木工と錺金具
宮本貞治さんの錺金物(カザリカナモノ=装飾金物のことを称する)は木部の品格と相まって、ほどよくフィッティングされていますが、そのほとんどは自作しているようです。
指物に留まらずキャビネット(箱もの)家具には機能金物、錺金物問わず必須のパーツです。もっといえば画竜点睛としての意味合いを持つと言って差し支えないでしょう。
昔はこれらを専門に制作する錺金物の職人がいたものですが、現在では絶滅危惧種の1つに挙げねばならなくなってしまっています。
このあたりのことについては「手──もうひとつの生活 No.7」{(財)クラフト センター ジャパン}という小冊子に「東京の錺職人」ということで須田賢司さんが詳細に記述しているので機会があったら見てください。
彼自身も錺職人に頼ることができなくなってきた背景と、木工芸家として高品質な錺金物を取り付けることにおいては妥協できないということで、結局自作することが多いのだそうです。
この小論では
・・・錺という仕事の現在を考えると、千何百年の間連綿と伝わってきた一つの文化の危機を感じさせられる。文化は物がつくるのではなく、人がつくるものとするならば、職人がいなくなるという事は一つの文化の終息をも意味しているのではないだろうか。・・・こんな時代に職人として生きている私は、ここ数十年の社会の変化が果たして。私たちにとって進歩として幸福なものだったのかと考えさせられてしまうのである。
と結んでいます。
さて、今日は次の関連書を紹介します。
和風金物の実際
室 房吉, 稲上 文子
古建築に用いられている金物を見直すとともに、現代建築にも欠かせない金物のすべてを要覧。とくに茶室金物の種類と使用例を詳解。
京都の老舗金物屋のおやじの知恵袋をひもとき、ノウハウのすべてを初めて公開。茶室・住宅・蔵・神社・仏閣にわけて和風金物を網羅。これからの建築を特徴づける新しい金物のあり方を問う。同時に、和風金物一筋に70余年歩んできた著者の人生観にもふれる。(本書、帯より)
戦前から錺金物職人とともに歩んできたおやじならではの経験と知識に裏付けられた実践的活用法が豊富な写真と図によって紹介されています。
ところどころに顔を出す昔話には往時の建築界、金物業界の実態を彷彿とさせますので、こちらも興味深く読めます。
残念ながら、amazonでは在庫切れのようですので、図書館などで探してみてください。
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