工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ソファの完成も近く

梅雨空
昨日に続いて今日も晴れ間が覗く。
午後は強い日射しも。
窓という窓、ドアというドアを開け放し、工房内部の空気を入れ換える。
明日からは再び梅雨空という予報。貴重な二日間だった。大気に感謝だねぇ。
花を探してばかりいるわけでもなく、仕事も快調に進行している。
3人掛けのソファ、「Relaxation 悠/3p」の途中
昨年新たに設計制作したものをベースに、一部サイズ変更とともに、改良を施したもの。
2度目ともなればもう勝手も分かりスムースにいくと考えたが、設計変更を施したので大変さに変わりはない。
部材、接合部、数カ所における傾斜があるので、sin、cos、tan 、得意でもない算数を駆使しての加工。
ボクは関数電卓を駆使するが、世話になった親方はそんなん使わん。不要。
全てこう配で計算し、バシッと決める。
どう考えても関数電卓依存より家具職人としてははるかに合理的。
ボクの手元にiPhoneが来れば、これで計算することになるのだろうか。
そうしていよいよ頭脳の立体認識力、構造解析力は日々衰えていくというワケだ。
さて、こうした少し難易度の高いものでも自身のデザイン・設計であるし、難かしさもむしろ楽しむことができるので制作対象としては悪いものではない。
基本フレームも完成し、既に座も仕上がり、背もメチ払い、仕上げ削りを残すのみ。
後はプレ塗装をして、張り屋さんへと手渡され、
張りが出来上がれば、その上であらためて仕上げ塗装を施し、完成となる。
しかしやはり残る最大の問題は張りの品質をどこまで高められるかだ。
これは張り職人の技能も関係するが、むしろ依頼者であり、設計者であるボク自身の認識と、張りやさんへの強い要請というものが重要となるのだろう。
ソファ悠

月下美人

月下美人
今日で今年も半分が過ぎ去ろうとしていた日の夜半、期待とともにに日中大きく膨らませていた蕾は見事に大輪の花を咲かせてくれていた。
月下美人
ボクが開花に立ち会うのは数年ぶりのこと。
月末の支払いにとクロスバイクで出掛けた銀行の帰路、裏道に面したその家の裏庭に昨日エントリした蓮が咲いていて、これを撮影させてもらっていたところへ家人が声を掛けてきた。
花がお好きですか?
こっちを見て頂戴。あなたラッキーだわ、今晩いらっしゃい、きっと咲いてくれるわよ。と見せられたのは月下美人の花の蕾だった。
やや下向き加減の蕾が、葉っぱの先っぽから伸びた茎に重たそうにぶら下がっていた。
食後Macの前に座ってメールチェックなどの後、9時頃にカメラ、ストロボなどを担いでクロスバイクにまたがる(少しアルコールを入れたので車は使えない)。
5分ほどの距離にある件の裏庭に到着すると、そこだけが何か華やいだ雰囲気。
大輪の月下美人が確かに3つ咲いている。満開だ。
その見事な花は直径にして20cmを越える大きさ。真っ白で独特の華やかな形状をした花弁を大きく拡げ、長い雄しべ、雌しべに顔を近づけると、強い芳香が鼻を刺激する。
3つのうち1ついただいて帰路についたが、コップに挿しておいた花は、今朝は当然にもしぼんでいた。
確認もしていないが、残りの2つも同様に花は閉じられてしまっているはず。
果たしてその2つはコウモリに受粉してもらったのだろうか。
今日は数日ぶりに晴れ間が覗いた。
身体のカビも少し取れたようで快適だ。
残りの半年、よろしくない経済、社会情勢が反転するとも思えないが、くさらず、晴れやかに、一夜にその人生を賭ける月下美人のような潔さは持ち合わせないものの、弛まず日々の生活を送っていくのが人生というもの。
月下美人2

蓮の花(+藤原新也の嘆き)

蓮
蓮の花。
今日撮らせていただいた(コンデジ)のは黄色だったが、この後、ピンク、紅色などいくつかの色のものが咲くのだという。
バスタブのような大きな容器に水を張り数株植えただけのものが、水面を埋め尽くすほどに増殖したのだと、この家の人は言う。
昨年はヤゴ(トンボの幼虫)が大量に繁殖したようだが、どこから侵入したのか、蛙に全てやられてしまったとのこと。
蓮の写真もいろいろだが、ボクの印象としてはやはり藤原新也の蓮に尽きるように思う。
これは古代インドでのヒンドゥー教の神話においても蓮の花「蓮華」はシンボルであり、また多くの仏が「蓮華」をかたどった台座に鎮座しているように、宗教的な意味合いが色濃く、藤原新也はそうした特徴を見事に切り取って見せてくれているからだ。
(彼のサイトにも1枚の蓮の花が納められていたはず)
ところで今朝の朝日新聞のOpinion欄には、藤原新也による「秋葉原事件」についての論考(語り)があり、いつものことながら彼の独特の切り口での鮮やかな論評(社会的、文化的側面からの)を見せてくれ、ボクとしては少し異論もあるものの、深く同意するところが少なくなかった。
彼は加藤某が現場を秋葉原に定めた理由、それは犯行がケータイやカメラの映像機器の群がる中でのものでありネット配信されることを意識した行動だろうと言う。
自分と同類の人々がいるアキバで「無理心中しようとした」と。
この辺りは藤原独特の感受性によるもので、ただちに頷けるものではないが、次の家族の風景の変容、そして日本という国が米国主導の新自由主義への道を選択し、派遣制度という名の「人をモノのように扱う戦前の〔人買い〕のような制度がのうのうとこの民主主義の時代に闊歩している不思議」を指摘し、「若者の犠牲と不幸の上に立って国内総生産を維持する国というのは一体何か。」と断じていることへは強く同意したいと思った。
これまで多くの論者が派遣制度に象徴される過酷な労働現場と、そこから派生する様々な問題ー格差社会、社会の荒廃、民主主義そのものの脆弱化‥を指摘してきたにもかかわらず、政府当局者は全く聴く耳を持たなかったが、アキバ事件を受け、多くの犠牲者が出て初めて見直し論が出るという、この皮肉。「剣はペンより強し」という逆転を嘆く藤原の憂いは深い。
(asahi.comにはこの記事は探し出せなかったが、近く藤原新也自身のサイトに再掲されるかもしれない)
下の画像は藤原新也風に、少しレタッチを施した蓮花。
(全然そうじゃないって。ウム、そうだよね。)
*注 明日はちょっとめずらしい花の画像を届けることができるかもしれない。
蓮レタッチ

木工屋の日曜日は

裏押し
しかし梅雨真っ只中、強い雨が終日降り続いた。
こうした過度な湿潤環境では木工の業務も制約を強いられてしまう。
ところで木工屋の週末は皆さんどのように過ごされているのだろう。
ボクは完全OFFとはいかず、デザイン・設計、経理、顧客対策など業務上のデスクワークで追われるのが通常のこと。
そこに加えて、幸か不幸か住まいと工房が隣接しているので、工房に籠もってしまうこともある。
何をするかというと、機械のメンテナンス、次に取りかかる家具制作の準備、例えばジグを作ることなど。
そして道具の整備、主には刃物の仕立てなど。
昨日は地域の老婦人が亡くなられ、その葬儀の裏方としてほぼ半日にわたって費やされたので、日曜日の今日は工房に半日籠もって刃物のメンテナンスに精を出す。

More »

違い胴付き(ある仕口の場合)

違い胴付き1
「違い胴付き」という仕口はどれほど一般的であるかは知らないが、ある種の納まりにおいてスマートであり、活用する場は少なくない。
今回はソファの座部分の枠に用いる。
ここは座のクッション部が載せられるところであり、クッション性を高めるためのテンションベルトが張られる。
したがって、このテンションベルトの厚み×幅分だけ欠き取らねばならない。
今回は3×25mm.
この「違い胴付き」という仕口を使わねば、枠を組んだ後に、ルーターなどで欠き取ることも可能ではあるが、「納まり」という考え方からすると、あまりそれはスマートではない。
部材の段階でこの欠き取り仕口を施すことで、組めば完成、ということになり隅までピシッと段欠きが施される。
画像のように、今回は本来の「違い胴付き」ではなく、ややイレギュラー。
欠き取りがわずかに3mmということで、本来の「違い胴付き」は無理であるためだ。
本来は下の画像のようなものになる。

More »

なだらかな曲面の場合(鉋掛け技法)

曲面切削1
Top画像は3Pソファの正面の幕板の加工段階。(140W 2,050L)
この成形作業の途上。
シンプルな8,000Rの円弧
8mのビームコンパスを作り、工房の床にセンターポイントを打ち込み、加工材の方は道路にまではみ出させ、やっとのことで墨をする。
後は帯ノコでプレカット。
次に仕上げは手鉋。
うちではこうしたところは型板を作り、縦軸面取り盤(Shaper)あるいはルーターマシーンで倣い切削するのが一般的だが、今回は1枚だけなのでいきなり墨付け、切削という工程になる。
さてところで、この円弧の手鉋での切削成形はどんな鉋を使うのが良いのか。
うちには反り台鉋が大小様々、いくつも用意しているので、8,000Rということであればこの中で最もなだらかな下端(したば)を持つものが良いだろう。
、というのは間違い。

More »

死後の世界とは(宮迫さんの通夜に参列して)

数100m東には相模灘が広がる伊豆半島東岸に立地する葬儀施設の大ホールには、告知時刻の10分前に到着したが、既に200ほど用意された席はほぼ埋め尽くされようとしていた。
宮迫千鶴さんの通夜の会場。
まさかこんな形で宮迫さんに再会しようとは思いもしなかっただけに、会場までの伊豆山中行はとても辛い行程だった。
3時間の行程、カーステレオに繋いだiPodから選んだソースは、モーツアルトのレクイエム、マーラー「巨人」の第3楽章、そしてベートーベン第7番、第3楽章。
午前中の仕事から通夜会場へのスイッチのためのものだったが、後述のような理由から余りふさわしくない選曲だったかも知れない。
喪主、谷川さん以外に知った顔はほんの数名だけであったが、贈られた花輪の札には出版社、新聞社、放送局などの大手メディアをはじめとして、著名な画家、アーティスト、あるいは各地域のギャラリーなどの名前が見える。
故人の生前の幅広い活躍と、交流の深さを物語るものだ。
あるいはこの地で爽やかな5月をアートで埋め尽くす「伊豆高原アートフェスティバル」の発案者、企画運営者として伊豆のこの地に移住した頃から、地元密着型で、かつ多くの美術愛好家を首都圏から招き寄せる仕掛人だったことから、多くの地元の方々の参列者も多かったのだろう。
故人の遺影は萌葱色のドレスに身を包み、おだやかな笑みを浮かべる美しい姿だった。
そして喪主、谷川さんはご長男とともに参列者のお悔やみにひとつひとつに丁寧に返礼されていたが、意外にも沈み込んだ姿というよりも、気丈に、よく皆さん来てくれたね、と言ったようなむしろ明るく接遇してくれていたのが印象的で、ただそれだけで会葬者にとっては救われる思いがした。
この意外さというものは通夜式辞の最後の喪主の謝辞によって明かされた。
宮迫さんの伊豆移住後というものは、徐々にスピリチュアルな世界を探求し、その方面への思考を深めていったことはよく知られているが、谷川さんからは彼女の死後の世界への関心と、これを確信するに至るまでの精神的な遍歴に触れ、宮迫さんは最後には「死は怖いものではない」「これを受け入れることができる」とまで語っていたことが明かされた。
どちらが先に亡くなろうとも、決して落ち込まず、またどこかで逢えるぐらいの気持ちで受け止めよう、という死生観で結ばれていたのだという。
これを聞かされるまでは、到底谷川さんのしっかりとした会葬者への振る舞いと、謝辞に込められた、宮迫さんの強いメッセージは理解が困難だったかもしれない。
しかしやはりそうは言うものの、喪失感はあまりにも大きい。あまりにも早く訪れた死期。
ボクなど俗物には、とても死を前にしてじたばたせすに受容しようなどという達観した地平に起つことなどはできるはずもないが、しかし宮迫さんの死生観の背景にある、生というものへの慈しみ、ものごとへの探求心、精神世界の豊かさ、他者への想像力といったものを今一度接近することで、その思いを継いでいくことができれば良いと考えてはいるのだが、
心からのご冥福をお祈りします。宮迫千鶴さん、ありがとう。
伊豆高原アートフェスティバル 公式サイト

iPhone 3Gとは何者?

「今、あなたは3番目のメジャーコンピュータプラットフォームの誕生を目撃しようとしている:Windows、Mac OS XそしてiPhone」
これはNew York Times紙記者、デビッド・ポーグ氏によるiPhoneの定義だ(WWDCで紹介された)。
〓SoftBankモバイルのiPhone発売に関しては、主要各メディアが相次いで詳細情報、あるいはiPhone国内市場への影響などの分析に大きな紙面を割いてきている。
かつて1端末の発売というものがこれほどに話題になったことがあるのだろうか。
対象にできるとすれば、やはり同じApple社のiPod新発売時の喧噪ぐらいかもしれない。
各メディアのWebサイトから収集すると、〓SoftBank社のプレスリリースでは判らなかったことがいくつか判明してくる。
販売は〓SoftBankショップ以外、Apple社でも家電量販店でも取り扱う。
8GB機種の端末代は69,120円、16GBが80,640円。
〓SoftBankではこれを割賦販売。月々の支払いを1,920円ずつ下げる特別割引を適用し、頭金ゼロの960円の分割払いとして、×24ヶ月=23,040円というわけだ。
これは他のキャリアに言わせれば、とても脅威なのだという。いわゆるスマートフォンのカテゴリーでは通常この倍額以上はするのだそうだ。
iPhoneの日本国内への上陸を幕末の黒船になぞらえたメディア記事も散見されるが、確かに日本においてはこれまでの携帯通信事業は、世界的に見てとても特殊な構造にあったようだ。

More »

悩ましい「パケット定額フル」(iPhone 3G契約条件)

〓SoftBank社より「iPhone 3G」販売にあたっての端末価格、および料金プランが発表された。
端末の価格はWWDCにおけるApple社による「iPhone 3G」発表時にすでに$199(8GB)と公表されているので、「新スーパーボーナス」とやらを適用させ実質2万3040円から(8GB)というのは妥当なところなのだろうが、月額5985円のデータ定額プラン「パケット定額フル」というのは、ボクにとってはいささか予想外のもの。
月額というのは、ホワイトプラン(基本使用料)980円、パケット定額フル 定額料5,985円、S!ベーシックパック315円、これらを合わせて7,280円という計算だ。
現在のケータイ契約キャリアはauなので〓SoftBankモバイルの契約システムは良く理解できないということもあるのだが、ホワイトプランというのは同じキャリア同士の送受信は1時〜21時までは無料、この時間帯外の通話、およびキャリアを越えての通話は21円@30秒とのこと。(これは国内キャリアでは相場?)
日本の移動通信のコストは欧米諸国のそれと較べても最も高価格なものであることはよく知られたところ。
ここにデータ通信プランの7,280円が加算されるというのは、ボクの現状のケータイのコストを大幅に上回ると言うことになる。
実は数年前までは展示会への出展などの環境ではau端末をiBookにUSB接続し、データ通信を頻繁にしていたことがある。
この場合キャリアとの契約は定額ではなかったので、確かにパケット通信料が異常に高く翌月届く請求書の額には驚かされたものだった。
そうした経験からも使い放題というのは「iPhone 3G」という機種の性格を考えれば必須のものとも思われるのだが‥‥、

More »

雨中の納品行

梅雨前線がもたらす雨は各地に大きな被害を与え続けているようだ。
この梅雨前線が日本列島を縦断しているど真ん中、今日は早朝から片道200Kmほどの横浜方面へ納品行。
工房を立つときは昨夜から止んでいた雨も再び降り始めていた。
しょぼしょぼした雨脚かと思えば、いきなりシャワーのような豪雨といったように定まらぬ勢い。
横浜での荷降ろし時間帯には障害になるほどの降雨は無いだろうとの昨夜来の判断も少し揺らぎ始めたものの、構わず東名を東へ。
以前より納品スケジュールを顧客と調整してきた結果、この日が良いだろうとのことで進めていた。
幸いにして駿河湾沖に眺望できる伊豆の山々は明るく照らし出されていて、胸を撫で下ろしつつもフルスロットルでトラックを走らせた。
途中、海老名SSで無線LANフリースポットを活用しMacをネット接続し、リアルタイムレーダーで確認すれば、伊豆半島にまで次の厚い雲が追いかけてきている。
求めたコーヒーも紙コップのラインが半分ほど口にしただけで、あわただしく再び運転席へ。
結果、横浜の顧客宅でのワードローブを含むいくつかの家具を降ろし、設置が終わった頃合いに雨が落ちてきた。
100Kgほどにもなる大型のワードローブは、ただそれだけで搬入は困難を強いられる。ましてや雨ともなると絶望的だろう。
顧客宅の床の間を飾る、古伊万里、掛け軸、木工藝の品々を愛で、オーナーとの暫しの歓談と昼食をご馳走になり、雨の中へと辞する。
普段の行いは決して良いものとは思えないのになと、妙な自覚をしているものの、家具屋の願いを聞き入れてくれたお天道様には感謝しよう。
帰路がどしゃ降りの大雨の中の走行であったとしても赦してやろう。
帰路、顧客宅の近隣に進出してきていたIKEAに立ち寄って見た。
視察というか、一度は訪ねておかねばならないところだろうからね。
聞きしに勝る大規模店舗であり、日曜という条件でもあったので、わずかに1時間ちょっとの視察であったがとても疲れた。
子連れの20〜30代のファミリーが多く、この渋滞をかきわけ歩くのが疲れてしまったということと、やはり見るべき対象の商品は残念なことにほとんど無かったということに尽きる。
しかしこれは木工家具としての品質という1つの座標軸から見た評価ではあっても、マーケティング、プレゼンテーション、販売システム、そして何よりも徹底した価格訴求へのあくなき追求という側面からは口あんぐりのもので、とても強い印象を与えてくれた。