工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

宮本貞治さんの仕事

五月雨です。夜半からは雷も混じるというのでネット接続機器は要注意。
来月には梅雨に入るでしょうから、この五月は貴重な時節です。精一杯前倒しに仕事をして備えねばなりませんね。
昨日拝見した宮本さんのお仕事に見たものは、修練の技の極地と「流紋」に特徴的に見られるテキスチャーの追求、そして洗練されたモダンなデザインで、伝統工芸の今日的問いかけというものであったように思います。
以前これほどの規模ではありませんが、あるギャラリーでの個展で拝見したものからもさらに洗練され、技法的にも高度化しているようでした。
こうした仕事を見せてくれる力というものがどこから出てくるのかと考えれば、様々なところから説明できるでしょうが、1つだけあえて挙げるとすれば、「意志の力」というものが並はずれて強いということは間違いなく言えるのでしょう。


彼のフィールドは伝統工芸ということになるのでしょうが、そのほとんどの作家が手箱などの小物を出品対象にしているなかにあって、あえて文机やら飾り棚で勝負するという心意気も個人的にはシンパシーを覚えるところでもあります。
(良く分かりませんが、審査の対象としてはこのような大ぶりの指物への評価は難しい要素が多いですので、どうしても不利になってしまうのではと思う)
もちろん、こうした指物の分野に留まらず、盛器などの繰り物にもそのモダンで端正なデザインと刃物のきれが冴え渡っていることにも触れておかねばフェアではないでしょう。
材料のすばらしさ、指物作家としての技能の卓越さ、漆仕上げでの妥協なき美の追究、そうしたものに支えられた作品の品格。
こうした工芸作家と同時代を生きることへ感謝したいとさえ思う。

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