工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ソファの快楽

ソファ
木工屋にとってソファという座具の位置づけは、いささか微妙なところにあると考えるが、同業の諸兄にとってはどうなのだろうか。
つまり座具としての基本的機能がソファという性格からして、クッションの部位に大きく規定されてしまうということから、専ら木工が主たる責任領域の場に位置するものとしてはやはり“ビミョウ”な領域なのである。
これは何も製品(作品でも良いが)の最終的品質の責任を回避しようということではないのだが、自分では関与しきれない外的要因というものを排除できないことから、したがってどこかやはり全的に責任が取れないものだなという隔靴掻痒の思いが拭いきれないことによる。
そうした不確実性から免れたいのであれば、自身で張りまでを責任取れば良いのだが、木工屋がそこまで介入できると思うほど、張り加工が安易だと考えるのは間違いだろう。
結局は、張りについての技術、素材など自身で良く学習し、そして良い張り屋さんとの出会いを求め、良いパートナーシップを作り上げ、共に高品質なソファを作り上げる強い意志を固めることでしか実践的な道は無いのだろうと思うね。
近くに良いチェアメーカーで名を馳せる森下さんという知人木工家がいるので、的確なアドバイスと刺激を受けつつ、一歩前に進むということになる。
画像は以前紹介したソファの2P版。
デザイン的にはご覧のように Arts & crafts の残滓を持ちながらも、モダンで高品質なものとなったと思う。
木部はブラックウォールナットの良材をふんだんに用い(市場で流通している“オカシナ”ウォールナットではなく、本来の色味を持った真性な方)、重厚かつ軽快(形容矛盾ではなく、材の取り方、デザインなど総合的な視点からの物言い)なものとなった。
張りも、張り屋さんとの徹底した技術的、造形的議論を重ね、また苦労させつつ、やっと仕上がったもの。
2Pとはいえ、ややたっぷりとした間口を持つので、住宅の居間におけばその存在感は絶大。
在庫あります。買ってください。
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  • 私はアマチュアですがartisanさんの「張り」に関する
    考え方には共感します。
    先日、artisanさんから情報をいただきましたダニエル家具の
    学校についてですが資料や家具の学校のブログを拝見すると
    張りの修理を主目的とした学校のようであり、私の目的と
    する所とは少し違うかな、という結論になりました。
    ありがとうございました。

  • acanthogobiusさん、「張り」は重要で、またとても難しいですね。
    ダニエルさんの「家具の学校」、仰るように椅子を中心とした小物家具の制作と張りの修理が基本のようですね。
    ボクは関東圏の木工教室のいくつかを少し知っていますが、首都圏では意外と少ないようです。
    しかしacanthogobiusさんにはもう不要なのでは?
    これまでのようにお師匠さんにアドバイスを受けつつ作り続けることではないでしょうか。

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