工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

〈 iWood 5 〉 for iPhone 5


オランダからやっと入荷、到着。発送確認のメールが13日未明。Fedexのトラッキングで追うと、12日午後の受付になっている(オランダ現地時間)。4日掛けての運送。こんなものか。

ただ、発注掛けたのが、9月22日なので、ほぼ8週掛かったことになる。
ネットでチラと確認すれば、昨日の投稿で秋葉原の店に並んだよ、というのが一件のみ。
国内では最速だったかもしれない。

さて、既にメーカーサイトで詳細画像も出ていたことだし、また個人的にも三代目の iWood であれば、さほどの歓びというのでもなく、むしろ、これをどのようにストラップ対応させるかの悩みが具体化してしまったということでは、悲喜こもごも、という感じだ(ウソです、本当は嬉しいのです)。

〈仕様〉

  • デザイン:iPhone駆体をそのまま写し取り、切削、面取り、造形されている。
  • サイズ:129.8 × 64.5 × 9.3 mm
  • 駆体壁の最厚:3mm 駆体壁の最薄:1.7mm(この薄さにはあらためて驚かされる)
  • 材種:今回はチェリー(他、Maple、Walnut、Padouk、Mahogany 等5種)
  • 裏蓋の刻印:レーザー刻印で任意のロゴ等が刻まれる
  • 電源、音量ボタン等:駆体の木部をそのまま切り抜き、可動可能にしての再接合

これらの仕様は以前のものとほぼ同等とみれば良いと思うが、駆体デザインということでは、iWood 4 と同じ外観と仕様を満たしている。

iPhone 5だが、最初手にしたときの感覚としては、その薄さに驚かされる。
この薄さを損なわないため、木部の設計、製造もさぞかし苦労されたものと思う。主要部の厚み、わずかに1.7mmだから・・・

〈挿入時のリスク〉

iPhone 5 を挿入する時は、メリッという不気味な音がして慌てた。
つまりこの時季の大気の乾燥状態をモロに受け、収縮していたためだ。
無理に挿入することは一旦止め、蒸気にあて膨張させてから再度トライ。

つまりそれほどまでにジャストフィットの寸法精度で作られている。
駆体に吸い付くが如くに静かに、静かに入って行くのだ。
(ボクは少々木を取り扱っている身なので、然るべく配慮ができるのだが、無理やりに押し込み、破損させたりといった事故もあるのではないだろうか)

過去2種の紹介の中では「これこそ工芸品」と謳ったものだが、まさしく期待に違わず、今回もすばらしい“工芸品”としての品質を守ってくれている。

2分割、接続部位、音量操作ボタン


背部、底部(スピーカー孔、Lightningコネクタ、イヤフォンコネクタ、新たに設けたストラップ孔)


上部(木口にあたる)電源ボタン部


充電の状態、Lightningコネクタ対応(Apple inc純正)、充電池(iBuffalo・BSMPA04:詳細後述)


その辺り、分かりやすいところで紹介するとすれば、カメラレンズ部位の切削手法だろうか。
画像のように、4段階での段彫りが施されている。

言うまでも無く、これは単なるデザインではなく、カメラの画角、およびストロボ発光の照射角を阻害せぬようにとの配慮が行き届いた加工なのだ。
もちろん、これはデザイン的なアクセントになってもいる。

他、以前にも紹介したように、電源ボタン個所は、駆体木部のその部分をレーザーカットさせ、段欠きしたところに、内部の裏打ちに再接合させ、上下動を可能としている。
しかも一体成形であるるため、この部分は木口だ。
おそらくは最も困難な加工部分であり、製造歩留まりの悪さもあったのではと推量する。

同様に音量の+、−、2つのボタンも一体成形から外し取り、再接合させている。

このiPhone 5 からイヤフォンポートはドックと同じ並びの底側に移ったのだが、この部分はスピーカーと、マイクロフォンのため小さな孔が開口しており、それと瓜二つに、孔が細かく並んでいるのには驚かされる。
以前はただの開口部であったが、わずかに0.5φほどの孔が2列に並んでいる。
これは単にデザイン的、あるいは細密さを主張するためのものというより、ただの開口部で処理するよりも堅牢性が確保できると考えたからだろう。
(事実、ボクは過去何度も地上に落下させ、この開口部分が割裂していまったことがたびたびあった)

〈ストラップ対応問題〉

iPhone にストラップを付けずに使用している人は多いと思う。むしろ使用しているのは少ないかも知れない。
でもボクはこれが無いとダメ。
粗忽者であるためなのだが、落下破損させるリスクを避けるには、やはりストラップは大きな効果があると考えるからだ。
紐の輪を手に通し、その状態でiPhoneを操作する。例え手から本体が滑り落ちたとしても、ストラップで落下は避けられる。

あるいはバックなどから取り出す際にも、ぶら下がっているストラップを持つことで簡単に引き出すことができる。
そうした理由からだ。

さてところで、先代までの31ピンコネクタ時代は、このコネクタ部分の爪がロック機構を持っていたために、確実にホールドすることができ、ストラップホルダーとして大変有効だった。
しかしこれは、5になり Lightningというコネクタに改編。これは残念ながらロック機構が使えない(全く無いわけでは無いのだが、挿入し、定位置に固定されるという程度のもので、強い力を掛けると抜け出てしまう)

まぁ、そんなわけで、いろいろと迷った末、辿り着いたのが、コネクタ部分を固定している1mmのスクリューをストラップ対応のものに替えてしまおう、という方法だ。

この1mmボルトという極小のボルトの頭に、横から1φほどの穴が空いているストラップ対応のボルトが数社から販売されており、iPhone 5入手後はこれを使っていた。

ただ、そのままでは、この iWoodでは使えない。
やむなく、これが使えるようにiWood本体に開口部を設けた。
Lightningコネクタのホールの隣に、約4mmの孔を開け、ここにストラップ紐を貫通させた件の互換ボルトを納めることで解決を見た。

まずまずの結果であろうか。
開口部を増やした結果、堅牢性を阻害させたことにもなるのだろうが、これは仕方が無い。

ボクのの粗忽さは簡単には直らないだろうし、今後何度も落下させるだろう。
少しばかり、木工はできるので、修復すれば良い。

なお、こうしたケースだが、いかに気に入ったものであるとは言え、iPhoneを包んでしまう、ということ自体、如何なものだろうという思いは確かにある。
iPhoneそのものの裸の駆体こそ、真に美しく、他には何もいらないのだ。

しかしやはり、ショックアブゾーバーとしてのケースは有用であることは認めざるを得ず、それであれば、好みのもので包んでしまえ、ということである。
事実、過去何度か落下させ、このケースは何度も破損し、修復を重ねてきた。
これはしかし、落下破損による本体へのダメージを防げたということであり、その評価は高いものがある。(いずれの場合も本体へのダメージは避けられ、傷1つ付かなかったし、動作上の問題も起きなかった)

市場には様々なケースが流通しているが、ショックアブゾーバーという機能性からも、この木製というのは悪い選択では無いだろう。

〈材種〉

上述の通り、5種の樹種のバリエーション。.
これまでブラックウォールナットで通してきたが、チェリーに替えた。
いろいろと考えたのだが、やはり堅牢性とともに、色合いを変えてみたかったからだ。
ただ、冒頭記したように、材の安定度にやや欠ける嫌いがあるかも知れない。
収縮、膨張度が、チェリーは大きいと思う。

以前、名古屋の百貨店で個展をした折、このチェリーで制作したキャビネットが、館内のエアコンによる異常な収縮で、大変な目にあったことがある。

〈総論、他〉

この木製のケースについては、市場にいくつもの似たものがあるようだ。
しかしボクが知る限り、この miniot社のものが、オリジンと言って良いだろう。
オリジンということは、最も初期に開発、市場に出され、同時にもっとも優れた品質を有する、という意味においてである。

他のものは、ボタン類の開口部の処理、あるいはカメラ開口部の処理、あるいはまた自然木、一体成形等、全ての面において、これを凌駕する品質のものはないだろうと思われる。

なお、国内における販売店も数社あるようなのだが、そうしたところで買い求めても良いだろう。
ただ残念ながら、ウラ蓋への任意の彫刻はできないと思われる。

これを望むのであれば、 miniot社にダイレクトに発注するのが良いだろう。

納期だが、今回8週間が掛かったということだったが、iPhoneの場合、市場に出回るまではその仕様が公表されず、駆体の設計、製造は市場リリース後、ということでの時間経過であったはず。
今後、潤沢に製造されていくと思われるので、入荷もスムースなのでは無いだろうか。
ただ、小さな工房で制作しているようなので、“潤沢”というのは言い過ぎかも知れない。

やや冗長なエントリになってしまったが、実は過去、このiWoodの記事は、このBlog記事中、常に上位に入るアクセス数を数えており、家具、木工関係者外からの訪問が多く、今回もやや丁寧な解説を自覚しつつ記述しているということでお許しいただこう。

なお、最後の画像のMobileバッテリーの仕様概略は以下の通り。

《iBuffalo・BSMPA04》

  • 容量:3.7v/5,200mAh
  • 出力:2ポート、DC5V、1,600mA(2ポート合計)

つまり、iPhone 5、2.5回分の容量。
また片方で1Aの出力があるので、かなり充電は早い(一般には0.5A)

またLightningコネクタだが、市場にはまだ種類が少なく、Apple社純正ほどの細いボデーのものはまだ見あたらず、このiWoodには即対応はしない。
経験上、今後も余り期待できないと考えられる。これまでの31ピンコネクタの時も、いろいろと苦労した。
コネクタ部分を削ったり、iWoodを削ったりと。
    ▼メーカーサイトはこちら

※ 参照
miniot社
ASCII.jp

※ 過去記事
iWoodという“工芸品”
iWoodという“工芸品”(補記)
iWood4 という工芸品 Vol.2

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • こちらへは、初めてお邪魔します。
    『iWood』あるんですね~、こういう物が・・・。
    素人の勝手な思いですが・・・ご自身で作ってみたくなりませんか?
    私は・・・

    私は、現代のタッチパネル式の携帯末端にどうしても移行出来ません。

    • gas-tutiさん、ようこそ !

      記事中にも書きましたが、この〈iWood〉がオリジンで最も高品質だと考えています(私見ですが)が、他にも多くの木製ケースがあるようですよ。

      私には手が出ませんよ。
      高精度なNC(三次元数値制御ルーター)マシン、強力なレーザー切断機などが必要ですしね。
      まぁ、私には、木でもこうしたものができることを伝えることくらい。汗;

  • 記事を参考にさきほどiphone5ケースの注文完了!確認メールの裏面メッセージが文字化けしてたのが少し心配…。ですが楽しみに待つとします☆

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