工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

大黒柱からの華麗な変身

ヒノキ座卓
古材での仕事は、断続的にまだまだ継続されている。
この座卓はこの“事業”の道半ばでの段階で納品させていただいたもの。
然るべきところに置かれることで、古材から再生されたものとは思えぬ良い納まりと存在感を与えてくれ安堵。
新築された顧客の神殿の間に安置され、主にも喜んでいただく。
元は8寸近くのヒノキの大黒柱。
これを4枚に開き、天板その他、脚部に用いる。
天板に散らばっている節を見て「こんなにも節があったのかな」と意外感を吐露されるので、柱は芯持ちであるため、節がたくさん出てきてしまったこと。柱の状態での表面は枝打ちをしたたために節は表れていないものでも、これを割くことで、どうしても芯からの節が現れてしまうことなどを説明し、納得していただく。
制作者としても苦労させられたところだ。生節についてはそのまま残し、割れなどには着色した上でエポキシを充填。死節についてはほぼ同様なイメージ、サイズの節を他の材から取り出し、埋め込む。一般に日本では伝統的に扇であったり、へちまといった文様の象嵌をすることで、諧謔的な意匠を施すことも多いが、ここは置かれる場所柄、そうしたことは避ける。
何よりも先代から住まわれた住宅構造材を新築された部屋の調度品として生き返ることの価値を見出してくれている。
現在の日本の建築に使われる材木では、残念ながらこうした願いは叶えられるものではないだろう。
座卓のデザインだが、神殿の間で使われるということであるので、「多足几」のイメージを提案させていただき、設計・制作されたもの。
悩んだのが多足の本数だったが、正倉院の資料を参照しても奇数、偶数、様々であったので、エイとばかりに九本とした。
多足几のイメージとはいえ、妻手側をなだらかな円弧状とした。
合わせて吸い付き桟、畳ズリ、および多足の配列も、同じRを付けた。
無論イレギュラーであることを承知の上で、あえて柔らかさを出すためにそのようにしたのだが、どうだろう。
面はいずれも角面を回す(厚み1.5寸の天板に1.5分)ことで。端正な仕上げとした。
閑話休題。
外へ出て見よう。乾いた夜の大気の向こう側に十三夜の月が神々しく輝いて美しいぞ。
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  • 家に神殿の間があるお客さんとはどういう方なのか
    興味がありますが、あまり詮索しない方が良さそうですね。
    後に写っている屋久杉(?)の襖(?)もずいぶんと
    高そうな感じです。
    工房通信 悠悠の読者の方はシャイな方が多いのか
    私だけのコメントですみません。

  • acanthogobiusさん、ご配慮痛み入ります。
    この座卓、やはり板戸に負けていますか(苦笑)

  •  先日はお手数をお掛けしましたというべきか、ありがとうございました。
     古材は、再び建築材として使われると言うことが、最近、民家が見直されるようになって、また良く行われるようになってきているようですが、家具材として再生するというのも良いですよね。新しい材料から製作するよりも確実に手間はかかるのでしょうが。いつか手掛けてみたいことのひとつです。そのうち私のところにもそんな引き合いが来ると良いのですが。
     畳ズリのRがとても素敵だと思います。

  • 木工舎さん、こちらでははじめてでしたでしょうか。コメントありがとうございます。
    >畳ズリのR
    画像ではカメラと被写体の角度からあまり判然としませんね。
    800mmほどの幅ですが、およそ4,000Rほどだったでしょうか

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