工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ルーターマシーンについて(その3)

本稿初回時に掲載した写真の刃物について触れてなかった。
いずれもストレート刃だが、それぞれ径が異なるものだが、共通することは替え刃であるということ。
数十年前まではこうしたルータービットもSKH(高速度鋼)が主流だったが、今ではそのほとんどは超鋼合金(UHなどと表示されることもある)、カーバイドチップだ。もっと昔は炭素工具鋼が使われていただろう。
職人によっては「ハイス(高速度鋼の通称)の方が良い、自分で研磨できるし、良く切れる」などと言う。そのような性格の差異があることは確か。
ちょっと余談だが、かなり以前から機械刃物のほとんど全てを超鋼に替えてる。
手押し鉋盤、自動一面鉋盤などは、まだまだ一般には高速度鋼が多く使われていると思われるが、使い勝手としては圧倒的に超鋼の方が刃持ちが良い。刃こぼれしにくい。
価格は倍以上するし、研磨コストも同様に高い。しかしそれ以上の価値を認めることが出来る。

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ラーメン1食の関係性

今日、当地ははうだるような暑さだった。
街に所用で出掛けたついでに床屋に寄ってさっぱりしてきた。
「真夏バージョンでお願いしま〜す」とバーバーチェアに腰掛けた。
チョウ短くカット。
今日のところもそうだが、昨年から低料金の店舗に通うようになった。1,900円。
それまでは居住地域の個人の床屋だった。10年以上の付き合い。料金3,900円。
あることをきっかけとして替えちゃった。
ここで記述するようなたいした理由でもないのだが、サービスが悪くなってきていたということ。
そもそも予約制で事前に電話を入れて時間を決めるので、いつもその時間に行けばすぐ始めてくれた。しかしある時、その時間にいってもずいぶんと待たされ、それについては何らの説明もない。これが2度続いた。
この店舗オープン仕立ての頃はとてもサービスも良く、内容も充実していた。これが徐々に慣れてきたのか、1つ、また1つと簡略化されるようになってきていた。
ここが潮時かと10数年の付き合いをばっさりとやめた。

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椅子展 / 山の上ギャラリー【Gallery Talk】

今日は来週16日からスタートする横浜、鎌倉は「山の上ギャラリー」での「椅子展」に出品する作品の展示設営のために出向ドライブ。
このギャラリーでお世話になるのは初めてのこと。この椅子展は昨年から催されているもので今年は2回目になるが、今年から縁があって参加させていただくことになった。
このギャラリーは地元の料理屋「九つ井」(ここのついど)が経営されているものだが、施設は地元鎌倉の古民家を移築したものだそうで、豪壮な建築に趣がある。
ギャラリーとしての本格的な運営をスタートさせたのは比較的最近ということだ。
美味しい和食に舌鼓を打ちながら、ギャラリーで美術品、工芸品を鑑賞する。ちょっと贅沢な気分を味わうことのできるスポットのようで、地元の方々はもちろん、広く知られるようになってきているらしい。
ボクがここを知ったのは昨年のこの椅子展に知人の木工家が出品しているということを別の展示会でご一緒させていただいた鎌倉のある染織家に聞いたことからだった。
「へ〜ぇ、鎌倉にはおもしろそうなギャラリーがあるんだね・・」と興味を持っていたのだったが、翌年まさか自分が参加者の末席を汚そうとは思いもしなかった。

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椅子の試し方文化

撫子
椅子の善し悪し、品質の基準というものはいくつもあろうが、やはり他の家具と違って座り心地という要素が重要で人体が触れてみなければ解らない。
展示会などに出品する椅子はその座り心地の品質を理解してもらうために積極的に座ってもらうように誘導する。
さて、過日ある椅子の公募展に入選した椅子が展示終了で戻ってきた。全国巡回してほぼ18ヶ月になるだろうか。
多くの方々のお尻に座られてさぞ嬉しかっただろうと思う。椅子の方が照れるような美女もいただろうし、野獣に座られ喘いだかもしれない。
したがって多くの傷が付いて帰ってくることは覚悟していた。もしかしたらホゾが緩んでいるかもしれない(エアコンが効いた会場という過酷な環境で長く晒されたということからして)という不安もあった。
結果、ホゾのゆるみは全くなかったし、座板部分などにはむしろツヤが出て(多くのお尻で磨いてくれたため?)良い感じになっていた。
大きな破損が無く戻ってきたことはありがたい。展示会場の関係者の配慮には感謝したいと思う。
ただやはり小さなものだが多くのキズが付いていた。
キズは座板部分を除けば、背の帯(オビ)部分(背もたれの下部の貫のこと)がかなりのダメージを受けていた。

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ルーターマシーンについて(その2)


昨日に引き続いてルーターマシーンについて
2,汎用性が高い
・木工機械はそれ自体単機能のものもあれば複機能のものあるが、単機能のものでも使い方によっては様々な使用方法を得られるものだ。
ルーターの場合、昨日も冒頭に書いたように成形加工、せん孔、切り抜き、大入れ、座繰り、彫刻と様々な切削加工に用いることが出来る。
これはルーターマシーン、ハンドルーター双方に言える。
しかし、一般的にいずれの加工にあってもルーターマシーンのほうが切削性能は高いと言えるだろう(被加工物がルーターマシーン上で操作できないような大きさのもので無い限り)。
・例えば「成形加工」を考えてみた場合、ハンドルーターでのその作業は生産性は全く悪いだろう。また切削量が多いとどうしても危険性は高くなるものだ。ルーターマシーンではジグさえ適切に作成、使用すれば安全に進めることが出来る。
これは「切り抜き」作業においても同様だ。
・また基本的な作業スタイルのことからもこの汎用性が高いことが言える。
そもそも切削機械を動かすのか、あるいは逆に被加工物を動かすのか、の違いというものは大きいのではないだろうか。
切削肌の滑らかさ、安定的切削というものはやはり作業スタイルの安定性ということの要素に起因することが大きいだろう。

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ルーターマシーンについて(その1)

ルータービット
ルーターは家具製作、木工作業には欠かすことのできない切削用の機械だ。
その用途は成形加工、せん孔、切り抜き、大入れ、座繰り、彫刻などと様々なことに使われる汎用性の高い機械だ。
類種として大型のルーターマシーン(ピンルーター)、ハンドルーター、トリマーなどいくつかのタイプがあるが、今日はルーターマシーン(以下、ルーターと略す)の加工についていくつかのことに触れてみる。
(1日で記述できる範囲を超えているので、数回に分けて記述する)
以前ある木工家が管理されているWebサイトの掲示板でこのルーターについて話題になっていたことがあり、ここに割り込み数度書き込みをさせていただいたこともあった。
どのようなことが話題になっていたか簡単に紹介すれば…、
・ルーターは危険でハンドルーターしか使っていない。
・訓練校でも危ないからといって満足に操作方法を教えてもらえなかった。 etc
といったことのようであった。
これに対してハンドルーターと較べピンルーターのほうがいかに切削性能が高いか、むしろより安全である、訓練校で指導されないのは問題だ、といった主旨で書き込みをした。

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「Musical Baton」の憂鬱

今日はうっとおしい梅雨空を吹き飛ばす音楽ネタで…。とはいっても少し趣向が異なる。
Blogネット上でチェーンメール化している「Musical Baton」なるいささかいかがわしいものが「DAYS OF CHAIRS」TABULA RASAさん経由で渡されてしまったので、これについての回答と少し感想も…。
…… 嬉し恥ずかし、いや憂鬱なエントリーではある。
質問 1 Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
1.705曲 10.55GB(1部BEST盤などによる重複もある)
iTunesiTunes が標準搭載され、 iPod が身近になってからというもの、音楽の楽しみ方は激変。
室内ではMac、iTunesで駆動し、デジタルアンプを介してJBLを鳴らすというシステムが基本になっちゃった。(参照
車内ではiPodで駆動させカーステレオを楽しんでいる(参照
質問 2 Song playing right now(今聞いている曲)
キャラバン
キャラバン
ブリュノ・クーレ, 映画「キャラバン」のサウンドトラックだが、標高5.000mの高地から聞こえてくるマントラをバックにした民族音楽+西洋音楽のハーモニーは蒸し暑い夜には一服の清涼剤。(参照


質問 3 The last CD I bought(最後に買ったCD)
コシカ/ひとつしかない地球
コシカ/ひとつしかない地球
宮沢和史, Diana Arbenina, 亀田誠治, Catia Werneck, Tomek Makowiecki, Kiril Marichkov  
このアルバム以来買っていないな。iTunesのミュージックストアがスタートすると(本年度中にもスタートするといわれているが)、やはりCD購入も減るのだろうか(参照
質問 4 Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me(よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)
ザ・ケルン・コンサート
ザ・ケルン・コンサート
キース・ジャレットのソロピアノでのオリジナル演奏
緊張感のなかにあっても破綻することのない集中力が輝くばかりの美しさを醸す。
個人的にはまじめにジャズピアノ演奏と向き合い始めたきっかけの盤。

My Favorite Things
My Favorite Things
若い頃はコルトレーンのナンバーを良く聴いたが、最近まで継続して聴いているのがこれ。
タイトル曲はご存じのように「サウンド・オブ・ミュージック」(リチャード・ロジャース/オスカー・ハマースタイン)の挿入歌だが、今や多くのミュージシャンが取り上げるスタンダードナンバーになっている。
Abbey Road
Abbey Road
ザ・ビートルズとしての実質的なラストアルバム。
名曲揃いと思う。Something、Here Comes the Sun、Because、Come Tougether はザ・ビートルズの、いえ60年代ロックの最高峰 ?


サティ:ジムノペディ(ザ・ベスト・オブ・サティ)
サティ:ジムノペディ(ザ・ベスト・オブ・サティ)
高橋兄妹のサティーはどれも良いが、アキさんのほうが耽溺できそう。


バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年デジタル録音)
このBlogでたびたび取り上げてきた盤なので、簡単に。
デビュー時にも同じ作品を演奏し、名盤になっているが亡くなる前年にあらためて再録音されたものがこれ。
カナダ国営放送の遺された録画での演奏のスタイルと合わせ聴くとなおグールドの独自性は理解できる。
Bachは古い ! なんていわせない、名盤。
名盤ぞろいだと思うけど、何やらどれも古色蒼然の趣だ。しかも雑多。
ほとんどボクの音楽性など停滞したまま、ということか。
これらはiTuens での再生回数のデータとは全く相関していない。
因みに車載のiPodでの最近の再生回数の多さでは「一青想 」(一青窈)だったり、「ヴォヤージュ」(アン・サリー)だったりと何故か在日アジア系女性ミュージシャンが多くなってる(ちょっとイレギュラーな回答だが)。
質問 5 Five people to whom I’m passing the baton(バトンを渡す5人)
藍 blog(器の紹介をメインに生活の楽しみ方を良く知っている達人。最近は街並み保存へフィールドを拡げている、藍さん)
伝統工芸と ともに歩む(東京、品川の桐タンス屋の旦那。業界のIT化を通した活性化に尽力する、tansuyaさん)
ストックホルムの空を見上げて(EOS 20D + Carl Zeiss を駆使し、木工修行+2人の子育てに奔走する、Ikuruさん)
日日是好日(多くの本格的趣味と社会活動で奔走する多才なブロガー、turner_kentさん)
これらの方々にお渡しいたします(喜んで受けていただける人もいれば、恨まれそうな予感も )
ルールに準じて5名にお渡しするところ事情あり4名ですがご勘弁を。

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Google Maps のオドロキ

Google Maps
このところはまっているWebサイトサービスに「Google Maps」といいうものがある。
既に多くの方も体験したと思うが、最近になって日本国内も最高の画質でサービスされるようになったので紹介する。びっくりしたな、もう〜。
写真(スクリーンショット)は国会議事堂あたりの航空写真だ。縮尺はおよそ 1/3.000ほどか。(クリックで拡大写真)
人の姿の確認までは無理としても車などは判別できる精細度ではないか。
これが地球上全域において網羅されている。
但しこの写真が最大の拡大だが、この拡大は日本では東京23区、一部埼玉県、神奈川、鎌倉あたり、そして何故か四日市周辺のみのサービスだ。他地域は無理やり拡大できても精細度には欠ける。
しかもオドロキはカーソル、ポインターで途切れることなく東西南北どこへでもスクロール可能。あなたの家から南極へ目指して一気に空中散歩ができるのだ。
そのスクロール操作での解析、表示の早いこと早いこと。腰を抜かす程だ。

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ブラックウォールナットへの墨付け

フエキ シャープペン
次の制作に用いる材料(ブラックウォールナットの板)が工場のストック量では足りないということに気づく。
こんな梅雨時に桟積みをばらすのはやりたくはない。
周りの湿度が高いので板の含水率も期待するほど低くはないだろうし、こっちの体調も梅雨時では快適とは言えない。
しかし使用目的は椅子なので、あまり厚版は使わないし、幅広の材料も使わない。少々高い含水率でも良いだろう。
ブラックウォールナットという材種の価値は色。従って人工乾燥では色褪せするので、できるだけ天然乾燥だけに留めたい。
ということでばらしにいったのだが、途中雨には見舞われるし、ハチには追いかけられるし、指先に怪我はするし、で散々な1日だった。
まぁしかし、丸3年干した材料なので含水率も20%を切っていたし、製材の時の材質の良さに惚れ込んだことも思い出され満足だった。

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車載コンピューターとブラックボックス

過日、自家用車の購入後12ヶ月点検でディーラーに検査してもらったのだが、その寸前に1度だけアクセル踏み込みとエンジン回転コントロールが同期しない、レスポンスが悪い、といった症状が出たことを訴えたということがあった。
結論的には何らキャブレター周りの異変はないとのことだったので安心した。
この「異変はない」ということは何を根拠に判定しているかというと、車載コンピュータのログの分析からのことのようだ。
ボクはこの世界はちんぷんかんぷん。
燃焼室へのガソリン供給、噴霧量のコントロール、着火タイミングのコントロールが昔のように機械的にやっているのではなく、全てコンピユーター制御で行っていることぐらいしか知らない。
分厚いマニュアルも拾い読みしかしないが、運転していると意外なところでコンピューター制御されていることに気づく。
オートクルーズコントロールはもちろん、走行中の燃費、燃料切れまで後どの位走行できるか、など表示してくれるし、ワイパーなども停車してるとインターバルが長くなったり、バックギヤに入れると自動でリアウィンドーのワイパーが作動する、など至れり尽くせりだ。
最近では他車に接近することを判定し、自動的にブレーキが掛かるといったことも実用化、搭載されてきているようだし、いずれハンドルをコントロールする必要性もなくなるかもしれない。

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