工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

疼痛の冬

木工という作業環境は怪我のリスクが高い(のかな?)。
FWW誌でも度々こうした作業環境に関わる安全対策などの情報が掲載されている。
独立前に働いていたある木工所には右手の人差し指、中指、薬指の3本を見事に欠損した中年の職人がいたことを思い出す。
彼は残った2本の指で器用に板を持ち、手際よく昇降盤で枘を作るのだった。
おっと‥ここは感心している場合じゃない。
ボクは幸いにして指の欠損も、足の欠損も今のところはない。
‥‥というのは少し誇張がある。一度左手の指先をカッターでやってしまい、第1関節上の骨が露わになるほどに欠損したのだったが、その後幸いなことに肉が盛ってきた。
Dr.曰く「木工屋さんは懲りないからねぇ」には苦笑を返すしかなかった。
でも今日は大きな天板を移動中に、思いっきり足の指先に落としてしまい、火の出るような痛みに喘いだ。
一仕事済ませてから氷をあてがい冷やしたが、腫れは大きくなる一方。
強い打撲と、数カ所の擦過傷、みみず腫れもあるが、骨には異常は無さそうなので安堵した。
10日も経てば忘れてしまうほどのものだろう。
さらにもう1つ。このMacのキータッチも少しままならぬ指先の痛みがある。
こちらの方は15年ほど昔にしでかした古傷が痛むからだ。
鋸で切ってしまった指先のその後の治療が悪かったせいか、冬場になると傷が開いてきてひどく痛む。
冬の時季を通して痛むと言うよりも、仕事内容がハードになると傷が開くということのようだ。
ボクは生来あわてものでおっちょこちょい。
今はめったに怪我はしなくなった(こんなボクでも学習するのだね〜)が、最初の4〜5年は怪我が多かった。
当然のことだが、怪我をする時はちゃんと理由がある。
不合理で無理な作業をした時、刃物の切れが悪く、無理に切ろうとしたとき、機械の性能を良く知らずに、間違った使用方法を取ったとき、etcだが、要するに未熟な職人が怪我をするのであって、職人の世界で良く言われる「怪我は職人の勲章」などという言葉は少しの慰めにはなるかも知れないが、それ以上のものではない。
仕事の良くできる職人は怪我などしない。
今年も残すところあと10日余り。
怪我などで辛い年越しにならぬよう注意したいもの。
そうそう、工場には「バラマイ軟膏」と「マーキュロバン」は必須だからね。

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