工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

iPad 国内上陸まぢか

iPadが今週末4月3日発売へ向け、予約注文分の発送を始めたとの報が入っている。
残念ながら日本国内では4月下旬、と発表されているだけ。
ボクですか?、ちょっと懐(ふところ)不如意でもありますので、しばらく様子見と言うことで‥‥。
まずはTV CMでも

しかしこのiPadを初めとする電子書籍リーダー機能を持つ新たなタブレットデバイスの登場には、国内では作家を含め出版関係者は戦々恐々としているようで、遅ればせながら、という感が否めないまでも、1月のiPad発表後、次々と対策を講じようとしてきている。
「電子書籍化へ出版社が大同団結 国内市場の主導権狙い」asahi.com
「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」の開催総務省 03/10
電子出版で有識者会議SankeiBiz
出版界に“黒船襲来”ITmedia
「出版社を通さない“作家直販” 契約は、編集はどうなる」ITmedia
このような国内事情と較べ、アメリカの出版業界はこれとはかなり異なる位相を示している。
「米アップル、iPadの発売に向けてコンテンツの契約を急ぐ」WSJ
「雑誌出版社、アップル新製品「アイパッド」に期待」WSJ
「iPad用電子書籍サービス「iBookstore」に無料書籍3万点以上追加か」マイコミジャーナル
「iPadなどのタブレット・デバイスは5年後に年5700万台市場に—米調査会社」BPnet ITpro


apple

この新しい電子デバイス誕生に関わる関係業界の日米のこれほどまでの温度差はどこからくるのだろうか。
やはりコンテンツ産業そのものを支えるバックボーン、あるいはカルチャーといったような大元におけるとらえ方の差異として見るしかないのかもしれない。
つまりIT社会の中軸に位置するコンピューターのコア部分を支配し(Intel)、同時にこれを駆動させるソフトウェアの開発の最先端を行き(かつてのMicrosoft)、またGoogleに代表されるインターネットサーバー企業のようにネットに君臨する企業を擁する国のカルチャーというものは、常に二番手、三番手に甘んじてきた日本とは進取の精神からして異質であることは否定できないというところか。
あるいはビジネスの最先端に於けるどん欲さの違いという要素も無視できないだろうね。
ま、畏れ入谷の鬼子母神、などと皮相な見方をしていても仕方がないので、せめて過度な混乱が生じないように業界の意思一致を図っていただき、日本国内では当面は導入されそうにはない「iBookStore」および「iBooks」(iPadの電子書籍購入窓口と、それにアクセスするためのアプリ)にも対応していただくよう懸命な努力を願いたい。
このままでは iTunesStore にアクセスできない iPod のようなものになってしまうからね。
ところで日本国内でもこれまでいくつかの電子書籍の出版経験もあるようで、残念ながらほとんどビジネスとして成立しなかったということであるらしいが、それらは残念ながら閲覧のためのハード、ソフトが充実していなかったことにもよるのだろう。
したがってそのことと、これから上陸しようとしているiPadを並列に論じるのは間違いだろう。
iPadの中身については最後に少しだけ触れてみたいと思うが、iPadはとても魅力的なデバイスだ。
例えばiPhoneの国内上陸の際には、国内のキャリア、あるいはケータイ製造メーカはその影響を過小に見積もっていたようだが、現在のiPhoneの普及度、インパクトはすさまじいものがあることを見ても、iPadの数年後の普及は予測を超えるものがあるのではと思うね。
先に挙げた「5年後に年5700万台市場」という強気の見込みも故無しとはしないだろう。
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この市場では既にAmazon・Kindleという人気機種もあるし、あるいはMicrosoft も「Slate PC」というタブレットデバイスの発売を予定している。
さらには国内のITメーカーの雄、SonyはSony Ericssonとともに、今年度中にも「PlayStation」を搭載したタブレット型デバイスを発表するとの噂がある。
これは「iTunes」に代わるエンターティメントメディアのダウンロードサービスサイトとなる「Qriocity」を含むものというので、本腰を入れてApple社を追随しようという姿勢の表れと見て良いだろう。
これはおもしろい戦いとなると思う。恐らくはAppe社のデジタルエンターティメントのパッケージ戦略に対抗できるのはSonyくらいかも知れないからね。
でも勇者になるのは簡単ではないだろうね。
かつてSonyはiPodに対抗し、MP3再生機の開発・販売+ダウンロードサービスシステムの提供を総力上げて注力したものの、ことごとく敗退。
無論、同じ轍を踏むようなことはしないだろうし、「PlayStation」という強力な武器も持っているので良い戦いをしてくれることを期待したい。
「勇者になるのは簡単ではない」理由としては、デバイス開発を支える企業カルチャーというものがApple社のそれは他のIT企業とは大きく異なるということをを挙げておけばよいだろう。
ご存じのようにApple社は以前は“Apple Computer, Inc.”を名乗っていたが、2007年1月9日 現社名の“Apple Inc.”に改称(iPhoneの発表会場の場で)していることに表されているように、パーソナルコンピューターを中軸として開発、製造、販売しているとはいうものの、その注力の基軸はソフトウェアである。
普段それまでWinのマシンを使っていたビジネスマンが、あるときMacの快適さ、クールさに魅入られ、Winマシン、およびOSがあまりにも見劣りすることに愕然とするということはある意味当然のこと。
OS、およびOfficeスイーツで世界を支配してきたMicrosoft社だが、オープンソフト、クラウド時代への移行という時代潮流の中にあって、かつて地上を支配していた恐竜が生き永らえなかったように、巨大企業であるがゆえの足腰の重さがネックとなり、今後大きく羽ばたくにことは叶わず、明るい未来を提示していくだけの理念があるとも感じられない。
つまり優れたソフトウェア開発者が所属して自身の能力を試そうと狙い定めるのは、デジタル社会の未来を形成していく企業であるのは当然であるわけで、彼らの選択肢にMicrosoft社は無いだろう。
やはり彼らが働こうとする企業はネットの君臨者Google社であり、常に斬新なIT世界の未来を指し示してくれるApple社であるのだろう。
冒頭の30秒TV CMを見ただけでも、Apple社が優れたソフトウェア開発者の集合体であり、IT社会の未来を先取りする理念を具現化するパワーを持つ企業であるかの一端が分かろうというもの。
iPadなどネットブックのようなものだろう、という穿った見方もされているようだが、それは本質を全く見ていない議論だろう。
ネットブックはノートブック型コンピューターを小型化し、ネット常時接続を前提としたハード先行のものでしかないが、iPadとは今後ユーザーから求められるコンテンツを追求し、ネットアクセスのあり方をどう変えていくのか、そのために必要とすれば新たな市場を開拓していく(iPadの場合は印刷メディアとの提携なども含む、電子書籍市場)というイノベーション型の商品開発というところに特異性を認めなければいけない。
つまりソフトウェアが先行した開発思考だ。
無論そのために必要とされればハードの練り上げも徹底的に行ってくる(iPadの場合、自社開発されたAppleブランドが印刻されたCPU、1GHz「A4」チップの開発・搭載)。
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ちょっと脇道に逸れちまったので話を戻そう。
アメリカの出版業界、新聞社のいくつかが、積極的にiPad開発のためにApple社と共同で取り組んだ( 「ウォール・ストリート・ジャーナルとニューヨーク・タイムズはアイパッドのテスト版を使用」 )というのも、これらの業界の未来形成に、今や電子化に対応することなくしてはあり得ない、いや、むしろこれを新たなビジネスチャンスとして捉えようという企業戦略の転換への踏み出しのスピード、意欲の在りようが、国内メディアの取り組みの差異として表れていると言えるのかも知れない。(メディア王・ルパート・マードックの『新技術はジャーナリズムの脅威ではない』は示唆に富んでいる)
国内に目を向けると、おもしろいことにApple JapanサイトのiPadページには何度も「毎日.jp」の紙面が使われているのが、なにやら示唆的ではあるよね。(こちら
4月下旬という日本国内発売に向けてApple社も出版業界、新聞社との猛烈な交渉を行っているのだろうと思われるが、残念ながらこのタブレットデバイスの基本アプリである「iBooks」が搭載されない状態での見切り発車のままに発売日を迎えることになるかもしれない。
  iBooks
apple

最後にiPadについて少しだけ詳しく見て終わろう。
というのは、iPadの発表時、意外にも直後に日本のAppleサイトでも案内があったし、発売日もさほどの違いも無いとのことで驚かされたものだった。
この記事を書くに当たって、あらためてサイトをチェックすると、かなり詳細な解説が出ているのは当然としても、発表時とは異なり、いくつかの新たな機能を搭載してきていることも分かったので簡単に紹介しておきたい。
■ Safari
・Webページのサムネール表示ができるらしいこと(6枚〜)
iPadの液晶モニタのサイズならではの機能だね(Safari:iPad
・HTML5による最新のビデオ&オーディオ再生に対応
iPadがFlash非対応ということで批判も強いようだが、HTML5で対応。
ただまだまだサイト構築側でのHTML5対応は未知数
■ メール
・メッセージが2行のプレビューができる
・HTML形式メール対応
・マルチタスクに対応
iPhoneもそうだが、これまでiPadもマルチタスクができないと批判されていたが、どうも対応してくれるようだ。これはすばらしい
■ VoiceOver搭載
「画面に触れると、指の下にあるアイテムの説明をVoiceOverが音声で教えてくれます。続いて、ダブルタップ、ドラッグ、フリックといったジェスチャーでiPadを操作します」とあるので、すばらしいと思う
■ iWorks
Keynote、Pages、Numbersは、iPad用に新たにデザイン開発され、活用領域が一段と増加しそう。
■ App Store
150,000ものアプリに対応ということだが、そのほとんどはiPhone向けのものとしても、続々とiPad専用のものが開発されてくものと思われる。
■ 価格
499ドルから
発表前には1,000ドル前後と見られていただけに499ドルというのは驚異的な価格ということであるらしい。
このカテゴリーに新規チャレンジしようというIT企業は、この価格設定の前に戦う前から萎えてしまうのではないだろうか。
さて総括的に見れば、いずれのアプリもMac OS 標準搭載そのままではなく、 iPad専用にかなり使いやすくリデザインされ、また iPad ならではの新機能も開発搭載されている。
想定以上に新奇性のあるデバイスであると言えるのではないのかな。
なお、発売に合わせて「iPad Guided Tours」(ビデオ:英語)を公開しているので、参照することでその機能全般を知ることができる。(こちらから)
1月の発表時から、かなりブラッシュアップされてリリースされようとしていることがよく分かるね。
4月末の国内リリース時にあらためて検証してみようと思っている。
今から499ドル(≒ 50,000円)、貯金しましょうね。

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