択ということになるのではと思います。

      欧米で展開しているFestool社以外の日本のメーカーのものにも採用されているところからも、そうした選択基準が窺えます。

      また箱の原価が工具総額に占める割合がどうであるかまでは分かりませんが、他のメーカーのケースと較べ、それほど過大であるとも思えません。(開発コストはそれなりのものがあるかもしれませんが、プラスチック一体成形ですので、製造コストはほとんど変わらないでしょう)
      さらにはFestoolという企業精神から、あるいはFestoolユーザーの視座からすれば、このSYSTAINERの選択は決して過剰でもムダなものとも考えないのでは無いでしょうか。
      (つまり、Festool社の工具が、他社のような個々バラバラのプラスチックケースで送られてきたとしたら、Festoolユーザーは例え多少安価になったとしても、果たしてにんまり喜ぶのでしょうか)

      >角ばった箱の需要は多く無い
      どういうことを指していらっしゃるのでしょう?

  • 現場で使用する電動工具の多くは、所謂キャリングケースに収められている物が多いです。私が勤める会社で所有しているヒルティなども
    結構大きなキャリングケースに収められています。
    それは,やはり現場が狭い足場を登った先にあったり、脚立を登った先にあったりするからですよね。角ばった箱ではそれは不可能です。
    まあ、確かにFestoolを現場で使う人はいないでしょうからSystainerも意味があるでしょうが、マキタや日立では無理があるのではないでしょうか。

    抽斗になった物もあるようですね。データーセンターでサーバーを収めるラックのような物があると良いかもしれません。
    ちょっと味気ないけど、オフィスで使うスチールの袖机が私には便利そうに思えます。結構深い抽斗がフルオープンします。

    • なるほど、ですね。シチュエーションが異なりますからね。

      acanthogobiuaさん、ところで・・・ものは相談ですが、
      不要なSYSTAINERがあれば、私が引き取らせていただき、有効活用いたします。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.