前回のドイツのテキストからの図版ですが、せっかくですので、解説のコメントを付しておこうと思います。
番号順にいきましょう。

面腰 事例 図版
#369
面腰の仕口ではありますが、枘が上端に開いていますね(次の#370も同様)。
枘と言うより、これは3枚組み手のような感じですが、欧米には比較的多く見られる手法のようです。
加工はノミで開口する必要性がなく、よりイージーですが、組み上げ段階では、接合位置が決まらずに、むしろ苦労します。
枘の位置に込み栓を打ち込んでいる画像を見ることがありますが、そうした手法で抑え込むのでしょうか。
面腰の個所ですが、この場合、正面のみが切削され、後ろ側は残してあります。
これは単に見栄え上の問題でしょうか。
#370
#369同様、枘は開いているものの、面腰部位は極めてスタンダードな事例。
いわゆる片銀杏面が施されています。
(横框の面腰部位は45度にカットされているはずですが、図からは読み取れませんね)
#369のように、枘の後ろ側を「違い胴付き」風にするメリットはさほど感じられませんので、開いた枘の問題は別として、この面腰加工が一般的です。
#371
貫部分への面腰のケースです。
このケースも正面側のみをカットしていますね。
本来はこうした加工が望ましいだろうと思いますし、私も後ろ側への配慮が必要な場合では、こうしたことも行いますが、特段の必要性が無いかぎりやりません。
これでは機械加工はできませんので、私の場合はそのまま後ろまで抜いてしまいます。
現代では、たぶん、そのスタイルが一般的でしょう。
普通には見えない後ろ側ですし、決して「逃げ」ているわけではないので、構わないと思います。
面形状はヒョウタン面に、丸溝が加わっています。様式的なデザインなのでしょう。
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