工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

丸ノコ、切断補助のためのガイドレール

マキタのカタログをツラツラ眺め、惹き付けられるページがありました。
丸ノコの「長尺定規」というもの。

マキタ カタログより

いつからこの種のものを販売しているのか不明ですが、Amazon販売サイトで確認すれば、その登録日は 2020/7/30 とのこと。比較的新しいようですね。

ところで、この種のツールに関心の向きは、海外の電動工具メーカーでは既にかなり以前よりこうしたガイドレールが提供、販売されていることはご存じでしょう。

Festool ガイドレール

特にドイツ、FESTOOL社は以前よりこうしたレールシステムの商品ラインナップは充実しており、かつて私もルーター用にと、このFESTOOL社のものを1本仕入れたものです。
(なお、ご存じの通り、FESTOOL社の商品は高額になる傾向がありますが、国内調達となると、いわば非関税障壁的に過度に高額設定となり、アホらしくて手が出せず、しかしまた、これを海外から仕入れるとなると、国内正規代理店の展開がある事から、個人輸入には大きな壁が立ちはだかるといった問題も…。
その前に、丸ノコ本体からしてかなりの高額ですからね。選択肢としては優先順位から外さざるを得ないのが実状)

ところで、上記のマキタと、このFestoolのガイドレール、まさに瓜二つ。この程度のものはメーカーの独自性を発揮するところなど無いとは言うモノの、凸起のレイアウトなど、それにしても似てる。どちらがコピーしたかは知りませんが・・・

丸ノコでの長尺カット

詳しく視る前に、長尺カットの基本的なところを押さえてみます。

丸ノコでの長尺の切断は、正しくリニアにカットされた長尺の木材片、合板などを定規として、これに丸ノコ ベースのフェンスを宛がい切断するのが一般的な手法。

もちろん、その手法で構わないのですが、建築に用いる杉檜といった軟材であれば問題はないものの、樺やケヤキといった硬質の材種の場合、木質によっては刃の進行制御が正しくいかず、外へ 外へと流されてしまいがちなことは誰しも経験されているのでは(まさか、非力な私だけ?)

そこで、こうしたエラーを完全に無くするのが、このガイドレールと言うわけです。
作業者の誰もが、等しく、正しい長尺の切削が容易になるというもの。

私たち家具製作の現場では、丸ノコを搭載した木工機械がいくつか設置されているわけですが、不定形な荒材の長尺の端切りなどにおいては、やはり電動工具の丸ノコを用いるのが一般的です。
大きな家具工場などではギャングソーなどというマシンがありますが、大型機械ですので設置場所も取りますし、工房スタイルではあまり一般的ではありません。

そんなところに、やっとマキタも重い腰を上げ、ガイドレールシステムの開発、製造に乗り出したのは幸いな話です。

ただ、マキタの場合、使用できる丸ノコは小型のバッテリータイプのものに限られているようでもあり、私が所有する丸ノコには取り付かないようですね。
今後、さらに適合機種を増やせるようにと願っておきたいものです。

BORA ガイドレ−ルベース

BORAガイドレール

そこで今日は、運用しているうちのガイドレールを紹介します。
どんな丸ノコにも使うことができる汎用性の高いものです。
また、マキタが最長1900mm までなのに対し、とりあえず、3mまでは可能(マキタも複数のレールをジョイントして延長させられるようですが)。
無論、コストパフォーマンスも高いものとなるでしょう。

米国の木工関連の周辺機器、アタッチメント等の開発製造会社は多々あるようですが、このBORAも、その1つで、こうしたレールシステムを開発製造しているメーカーです。

取り立てて、特殊なアタッチメントというほどのものでも無いですが、8年ほど前に、これを見つけたときは小躍りしたものです。
国内ではまったくといって類種のものは無く、また入手容易な FESTOOL社のものは、長尺になることで、輸入運送経費がハンパなく掛かるため、とても実用的で無い状況下、このBORAの丸ノコベースはたいへんありがたく、重宝させてもらっています。

ただあえて難を申せば、本体の素材が樹脂であるということですね。
望むべくは、アルミダイキャスト製であればと思うのですが。
しかし、10年という短くも無い年数、これまで破損することなく使えてこれたことを考えれば、その堅牢性は十分であるとも言えます。

以下、少し詳しく視ていきます。

構造

上部

丸ノコを固定するための押さえ機構のクランプが前部に2つ、後部に1つ。
左右の勝手、いずれにも対応するようになっている。
クランプには先端が鋭利な突起状になっているスクリューがあり、これを任意の高さに調整しておき、丸ノコベースを押さえ込むという構造。丸ノコに何らかの加工を施すこと無く固定できます。

底部

レールはカスタム仕様

基本的なBORAの仕様をベースに、一部カスタマイズしています。
レール
私の場合、15mmの厚さで、70mmの幅のレールを使っています。
市販の汎用的なアルミレールを使います。
15mm 厚みで、幅が40mmのものと、30mmのものを貼り合わせ、70mmとしたものを、3種。

L:3.000mm
M:1,700mm
S:1.300mm
(これは3mのものを2本入手し、1本を大小に切断し、計3本にしたものです)

丸ノコ固定方法

レール部と、丸ノコが完全に平行になるように慎重に位置合わせする必要があります。
そうで無いと、ノコ刃の切削面が丸ノコベースの切削ラインと進行方向にズレが生じ、歪みによるノコ刃への摩擦ストレスでスムースに進行しませんからね。

レールの固定方法

トラック クランプというもので、このアルミレールの裏側のTスロットを使い、任意の位置で加工材に固定させます。

以上です。

鉋イラスト

このBORAの丸ノコ レールシステムでは躯体の厚みが22mmあります。
かなり厚い。
一般的な丸ノコ、7型では刃物はおおよそ185mmあたりになりますが、これを使った場合、切削能力は40mmほどまでに落ちます。
非力ですよね。

そこで1つ上のランク、8型の丸ノコであれば、刃物は 216mmが使えますので56mmほどの厚さまでカットできます。

画像のモノがその8型の丸ノコ。
お気づきの方もおられるでしょうが、左右勝手が逆です。
左利きの人用、ということではなく、これは「端切り丸のこ」というもので、元々左右勝手が逆なのです。

一見して右利きの作業車には不向きと思われるやも知れませんが、広い板の端切りには、身体のSize,作業姿勢からして、この方が合理的なのですね。

この丸ノコはBORA購入時に中古で求めたものでしたが、逆勝手であることに購入はためらっていたものの、ポンッと膝を叩き、むしろ この方が使い勝手がいいじゃん、と気付いた次第。

補記

さて、この記事を書くに際し、BORAのサイトを訪ねたのですが、おやまっ、この丸ノコベースが更新されているではないですか。
元々シンプルな構造なので更新内容もしれたものですが、丸ノコ固定方法がツール不要のワンタッチになっていたりと、興味深い。

物欲そそるレベルではあったので、専用レール共々、木工関連ツール販売店から入手手続きをしました。
結果、レールは梱包サイズの規定からか 弾かれてしまったのですが、本体は間もなくやってくるでしょう。

入手後、また紹介しましょう。

ご挨拶

2021年も終わろうとしています。この投稿が本年最後のものとなりますね。

COVID-19パンデミックに翻弄され、間もなく2年になろうとしています。
この間、残念ながら日本では18,000名の死者を出すに至っています(世界では543万人と、想像も付かない数になります)。
まずこれらの方々へ、心から哀悼の意を表します。
また医療現場の最前線で戦う関係者、またそこに留まらず様々なエッセンシャルワーカーなどの方々には深い敬意を示すと共に、労いの言葉を掛けたいですね。

今年も1年、コロナ、コロナで過ぎ去っていく感じではありますが、長きにわたる 安倍-菅 政権も、このコロナにより吹き飛ばされた感もあり、もちろん忌むべき感染症であることへの異論は全く無いのですが、パンデミックを機として、時代潮流の転換点を引きずり出しつつあるように思えてきます。

オポチュニズムに過ぎはしないかとの誹りを受けるかも知れませんが、時代の流れを大きく捉え、現実社会の動向を見据えれば、ネガティヴなことばかりでは無いことが見えてくるものです。

そうは言っても、多事多難な時代であり、容易には光輝く明日は見えてきませんが、社会的公正さが奪われ続けたところから、こうした不正を糺すバックラッシュ的な動向が蠢き出しつつあることも確かです。

COVID-19パンデミックに翻弄され、社会動向、経済疲弊に翻弄され続けるだけではなく、私であれば木工という天職を基盤としてしっかりと地に足を着け、自立、自律した一人の人間として生きていきたいものですね。

2022年もBlogは続けます。
少しでも有為なトピックを挟み込めれば良いのですが、どうぞよろしくお願いします。
1年間、ありがとうございました。
皆さま、どうか佳い年をお迎えください。
                    2021年 晦日

Author 近影

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