工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

正月の酒は蕎麦屋から

2012年、新年は皆さんはどのようにお過ごしだったでしょう。

私の場合、元旦は自宅でゆるりと‥‥、
コンビニまで腹ごなしを兼ね、徒歩で往復。
30年間、欠かさず行ってきた慣例の1つが新聞各紙の購入。

ざっくりとチェック。
(別刷りも多いので、ザックリとは言っても半日ほど掛かる)
いくつか取り上げておきたい記事もあったが、ここでは止めよう。

2日は年始回りに数件を訪ね、最後の訪問先の友人宅では久々にゆったりと語らう。
ここ数年、体調が芳しく無かった男だが、久々に息子も帰省していたためか顔色も良く、ほがらかに、饒舌に語ってくれた。

3日は、ぼちぼち始動の真似事でもしようと思ったが、
挫折し、結局、酒を呑みに、近くの蕎麦屋に出掛けてしまった。

三が日の真ん中なので客もさほどではないだろうと、予約もせずにフラッと自転車で訪ねたが、駐車場は満車。東京、名古屋などの遠方からの外国車ばかり。

南側の引き戸を開けると、掃き清められた三和土が清々と美しい。
いつも感じるこの緊張感も、李朝棚に飾られた民芸品の正月飾りで自然と表情も和む。

混んでいたために、ずいぶんと待合の席を温めることに‥‥

席に着いて注文したのは、酒肴の天だねと水酒と呼ぶ冷酒。
途中、ざるそばを追加。

溜塗りの升になみなみと注がれた冷酒は、蕎麦味噌と粗塩が添えられた角盆で運ばれてくる。
天だねはインゲンが添えられた、芝海老のかき揚げ。

この揚げたて熱々の天だねを崩しながら、じっくりと升酒を味わう。
淡麗で辛口だが、すっきりと喉元を通りすぎていき、旨みがさわやかに残る。
溜塗りの升は唇に優しい。
この升は真っ白い角皿に載り、コントラストが美しい。

ボクはさほどの左党でもないので、お代わりはせずに、
間もなく運ばれてきたざる蕎麦に箸を付ける。
抑えられた部屋の明るさでも、薄緑色に光り輝く蕎麦は、ただそれだけで美しい。
ワサビを蕎麦に絡ませ、ささっとすする。
しっかりとした辛めの汁と、見事なまでの蕎麦は極上の味わいだ。

続いてそば湯。
しっかりとした汁なので、蕎麦猪口いっぱいにそば湯を注ぎ、出汁の旨みと、蕎麦の香りを味わう。

精算に調理場の暖簾越しに亭主に挨拶をし、席を立つ。
緊張感あふれる調理場の空気も、ボクの声かけで緩み、仕事の手を休め、笑顔を返してくれる。
お互いに、また今年もがんばろうといった風。

藪蕎麦 宮本は、今年もこうして、完璧な蕎麦を打っていた。

画像、撮影は×なので、雑誌から拝借 感謝 !(dance 2011.1)

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