工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

バーナード・リーチと民藝

リーチ展会場
ボクは松本民藝の木工所の門を叩くところから木工という道を歩み出したのだが、しかし必ずしも民藝という世界への憧憬があったわけでもなく、その歴史的背景であるとか、工芸のなかでの位置づけなどへの深い認識があったわけでもなかった。
さらに言えば、敗戦直後のいわゆる団塊の世代として生を受け、この世代に広く共有されている戦後民主主義の落とし子として近代主義をストレートに信奉し、いわば封建遺制を忌むものとした価値観に染まってきた者のハシクレとして近代合理主義の中にこそ未来があると信じてきたし、当然にも“民藝”の中から自分自身の未来など語れるはずもないとさえ思っていたものだった。
事実、ボクが松本民藝家具の木工所の門を叩いた80年代半ばという時期は、既に“民芸ブーム”なるものは潮が引くように昔語りのようになっていたし、期待していた職人どおしの“ギルド的紐帯”などはそこには見る影もなかった。
あるのは生産性の追求に汲々とする親方の厳しさであり、職人世界の殺伐とした関係だけだった。
その後バブル経済の狂奔はこうした地方にも大きな時代の波として襲いかかり、いくつかの木工所は木工なんかやっていられない、とばかりに閉鎖していったし、独立後一時世話になった民藝家具店の社長からは「作り手はただ黙って仕事していれば良いんだ !」「民藝とは無名の職人によるものだから、あれこれ言ってもらっては困る」などと、“民藝の精神”なるものを振りかざし作り手のこだわりや思いなどは一方的に封じ込まれてしまうと言う理解を超える関係性を求められ、ただ唖然とすることさえ屡々だった。

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無線LANがダウン

数日前から家庭内の無線LANが繋がらなくなっていた。
メインのMacとADSLモデムの接続は有線LANであるが、工房で使うノードブックは無線で飛ばしている。同様に家人が使っているWinのノートブックも無線なで、こちらの接続がおかしいという訴えがあったのだが、必ずしもヘビーな使用でもなかったので検証するところまでしなかった(Winは良く分からないと言うこともあるのだが)。
この度別途Macの2台のノートで接続を試みるもやはりダメだった。
明らかに無線のルーターの不具合と判断。
メーカー、NECサポートへと電話し、判断を仰ぐ。
この無線ルーター、購入したのはISDN時代の時であったが約7年前のこと。
記憶を辿れば、同じISDN/TA(ターミナルアダプター)が避雷しダウンしての更新だった。
その数年後ADSL導入後も、このTAを無線ルーターとしての機能をそのまま活かし快適に使用してきた。
さてメーカーのサポート担当、機器が7年前のものであっても何一つ嫌がることもなく、懇切にかつ適切な検証を試みてくれたのだった。(NEC Atermのサポート態勢には感謝 ! )
しかし結論はADSLの信号を認識してくれないという症状であり、これは機器のメーカーでの修理が必要との結論。
最後にこのやさしいサポート女史は修理のための申し込み窓口の連絡先を伝えてくれ、こちらも謝意とともに電話を切る。
とても明快な判断であり何ら口を挟むものではない。
次にしかしユーザー側とすれば残念だがこの明快な判断に従うわけにはいかないとの結論を導き出さねばならなかった。
何のことはない。修理費用の方が、新規購入よりもコストが掛かると言うことが分かってしまった。
ま、7年も使えば償却は終えたとの判断もできよう。
しかし例えば保証期間1年を経過した直後にトラブルがあったとした場合、同じように修理のコストの方が新規購入より高くなるということは大いにあり得ることだろう。
ITという特異な分野のこととはいえ、現代社会の最先端工業製品というものが持つ高機能とコストの関係というのは、実にすさまじい関係性にあるのだということをあらためて考えさせられたものだった。
つまり廃棄物にしなくとも良いように修理が出来る製品ではあるが、この修理が新規購入よりもコストがかかり、しかも例え修理されても新機種に較べ機能においてははるかに劣位に置かれると言う実態。
これは環境へのローインパクトを旨とする自身の信条に従うことの困難さというものに大いに頭を悩ませることになるのだが、諸兄らは果たしてどのように折り合いを付けているのであろうか。
閑話休題。
MacユーザーでLeopardを導入していないTigerの環境の方々、本日 Mac OS X 10.4.11のアップデータが公開された。(Safariもバージョン 3.0.4がリリース)
インストールしたばかりだが、Safariがめちゃくちゃ読み込みが早い。これがOSの洗練さにるものなのか、Safariの方のそれなのか、両方なのか分からないが、ともかく快適。
○○.11  この末尾2桁というのは‥‥、ちょっとすごいことになっちゃってるよね。
昨日外出した折りに立ち寄った書店でMac関連雑誌に「Leopardインストール特集」があり、購入。
時間が取れた折にでもじっくりいこう。

秋晴れと製材

週明けからとても快適な気候が続いている。秋晴れだ。
一般に秋の天気も移動性高気圧が周期的にやってくるので、春と同様変わりやすいのが特徴で、秋雨前線もくれば台風だってやってくる。年によっては月間降水量は梅雨時と変わらないほど降るときもある。
しかしこのところ大気は安定し、高い空が真っ青に澄み渡っている。
工房に入り浸っているとあまり感じることもない季節の移ろいも、今日はあちこちと所用のために移動する行程で暫し空の青さとやや紅色に染まる山々へと目が奪われる。
今日はいくつかの業者への所用と、製材。
製材は過日エントリしたワードローブの帆立・羽目板(鏡板)に供するための再製材。
実は数年前までは直ぐ近くに賃挽きの製材所があり、世話になっていた。
10年ほど前までは地元でも月に2度の原木市が立ち、時期になると(晩秋から、春先まで)足繁く競り落としに通ったことがあり、競り落とした原木の製材のため、毎月のように世話になっていたものだった。
ただ残念ながら、そこの主人は急死。跡継ぎもなく閉鎖の憂き目。
ここ島田市というところは中央アルプス山系を背後に控えて、大井川という運送経路があったことで、材木の集散地として昔から栄えてきた。
しかしバブルが弾けた頃辺りから、徐々に木偏の付く商いは元気がなくなり、製材機から発するけたたましい音も断続的に‥、さらにそのうちに全く静かになっていくばかりだった。
こうして賃挽きしてもらえるところも次々と無くなってきたが、かろうじて老夫婦の運営による小さな製材所が請けてくれている。
今日もわずかに数枚の再製材なのだが‥‥、と遠慮気味に請えば、元気に「いつでも良いですよ〜」との返事。

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角面取り鉋、揃い踏み

角面取り鉋
面取りという加工は、ピン角のまま捨て置くことによる危なさを防ぐ目的もある(木部そのものの破損リスクもあれば、手を触れたときの危険性もある)が、それ以上に造形におけるディテールを決める比較的重要な要素でもある。
角面というのは坊主面と並んで、もっとも一般に広く用いられる面形状だね。
加工工程としてはカッター、あるいはルーターでの切削となるが、その後の仕上げはやはりきちんと一鉋(ひとかんな)掛けたいもの。
昔からこの角面の仕上げ用に特化した「角面取り鉋」というものがあるが、画像にあるように様々なタイプのものがある。
過日、平出さんの訪問の際に購入したのが、一番小さなダボ式のもの。
普段忙しいのでほったらかしだったが、やっと昨日台のチェック、刃の裏押しなどの仕込み作業をして使える状態に。
あえて新たに求める必要があったわけではないが、平出さんの営業への貢献?も考え、揃えたと言うところ。
ま、無駄にはしないようにしたいものだ。
他の標準サイズのものと並行に使って行こうと思う。
このダボ式はサイズ合わせが少しやっかいだが、しかしボクの手は木工屋としてはやや小さな方なので馴染みやすいサイズかもしれない。
訓練生当時に購入したのが金属製のネジ式のものだったが、その後木製のネジ式のものを入手し、これが専ら現役。
その後金属製のネジ式の方は任意なところから掛けられるように台を細工してある。
読者で、もしこれから入手されるのであれば木製ネジ式のものにすべきだろう。

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李朝家具の美しさとは

家具の美しさとは何だろう。
今日取り上げる画像は李朝の家具だが、いずれも松などのありふれた材を用い華美なものを極限的に排除した簡明な造形のものばかり。
李朝の家具はどれも好ましく感じ入ることが多いのだが、中でも今日紹介するような削ぎ取られた意匠を持つ重厚なものが良い。
華美とは対極のどこか無骨で鈍重。しかしそれだけに存在そのものが力強くそこにある。
無論、繊細で精緻な造形と華やかな意匠を持つ両班(やんばん)、文人が使ったと見られる高級なものも好きだが、どちらかと言えば画像のような素朴なものに強く惹かれてしまう。
陶器で例えれば伊万里のような端正で華やかなものから受ける美しさに対し、ただ呉須で唐草などを簡素に描いただけの、造形的にもよく見れば首先が少し歪んだような李朝の白磁に見られる不作為な美しさの方に魅入られることに通底する何ものか、だ。
自身が作るものはむしろ近代を経てきた時代に様々に規定されたような意匠であったり、市場、メディアを過度に意識した“いやらしい”作為的なものであったりするのかもしれなないことを振り返れば、これらの李朝のものには実に健康的な美意識を見ることが出来るし、品性において勝てないよな、と脱帽してしまう。
これがどこに起因するのかの分析は、美術史家、民藝研究家などに委ねる方が良いだろう。
浅学なところから解釈すれば李氏朝鮮が儒教精神に支配されていたということもあるだろうし、前近代の非合理的な価値概念からくる美質の特徴と言えるのかもしれない。
あるいは簡素な樹種しか産出されないという気候風土も影響しているだろう。
こうして好きな李朝様式もいざ自分で制作するとなると話しは違ってくる。
恐らくこうしたものをボクが写して作ったとしても、ただの似て非なる偽物にしかならないことぐらい分かり切っているのでそんな愚かなことはしない。
李朝家具1

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ドレメルの破損

Dremal
昨日、長年使ってきたドレメルが破損。
「DREMEL moto-tool Model 395-3」というありふれた機種。
モーターの回転が軸先へと伝わらなくなってしまった。
最近どうもこうしたトラブルな記事が多いね。
この際、某政党、党首の異名、「壊し屋」の別称でももらおうか。
この「ドレメル」使用頻度はとても低い。
もっぱら家具金物に関わる金工に使ってきただけ。
今回は先に入手した2枚刃の南京鉋を仕込む過程でのこと。
南京鉋は台に過度なストレスを受けるので、使用に供するにあたってはまず何よりもあらかじめ口埋めをするのが最初の仕事となる。
南京鉋に限らずボクたち職業木工家は一般に鉋の刃口を埋めておくことが多い。
通常は白樫、赤樫、あるいは黒檀、紫檀など堅木の木口を用いるが、南京鉋ではさらに形状安定を求め、真鍮板を使うことも屡々。
今回もこれに倣い、いそいそと真鍮板を取り出し加工に入った矢先のことだった。
口埋めは刃口部分だけをやるのが普通だが、南京鉋については上端側も含め2箇所に施すことが多い。
今回はこの2箇所を1枚の真鍮板で作るべくドレメルにご登場願い、中央部に一定の幅のスリットを入れようとした。
ドレメルの先端にダイヤ粒を融着させた円盤状のビットを装着し、加工に入る。
最初は2mmほどの厚さの真鍮板も快適にスリット状に開けることができたのだが、数分して先端のビットは回転が停まってしまった。
モ−ター部は異常なく回転しているようで、どうも伝達機構がやられてしまったような症状。

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木材資源の多様化と刃物メーカーの悩み

旧聞に属する話しで恐縮だが「名古屋国際木工機械展」には出掛けたいと考えていたものの残念ながら行くことが出来なかった。
木工機械としては日本最大規模のものだから、毎回とはいかなくとも見ておきたいイベントだ。
見てもいない話題を取り上げるのは、今朝出展していた刃物メーカーの担当者が工房に立ち寄り話題を提供していってくれたから。
現在刃物メーカーの目下の課題の1つが多様な素材にどのように切削刃物を対応させるか、ということなのだという。
無垢材であれば全く問題にならない切削性能も、現在の木工、建築の分野での素材の多様化は刃物メーカーを大いに悩ませているということだ。
驚いたのはパーチクルボードの素材にはコンクリートパネル(コンパネ)の再生品が含まれ(再生パーチクルボードというのかな)、当然にも石材、セメントなどが混入しているとのこと。
したがって超硬刃物も1回で切れが止む。
ダイヤモンド刃物で無ければ対応できはしない。
あるいは木型なども樹脂素材へと転換しているように樹脂加工分野への切削技術の応用が拡がってきている。
例えば木型などでは成型切削後、サンディング仕上げの過程でエッジ部分が“だれ”てしまう。これを回避するには良く切れる刃物でフィニッシュにまで持って行きたいとの要求もでてくる。
訪ねてくれたのは機械展の招待券を贈ってくれたドイツの刃物メーカーの担当者だったが、カネフサなど日本のメーカーと較べれば、こうした素材の多様化への対応はどうしても国境を越えてしまうという制約において競合できないのだと嘆く。
あるいは昨今の尋常ではないユーロ高はコスト面において営業戦略を大いに悩ます要因となっていることも確かなところだろう。
はてさて‥‥、
考えさせられたね。量産家具メーカー、あるいは建材メーカーの多くはコストカットのためにはチップボードにコンクリート混入があれども使わなくてはならないという時代の要請は、ちょっと尋常ではない。
しかし一方、何でもかんでも無垢材というのも大衆消費社会にあっては無理難題。
ボクたちの狭い世界であっても如何に無垢材を有用に活用するのかということは現実的問題として俎上にあることも確か。
いわゆるランバーコアなどの活用、あるいは自からランバーコアを作ることも含め、貴重な天然素材のサスティナブルな活用という問題は避けて通れない課題だ。
*参照
パーティクルボード:
JIS規格:JIS A 5908

ナラのワードローブ(その2)

杢楢
このワードローブ、過度な装飾もなければ新奇な造形を持つものでもない。また特段新たな技法を用いたものでもない。
何がポイントかと言えばナラという重厚なイメージの材料を選択し、簡素ではあるがこの材種の特性を活かした重厚なデザインとしたところにあると言えば良いだろうか。
厚めに木取った4本の柱は互平(ごひら)に配置され、帆立には無垢の3枚構成の羽目板がホンザネで継がれ柱と上下3枚の横框に落とし込まれている。
柱はややテリ脚の造形が施され、安定感と重厚さを視覚的に与えている。
上下の棚口は互平の柱からそれぞれやや張り出させ、支輪、台輪のイメージをも兼ねさせる。
扉は框組とせず、左右2枚づつの無垢板をホンザネで合わせただけのもの。
この扉板は、吸い付き桟の機能を持たせ、左右それぞれ3箇所に打ち込まれたナックルジョイント様の丁番へと接合される腕木によって支えられている。
中央のこの吸い付き桟を兼ねた腕木は、それぞれ端末で大きくしゃくり出されハンドルとして機能させている。
あえてデザイン様式を辿ればスパニッシュ風と言えるかも知れないが、お客様への説明では「鎧戸のような」というような言い方をしたりする。
デザインはいろいろと盛り込む必要はない。簡明で、シンプルに。
しかしボクたち木工家はデザイナーが描くデザインプロセスとは異なり、あくまでも木に始まるということにおいて優位性を持つだろうし、さらにはまた木工技法(仕口などの体系を含む)を自家薬籠中とすることで、デザイン領域においても自由が獲得できる。
楢、拡大このキャビネットにそうした木工家ならではの優位性を見ることができるならば木屑にまみれるのも悪くないものだとひとりほくそ笑む。

Top画像は昨日話題にした杢けのある楢だが、帆立の羽目板として木取るべく、厚板を再製材するための基準面出しの合間に撮ったもの(今日はお天気がすぐれず、コントラストが悪すぎた)。
下は拡大(部分)

ナラのワードローブ

工房ではワードローブの制作に掛かっている。
「木工家具の工房悠」サイトに紹介しているものと基本的には同じデザイン。(こちら
このスタイルのものは過去10台近く制作してきているかな。
多くはワードローブという用途を持ったものだが、いくつかはロッカー風のものだったり、整理棚のようなものだったりと、内部の構成を変えることで様々に対応させてきた。
今回は以前、卓をお買い上げ頂いた方からの注文によるもので、制作に当たってはいくつかの条件が付いた。
中でも絶対的な条件として、扉、および帆立には杢を持つミズナラをふんだんに使う、ということであった。
しかも2尺幅の帆立もこの杢のナラの1枚板でという、かなり厳しい条件が付帯する。
ほぼこの仕事で杢のナラは使い切ることになる。オサラバだ。
このナラと出会って、そしていくつもの家具に使われ、そして残る数枚の用途も決まった。いささかの感慨もあろうというもの。
しかし作品となってお客様のところで楽しんでもらうことが最高の栄誉だからね。
この杢がかったナラ。今はない地元の原木市で競り落としたものだった。
末口70cm,、5m近い長さのものだったが、長さのその半分ほどはひどい虫害で家具材としては使用に耐えられそうにはなかった。
しかし丸太の木口を見ると実に年輪が詰まっており、ざっと見ただけでも200年は越えそうな年輪を数え、その魅力に惚れ込んでしまった。
要するにヌカ目であったわけだが、本来ナラのような広葉樹では過度なヌカ目は避ける。つまりナラの特性である重厚さに欠けることを嫌うからだ。
事実、投票ではあまり対抗する票がなかったのだろう、決して高い単価で入札したワケではなかったが、見事に競り落とすことが出来た。
製材では、まず5mという長さを半分に切り落としたが、片方には虫害にはほとんど侵されることなく、とても良い材が取れた。
一方の虫害を受けた方も、いわゆるアンティーク調の仕上げを持たせることで有効に使ってきた。
何故ならば、このヌカ目のナラは実に素晴らしい木目を有していたからだ。(欧州の木工品にはこの虫害を受けた材が良く用いられている)
皮に近いところ(辺材)には玉杢のような、あるいは葡萄杢のような、多様な細かな杢がびっしりと付いており、とても気品のある材で、それまでも、あるいはそれからもこのようなナラには一度もお目に掛かることのない実に稀少なものだった。
恐らくは同業の士でも、色を隠し、臭いを隠した状態でこの杢を見せても、その材種を峻別できる人は少ないだろうと思われるようなものだった。
天然乾燥を3年ほど。その後人工乾燥に入れ、工場に入ってからは、専ら拭漆の飾り棚などの羽目板などに用いてきたのだが、上述の顧客にこのナラ杢を用いたキャビネット()をお見せしたところとても気に入り、今回のワードローブにふんだんに使うこととなった次第。(本稿、続く、かもしれません)

ソファの快楽

ソファ
木工屋にとってソファという座具の位置づけは、いささか微妙なところにあると考えるが、同業の諸兄にとってはどうなのだろうか。
つまり座具としての基本的機能がソファという性格からして、クッションの部位に大きく規定されてしまうということから、専ら木工が主たる責任領域の場に位置するものとしてはやはり“ビミョウ”な領域なのである。
これは何も製品(作品でも良いが)の最終的品質の責任を回避しようということではないのだが、自分では関与しきれない外的要因というものを排除できないことから、したがってどこかやはり全的に責任が取れないものだなという隔靴掻痒の思いが拭いきれないことによる。
そうした不確実性から免れたいのであれば、自身で張りまでを責任取れば良いのだが、木工屋がそこまで介入できると思うほど、張り加工が安易だと考えるのは間違いだろう。
結局は、張りについての技術、素材など自身で良く学習し、そして良い張り屋さんとの出会いを求め、良いパートナーシップを作り上げ、共に高品質なソファを作り上げる強い意志を固めることでしか実践的な道は無いのだろうと思うね。
近くに良いチェアメーカーで名を馳せる森下さんという知人木工家がいるので、的確なアドバイスと刺激を受けつつ、一歩前に進むということになる。
画像は以前紹介したソファの2P版。
デザイン的にはご覧のように Arts & crafts の残滓を持ちながらも、モダンで高品質なものとなったと思う。
木部はブラックウォールナットの良材をふんだんに用い(市場で流通している“オカシナ”ウォールナットではなく、本来の色味を持った真性な方)、重厚かつ軽快(形容矛盾ではなく、材の取り方、デザインなど総合的な視点からの物言い)なものとなった。
張りも、張り屋さんとの徹底した技術的、造形的議論を重ね、また苦労させつつ、やっと仕上がったもの。
2Pとはいえ、ややたっぷりとした間口を持つので、住宅の居間におけばその存在感は絶大。
在庫あります。買ってください。
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