工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

栗の巨樹を愛でる(拭漆栗・書斎机の制作)その7(終

ブラックウォールナットの書棚

クリック 拡大😓(iPhone X での撮影ですが、自然光も幸いし、色再現はほぼ完璧)

間口1,500、高さ2,150mmのものが2連。高さは天井近くまでになる大きさ。

用いた材料は市場に流れている、なんちゃってウォールナット(本Blog記事・参照 ①[1] 、②[2])ではなく、原木丸太から製材、乾燥管理してきたもので材色や物理的性質はブラックウォールナット本来のすばらしいもの。

意匠と棚の割り付けなどは、施主の希望をそのまま反映させたもので、意匠のディテールなどに制作者としての美意識を投下。

こうした書棚のような壁面収納家具の場合、意匠をどのように考えるかは意外と難しい。
何よりも優先させるべきは書棚という目的に沿った機能性であり、そこに独善性の強い意匠などはあまり歓迎されません。

目的に沿った機能性を叶えるための構造体としての堅牢性、そして使い勝手、そうしたものを備えることを前提としたディテールにおける細やかで丁寧な仕事の中に、制作者の美意識をさりげなく投下することができれば良い結果をもたらします。

以下、少し詳しくご紹介

構造体

  • 側板、天板を含め、全て板差し
  • 側板、天板の接合は留め、
  • 棚板の可動部は金具の棚柱を併用
  • 背板はブラックウォールナットの無垢材
  • 可動部棚板は厚突きのブラックウォールナットを錬ったランバーコア材

仕口と組み立て

天板と帆立(側板)の接合仕口は、デスクワゴン同様に留め接合とし、同様に見付側にはなだらかで大きな偏倚させた1/4丸面を、グルリと回します。
デスクの栗材とは材種を異にするものの意匠では統一的に考えたいからです。

書棚 側板 最上部の留め部分

留めの仕口は、2,150mmという手の届かない位置にあり、ここはLamelloのZeta P2を用い、確実で堅牢な手法での緊結方法を採用。(参照①参照②

こんな巨大な構造体の組み立て工程をクランプで締めると言うこと自体難しく、かなりリスキーな作業になるため完全確実な方法を選択するのが重要となってきますが、Zeta P2 はこの願いを叶えてくれる優れもの。

中央の仕切り板、上下の接合は大入れとDomino とZeta P2 の3つを併用(ちょっとやり過ぎの感あり)で接合、固着。

巨大で、接合部も多いため、ボンド塗布等の作業はスピードが要求され、なかなか大変。
特に留めの部位へのボンド塗布はスピーディに組まないと、ボンドが固化してしまうことで接合を阻害することとなります。

地板部の側板への接合は、通常通り2枚ホゾと大入れ。

固定の棚板の部位は、Dominoと大入れの併用

背部の地板、固定棚板を受ける位置に横桟を配しますが、ここは通常の枘。
ここには4分の無垢材の背板が入りますが、納まりは倹飩(けんどん)。

これらをボンド塗布から棚板などを含む全ての部材の枘、大入れに咬ませ、胴付きを合わせていくわけですが、あまりに大きなもので、ワークベンチのワークトップに上がり、ここから大きなショックレスハンマーで叩き込んでいきます。
このような板差しの場合、プレスで組むのが望ましいところですが、間口が1,500mmという大きさで、私のところの1,300mmという高さしか締め付けできないプレスでは残念ながら利用できません。

棚板と棚受

棚受けは金具の棚柱。わずかに1分の厚みの仕様ですが、面付けでふかさぬよう、側板を彫り込み、納めます(スガツネ:ステンレス鋼製棚柱 SPE型

今回、施主の要望でもあり、下から上へと狭くなる構造であるために、棚柱の納まりはなかなかやっかい。
棚柱にNo.刻印された数字を前後同一にしなければなりません。

因みに棚板の見付部位も側板、天板同様に大きく面取り。

この棚板に用いたのは前述の通り、以前作っておいたブラックウォールナットの厚突き(0.7mm)を練った25mm厚のランバーコア材。
これであれば耐久性も十分で、なおかつ塗装仕上げも、なんちゃってウォールナットとは異なる天然杢の美しさで整合性が取れます。

現場設置を無事終え

現場では1,500mm幅の書棚2連をJ.C.Bコネクターで接合。
耐震対策として、施主は見栄えが気になると顔が曇るのを余所に、蔵の数カ所に出ている黒い柱にL字金具を用い、固定します。

大きな地震が起これば本体が倒れる前に大量の本が落下してしまうのでしょうが、家具屋としては本体の倒壊を防ぐのは最低の務め。

今回、大きな物ばかりで納品も4人掛かりでしたが、牧野さん含め地域の仲間に手伝っていただき、また貴重な機会とばかりに、記録員としてお出まし頂いた、松本のAQデザイン開発研究所の阿部さんにも大変お世話になりました。
あらためて御礼申し上げます。

hr

《関連すると思われる記事》


❖ 脚注
  1. ブラックウォールナットの色褪せ、退色について(なんちゃって Walnut) []
  2. ブラックウォールナット材の色、人工乾燥について(再論) []
                   
    

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