工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

鬼の霍乱と2度のPCR検査

1月中旬から10日間ほど床に伏していました。

感冒、つまり ただの風邪でした。

発症間もなく、38度を超える発熱が伴い、これが頭頂部から側頭部に掛けての強い頭痛をもたらし、持病の〈喘息〉を悪化させ、見るも無惨な姿を呈していたのです。

世情、COVID-19パンデミックの再拡大、新たな変異株・オミクロン株による第6波がメディアを支配するほどに喧伝されているところから、私の体調悪化は「オミクロン株にしてやられたんだろう !!!!」などと指摘されるにおよぶのも必至なものだったというところです。

私はけっして頑健な身体を誇るものではなく、どちらかと言えば華奢な体つき。
ただ風邪をひくことはめったになく、ここ10年以上は風邪由来で発熱したことはなく、インフルエンザにいたっては最後に罹患したのは25年ほど昔、というほど感冒には縁遠い男でした。

3ヶ月に1度、四半世紀以前からの持病である〈喘息〉の定期検診を受診しており、冬場になればこの呼吸器内科の専門医の主治医からインフルエンザワクチンの接種を強く薦められるのですが、これにもぬらりくらりとすべて断り続けてきたほどです。
(反インフルエンザワクチン派、といった堅固な信条からという程のものじゃなく、私の居住環境、行動スタイルからワクチン接種不用と判断してきたまでなのですが…)

こうした自らの体質を良く知るだけに、この度の発熱、頭痛には多少の焦りもあり、COVID-19感染を疑い、PCR検査を受ける事に。

以下、体調の変化を含め、治療、検査内容等を、時系列で略記します。


01/14(金)

夕食後、Mac作業の過程、軽い頭痛を自覚

01/15(土)

通常通りに仕事に従事するも気だるく。午後、検温、38度
午後4時、薬局等で、抗原検査、PCR検査が提供されているということで出向くも、提供枠を越え、検査キットは無い。
加え、発症している患者は対象では無い、旨の説明(この種の規定を知らずにいた私がバカでした)。

その場で店舗所属の薬剤師からアドバイスを受け、地域の中規模の総合病院の救急に電話連絡入れ、PCR検査を要望。

翌16日(日)、たまたまこの病院が日曜当番であることから、検査の予約を取得。

01/16日(日)10時

院内には入らず、救急外来の駐車場に停めた車両の中からの検体採取。
10mlほどの唾液を求められる。
口が過乾燥のためか、十分な唾液を出すことができず。無理に生成させようとしたため上顎の皮膚が切れ、血液交じりの検体に。
採取者の若い男性曰く「なんとか 使えると思います」とのこと。
その後、一端帰宅し、検査結果の報告待ち。
しかし、結局 この血液が混入した検体は使えず、あらためて〈鼻咽頭ぬぐい液〉にて再検査を行いたいとのこと。

言われるままに、再度、この病院の駐車場で検体採取

この頃、何度も病院との往復やら、陽が差さない駐車場での短くも無い待機などで体調は最悪で、38.5度まで昂進し、〈喘息〉症状の悪化で動悸、息切れ。
帰宅後、1時間ほどで結果連絡。「陰性」との判定結果でした。

01/17日(月) 

体調悪化が著しいことから、〈掛かり付け医〉である、市立総合病院の〈呼吸器内科〉に電話を入れ、担当医・Dr.S氏に診断を仰ぐ。
午後、診察の予約を取ることができ、受診。

様々な検査を行う

  • 血液検査
  • 胸部レントゲン
  • 胸部CT

結果、肺炎の症状は診られず、風邪だろうとの所見。
ごく一般的な総合感冒薬、解熱剤を処方され、しばらく安静にと。

01/20日(木) 

4日後、発熱は収まる気配が無く、頭痛、喘息の悪化があり、再度の受診相談

午後、2回目のPCR検査

採取方式:ドライブスルー(救急外来の駐車場に停車した車両内からの検体採取)、〈鼻咽頭ぬぐい液〉
このまま車両内で検査結果待ち。
1時間後、《陰性》判定

晴れて陰性確認ということで、〈呼吸器内科〉外来にて、診断を仰ぐ
再度の検査

  • 血液
  • 胸部レントゲン

ここでも悪性の所見みられず、安静にしてろ! とのお告げ
抗生物質、錠剤を処方

01/24日(月)

発症から11日目、やっとこの頃から頭痛は軽減し、体温も37度を切る事も。

01/25日(火)

掛かり付け医での、三月に一度の定期検診日。
経過観察などの問診。経過良好のため、検査等は無し。

01/26日(水)

業務再開を含む、日常モードに戻る


2度のPCR検査を含め、やや大げさな経緯を辿ったものの、結論的には少し悪性の風邪だったようです。

それまでの私の風邪の症状は「陽性」の経過を辿ることがほとんどでした。
つまり、発生から1〜2日は高熱を出し、ギャーギャー騒ぎ、周囲を困惑させるものの、3日目にはもう寛解(病気の症状が軽減またはほぼ消失すること)してしまう、という経過がほとんど。

しかし今回ばかりは10日も寝込むというやや異常な経緯でもあり、困惑しきりといった感が強いです。

また、ただの風邪とは言っても、時節柄、どうしてもCOVID-19感染を疑わざるを得ないという状況だったのも確かで、一時的ではあったものの不安に苛まされたものです。

最初は家庭内隔離も試みました。
普段使われていないゲスト用の和室にベッドのマットを運び入れ、ここで床に伏していましたし、洗面、歯磨き、食事摂取なども弁別するなど、家人にも迷惑掛けたものです。

またちょうど地域の公民館の掃除のイベントが入っていて、家人も「濃厚接触者」の疑いから、二人共に欠席せざるを得ず、地域の方々にも「オミクロンに罹ったらしい」などと噂されてしまったのも困ったことでした。

「おちおち、風邪も引いていられない」、という忌むべき時節を過ごしていることをあらためて思い知らされたものです。

教訓とすべき事柄

発症から回復まで、私自身の風邪の症状としては軽いものでは無かったとはいえ、病変への診療側の対応の適切さとともに、複数回のPCR検査実施も積極的に行われたことで、最善の経緯を辿ったものと考えています。

これは私が持病(喘息患者)を持つ、いわゆる前期高齢者という属性と、主治医との長年にわたる普段からの関係性が幸いしたものと言えるでしょう。

余談ですが、この主治医・Dr.S氏とは、以前の居住地の総合病院の〈呼吸器内科〉以来の関係がありました。
ところが、8年前、私が現在地に転居したほぼ同時期に、この新たな居住地の総合病院の〈呼吸器内科〉に転院するという奇遇に巡り会ったのです。
私の転院にともない必要とされたカルテ等の書類一式とともに、Dr.S氏からの紹介状を、Dr.S氏に発するという実に妙な具合だったのでした。

現在、COVID-19パンデミック、オミクロン株の蔓延状況下、症状のある若者へはPCR検査は不用で、医師の判断で行えば良い、などとする政府側の通達と、メッセージが発せられている事には強い衝撃を受けた一人ですが、今回の私自身の経過からも、専門医のDr.でさえ、判定が困難だからこそPCR検査を実施したわけで、実におかしな新提言ではないかと思います。

オミクロン株 蔓延状況下の医療現場から

また先ほど、東京都では「50歳未満で無症状か軽症の自宅療養者は面倒診てられない。自分で健康観察を行うように」との新たな運用を始めたとの報道も。(NHK・01/31
これはもはや、シラッと医療放棄を言い放つもので、国民皆保険を否定するものでは無いでしょうか。

今朝(01/31)の朝日朝刊のTopにきていた記事にも驚かされました。

✽ 参照(「オミクロンは弱毒ではない」 最前線の医師が問う「政府の無策」朝日新聞 01/29)
以下、「ふじみの救急病院」(埼玉県三芳町)の鹿野晃院長へのインタビューから

――デルタ株より重症化する人が少ないと思っていたので、コロナ患者向けの病床には、まだ余裕があると思っていました。

この状況でベッドに余裕があるなんて口が裂けても言えない。
そんなことを言う現場の人間は誰もいない。

――すでに重症者が増えているのですか。

(酸素吸入が必要な)中等症Ⅱ以上の人が増えている。
オミクロン株は、ただの風邪と言う人がいるが、全然そんなことはない。

風邪となめてかかって感染を広げる人がいると、高齢者がたいへんなことになる

――自分で検査して軽症の場合は自主療養という対応が広がれば、医療逼迫の改善に効果は期待できますか。

検査ができなければ、薬をうまく使うこともできません。国民皆保険の放棄につながる。

現代社会とは思えない。言語道断ですね。何もしてこなかったツケが出ている。

なお、PCR検査の手法の他、抗原検査キットによる検査手法もありますが、この抗原検査キットによる検査はわずかに15分ほどで結果確認ができるメリットがあるようですが、抗原検査により「陰性」の結果が示されたとしても、実は陽性だったというケースは多いのだそうで、ほとんど気休めにしかならないと考えるべきでしょう。

むしろ、実は陽性患者であるにも関わらず、「陰性」結果をもって、安心して市中を徘徊することで、感染拡大を広めるスプレッダーになってしまうというトンデモ無いリスクを背負うと考えた方が良いようです。
知らず知らずのうちに、「陰性」を語る悪質な陽性患者となってしまうのです。

ここはぜひ、抗原検査キットに依拠せず、PCR検査を行うことが基本で無ければなりません。

オミクロン株の特異性を知り、正しく怖れる

年明け以降、日本国内ではパンデミック・第6波が押し寄せてきています。
そのほとんどはオミクロン株に置き換わっているとされ、それまでのデルタ株との特徴の違いから、医療体制、人々の防疫対策にまで様々な注意喚起がなされています。

  • 感染力はそれまでのデルタ株の1.5倍〜
  • 年齢的な属性を越え、全てのヒトが感染リスクに晒されている
  • 感染はデルタ株のように肺までに至ることは稀で、上気道に留まり、したがって重症化に至るケースは少ない
  • 2度のワクチン接種にかかわらず、感染するケールが多く観られる(ブレークスルー感染)
  • 3度目のワクチン接種は弱まった中和抗体が新たに生成されることから、発症予防効果が認められる

等々と言ったことが言われていますが、上述のように臨床的にはこれを覆すような事例も増えてきているというのが実態のようです。
しかも、重症化するケースは少ないとはいえ、感染者数、母数が増加すれば、当然にもそれだけ重症者も増え、やがては医療資源の逼迫に至るというのは、小学生にもわかる道理でしょう。

このCOVID-19が国内で発症確認されてほぼ2年が経過しますが、いまあらためて、PCR検査体制に不備があることから「PCR検査無しで診断可能」」など嘯く政府当局者と専門家といわれる科学者の欺瞞とダマシのテクニックに付き合わされ、第5波まで幾度も繰り返されてきた、脆弱極まりない保健所の体制1つとってみても、その後、抜本的な強化が為されていると言った話しはついぞ聞かされること無く、同じ失敗がウソと、騙しにくるまれ、改善されること無く、幾度も、幾度も、幾度も繰り返される日本社会。

不謹慎な1つの仮説

不謹慎に過ぎるとの誹りを免れませんが、巷でささやかれている1つの仮説があります。


これは日本に限った事では無いかも知れませんが、COVID-19パンデミックは「生産性が低く、国力を削ぐだけの高齢者などの社会的弱者」の人減らしに好都合 !!!! といった、とても口にすることが憚れる「ホンネ」が、実は為政者どもの心中には隠然とあり、自分の手を汚すこと無く、こいつらが消え去ることを願っているのではとの穿った見方さえ、当たっていないとは言えない、ある種の真理がそこに見え隠れしていると考える私はおかしいでしょうか。

民主主義の本質を理解しようともしない、一国の汚れちまった欲望に満ちた保守政治家の思考スタイルの1つの典型例なのかもしれませんよ。

普段は見えない事柄も、こうしたパンデミック状況下、隠然と語られていたことが、危機的状況を奇貨として、(半ば公然と)語られるようになり、やがてはその悪魔的な企みも必ずしも反人権的なものとも考えにくい方向へと導かれ、見えにくくされ、陰に陽に、しかし敢然と実行されていくのです。

さて今回は極私的な(軽い)病変でしかなかったものが、COVID-19パンデミック渦中に翻弄されてしまった顛末の一端を明かしてきたところですが、(残念ながら)ただの風邪であったところから快復し、いつもの口うるさい高齢者の戯れ言に堕ちる記述になってしまったかもしれません。

なお、1つ言い添えれば、2度のPCR検査で「陰性」が示されたものの、例え「陽性」であっても、それはそれで免疫が獲得されるという「ポジティヴ」な要素を伴うとことろから、積極的に受け止めようという思いがあったのは確かです。
もちろん、そのことで自身の体調悪化であったり、軽くは無いだろう後遺症に苦しむ問題、あるいは周囲に様々な迷惑を掛けるネガティヴな結果をもたらすことは間違い無く、このトレードオフを安易に捉えるべきでは無い事は明かなのですが…、このあたりは安易ではありませんね。

もっといえば、人為的にこの疫学的な問題に対峙することは倫理的に反するだろうということです。
所与の条件下、人々は自らの健康と命と、社会的防衛の観点から、積極的に防疫のための措置に参加するということです。
自らが所属する社会の一成員として、自らを守ることが所属する社会を防衛するという観点から感染リスクから回避する行動を執るということです。

例え私のような高齢者であろうとも、生存する権利は等し並みに与えられており、この人命というもっとも崇高な価値基準はその属性にかかわらず等しく与えられると考えるべきで、安易にCOVID-19などに罹患すべきでは無いのです。

「消えてくれ!」との為政者のホンネに聴く耳を持たず、淡々と社会の一成員として関わり、与えられた自らの生を存分に謳歌するというのがヒトの命の基本的な在り様なのですから。

「消えてくれてもよい!」との為政者の心の囁きはただの仮説である事を願うばかりですが、いずれにしろ所属する国家の疫学的な知見から発する、社会的、政治的、経済的なリスク対応というものは、そこに所属する市民がどのような社会を目指し、展望するのかという一人一人の意思の反映でしかないことは確かなことなのでしょう。


共に 生き延びましょう!

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