工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

夏は逝く

稲穂
工房に隣接した田んぼの稲穂は既に頭を垂れ、旬日後には収穫も、というところまで成熟してきているようだ。
季節の移ろいは日々の細々とした忙しさとは無関係に足早に過ぎていく。
週末はもう二十四節気の“処暑”となる。
同時に北京五輪も終幕を迎え、落ち着いた日々が戻ってくる。
この夏は例年にも増す過酷な暑さだが、肉体的疲労はあるものの充実した仕事の日々が幸いしたのか、これといった体調悪化もなく推移してきたことはありがたい。
そうそう、Na不足から思われる脚部トラブルがあったが悪化に至ることもなく回復基調。
過酷な暑さの中で勤しんだ仕事、あるいは限りあるページ数ではあったものの脳幹への刺激を与えてくれた読書なども、来る秋へ向けての準備と思えば流した汗も報われよう。

青林檎 与へしことを 唯一の 積極として 別れ来にけり

河野裕子

いくつもの思い出を残して夏は過ぎゆく。

北京からの風

北京五輪も会期半ばを過ぎ、いよいよ陸上を初めとする競技もヒートアップしている。
TVの前の視聴者は観戦疲れで中だるみ?
これまでの競技の中でもっとも衝撃的だったのはやはりジャマイカの196cm巨躯褐色の若きスプリンター、「サンダーボルト」の異名をもつボルトの陸上100m決勝での走りっぷりだった。
タイムは驚異的なワールドレコードでの9秒69。
横一線で綺麗にスタートしたものの中盤からぐいぐいと長いストライドを生かし周りを置き去りにしての孤高の走り。 
日本選手がファイナルに残れなかったのは残念としか言いようがないが、こんな衝撃的なタイム争いでは宜なるかな、というところで悔しいという思いにさえ届かない。
ボルトは米国陸上界からは熱い眼差しが注がれ、いくつもの奨学金付きの留学の誘いを、「アメリカは寒いからやだ」とはねつけ、カリブに踏みとどまっている姿がなお好ましい。
20日に組まれている200m決勝はさらに期待が膨らむ。もともと200mを得意とするボルトなので、カール・ルイス以来の2冠達成が成るか。
様々な競技の結果はそこに横たわるアスリート達の一つ一つのストーリーを語り、競技スポーツの過酷さと、それを乗り越えて闘い、栄冠に輝くまでの感動をさらに深くする。
前半戦を終えて報道で伝えられる幾つかの事柄から、思うところをピックアップしてみたい。

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二枚ほぞ

二枚ほぞ画像はテーブルの左右の脚部を連結保持させるH型貫の束部分。
完成すればこんなふう(マホガニービックテーブル)。
うちでは枘(ほぞ)の多くを二枚枘で設計することが多い。
これはこのBlogでも何度か記述してきたことだが、枘の接合度が圧倒的に高まるからだ。
具体的にはキャビネットなどでは棚口、束、などだが、それぞれが嵌め合う部位の経年変化による変形、環境の変化による反張などで接合が緩みやすい個所に積極的に用いることにしている。
この画像の場合も貫の構造的安定度が、ひいてはテーブル全体の構造的強度に関わるので、二枚とした。
一件面倒くさいように思われるかも知れないが、決してそんなことはない。
枘穴の方だって、貫の部材のセンターに穿つのであれば、2個所の穴は1つの設定で左右対称で開けることで精度は自ずから高くなるだろう。
枘の方も至って簡単。
例えば、この場合、部材は40mm角。
二枚枘の割り付けは以下のようだ。
 5-11-8-11-5 (mm)
なお四方胴付きの仕口にするのだが、この肩も5mm。
つまり加工手順としては、四方ぐるりと5mmの深さで胴付きを入れ、
中央の8mmを左右から適宜5or6 mmほどのカッターで抜き、最後にぐるりと5mmを落とせばオワリ。
ちょっとずぼらに過ぎるのではない?
なぁんて言う人は、過度に丁寧すぎる人。
如何に高精度に、かつ合理的に、快適に、加工するのかが職業木工家としての
“美意識”
四方胴付きという仕口は言うまでもなく、構造的堅牢度(捻れに強い)への考え方から積極的に使うべき。
またそれだけではなく、枘に塗布するボンドが外にはみ出ないという副次的なメリットがあることを知る人は、こんなエントリ、無駄だったかもしれない。
以前もどこかで記した記憶があるが、組み終わった後にはみ出たボンドを処理するなどという愚かなことは可能な限りしたくないもの。
美しく、快適に !

「もう、間に合わないのでは」

蝉時雨
焼け付くような炎天下、高鳴る蝉時雨をくぐり抜け、市民総合病院での呼吸器疾患、定期検診を済ませ、その足で父と兄などが眠る隣町の墓前に花を供える。
和尚と二言三言言葉を交わし、太陽が真上近くになる時間には位牌を管理している母の在所へと向かう。
80半ばを越える母はまだまだ元気で、笑顔で迎えてくれたが、一昨年に長兄を亡くしてからは衰えは隠せない。
「お茶は冷たいのと熱いのとどっちが良いの?」と、母が仏壇に合掌を終えた頃を見計らって言葉を掛けてきたが「熱っつい奴を」と答える。
兄が残した築後数年の立派な家だが、母の部屋は北と東の窓が開け放たれ、風が抜けるせいか扇風機とうちわだけで十分にしのげ、真夏の日中とも思えぬおだやかな時間が流れ、妻、亡き兄の妻、母、4人で暫く昔の話しに興ずる。
それぞれ就学時の頃の他愛ない話やら、亡き兄、亡き父の思い出やらが続き、最後には戦時中の話しと移っていった(いえいえボクはこう見えても戦後生まれ、ですが)。
しかしボクの近い親族には、もはや戦争を語ることのできる者はいない。
女は母を含め長命で数人がいるが男どもはさっさと鬼籍へと埋もれてしまっている。
63回目の敗戦記念日(『終戦記念日』などどいう実態を糊塗し、覆い隠すような呼称には多くの問題が隠されている)を迎えて、多くの家庭がほぼ同じような状況にあるのではないだろうか。

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テーブルの脚は無用か

テーブル脚組み上げ
ある著名な木工家の個展で作家本人から伺った話。
「テーブルというのは天板さえあれば使えるんだから、脚なんて無くて良ければそれで構わない」
空中浮遊できるならそれでも構わない。機能としての天板があれば十分、ということになるのかな。
確かに正論でもあり、また暴論でもあるね。
しかし現世では脚がなければテーブルとしての機能を満たせないというのがニュートン先生から教えられた万有引力の法則が貫かれる地球上の法則。
そうであれば、あと問題となるのは工学的解析であり、またデザイン学の世界の話しになる。
要するに求められる天板のボリュームに対し、十分に使用環境に耐えられる脚部の構造的強度があるか、家財、調度品として求められる意匠と仕上げ精度、つまりは美しさがどうであるか、ということである。
如何に天板が立派なものでも貧弱な脚部では、構造的にも意匠的にもバランスが悪い。
また小ぶりな天板にあまりに重厚な脚部を付けても具合が悪い。
要するにバランスだ。
テーブル脚、塗装今日はウォールナットの大きなテーブルの脚部を仕上げ、やっと組み上げ、塗装の第1ステップまで進めることができた。
これはズリ脚と上部の吸い付き桟の位置関係がずれて垂直ではないので、ちょっと組み上げるのが大変。
そんな理由もあり、2脚1セット分を然るべく、ずれ調整を補正させてのプレス機での組み上げとなる。
枘のストロークも90mmほどあるので、他の方法では正しく組めない。
しかしウォールナット(但し天然乾燥のもの)のオイル塗装は、実に美しく変化するね。
ところで天板とのバランスはどうかな。また後日画像upできれば良いのだが。

ネットではJR会社複数路線の予約はできません

今日は帰省ラッシュのピークだそうだ。
普段から当地からの移動には3Km先にICがあることも幸いし東名高速道路が欠かせないが、こんな時期は利用を避けねばならない。
ところで来週末、新幹線を利用して東北地方へ出張するのだが、帰省ラッシュとはずれているので“はやて”のソファにゆったりと身を沈め、iPhoneからBGMをもらい短編小説の1つぐらい読み切れるかも。
今日はJRの指定席確保にちょっと戸惑ってしまった一件を取り上げてみる。
民営JRの連携の悪さについてということになる。
JR全線、指定席が欲しければチケット発行端末が備えてある駅頭に行けば何ら問題なく発券してもらえるのだが、何をやるにもネットから、という昨今のIT依存体質をもってすれば、当然にもMacを叩けば予約ぐらい出来ると踏んでいた。
妻は実家が中国地方ということもあり、頻繁にJR東海+JR西日本を利用していて、数年前からエクスプレスカードというものを取得し、活用している。
Macに向かえば指定席の確保と発券予約はもちろんのこと、みどりの窓口などで購入することと較べても、割安であるらしい(措定席負担分がほぼ免除)。
また利用回数によって、グリーン席も自由席分の負担で利用できるのだという。
当然にも今回もこれを活用して予約してもらおうと依頼した。
ところがダメなんだという。
あんたの分はあんたでやんなさい、なんて言うイジワルされたのではなく、システム上出来ないのだそうだ。
そんなヘンな話しあるの?
と、自身で確認すれば、確かに東北地方へはJR東日本を利用することになるのだが、JR東日本はこのエクスプレスカードのサービス対象外なんだそうだ。
おやおや困ったものだね。
と言うわけで、同様のサービスがJR東日本にもあるだろうと思い、検索してみれば、確かにあった。
えきねっと」というらしい。詳細はサイトからご覧いただくとしても、そのサービスエリアは、やはり自社の管内だけらしい。
つまり今回のようにJRの各会社を跨ぐような利用では発券予約できない。
また例え管内での予約は出来ても、実際の発券は管内のみどりの窓口ということで管外の者には受け取る術がない。
これは単にネット上でのシステム的な制約かと考えてみたのだが、どうもそうでもないようだ。
各JRはそれぞれ、様々なツアー商品を販売して顧客獲得に熱心だが、例えばうちの管内、 JR東海ではJR西日本方面のツアーは連携しあって販売しているが、東方面は皆無。
詳しく関連する情報を取得すればその背景も浮かんでくるだろうが、今のところするつもりはない。
ただあまりにもその連携の悪さに頭を抱え込んでしまう。
ま、そんなワケで結局Macを閉じ、駅へと走ったというつまらないオチでした。
(JR各社を跨いだ予約をネット上で出来る方法を知っていらっしゃる方がいれば入れ智恵をください)

送り寄せ蟻吸い付き桟

送り寄せ蟻
猛暑日が続いている。
こういう気象条件下では木への影響はどうなのだろうか。
工房の寒暖計は30度を大きく超える数値を示しているが、乾湿計は体感とはちょっと違い意外と低い値示す。50%前後。
例えば今日の作業、「送り寄せ蟻吸い付き桟」の加工調整については、とてもナーバスになる。
木は必ずや痩せてくるので冬場の乾燥した環境下で調整する際にも細心の注意をもって臨むものだが、湿潤な大気の季節ではなおさらのこと。
したがって桟の木取りはあらかじめ痩せを想定してのものとなる。
具体的には板目は避け、良く乾燥した柾目で木取ることで寸法精度の経年変化を極力避ける。
吸い付きの嵌め合い調整は極力堅めに行う。
それでも少々の痩せは避けられないので、その場合にさらに打ち込むことで嵌め合いを強くするための蟻桟の移動距離の余力を見込んでおく(テーパー加工)。
なお、参考までに記述しておきたいことがある。
「送り寄せ蟻吸い付き桟」の構成だが、ボクは画像のようにブロックごとに欠き取ることはしない。通している。
これは解説は不要だろうが、蟻桟がブロックであることで、首根っこからもげてしまう(繊維破断)ことを避けるためだ。

スイカにはたっぷりの塩を

連日の猛暑もここへきて少し和らいできたように感じる。
日中の炎暑はさして変化はないようだが、朝夕の凌ぎやすさがそう感じさせるのだろう。
ところでこのところの気温の上昇は体調に著しくダメージを与えていると思う。
ボクも数日前から脚部の違和感を感じるのだが、やはりNa(ナトリウム)不足からのものと思われる。
大汗を掻いての木工作業で、体内からナトリウムが排出して異常な状態になっているのかもね。(単なる老化だろ、との陰口も聞こえる)
さっそくそれ以降はスイカにもたっぷりと塩を振りかけ、食事には毎食梅干しを噛みしめ、スポーツドリンクを積極的に摂取している。
アシスタントからは栄養ドリンク飲まないの?と促されるが、そんなものに依拠する体質ではない(体質ではなく、健康への考え方、かな)。
しかし何よりも夏の体調管理はきちんとした食事の摂取と快適な睡眠を取ることに尽きるのではないだろうか。
そこで今日は拙宅の睡眠環境。

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Branford Marsalis + Sting

小さな島国、日本でしか暮らしたことはないので、異邦人というものの居心地がどのようなものであるかは知らない。
(国内にいてもそれらしき気まずい居心地を味わされることが無いとは言わないけれど‥‥)
スティングは歴とした英国人だが、ポリスを解散してソロ活動の開始後はニューヨークを拠点に活動している。
アルバム「Nothing Like the Sun」はソロになって3枚目のアルバム。
そこから「Englishman in New York」をYouTubeで

20年も昔のアルバムからだが、何故こんな旧い曲を取り上げたかのか。
iPhoneではビデオクリップを再生できるので、iTunesライブラリに納めてあったいくつかのビデオを同期してみた。
小さなモニターではあるが、なかなか解像度も高く美しい。
そこでiTSから気になるミュージシャンのビデオを検索し、新たにいくつか購入した中の1つがこのStingの「Englishman in New York」
再生回数の高いランキングにある曲だったが、あらためてビデオクリップで取り込んで気になったのがバックミュージシャン。
中でも軽やかな中にも叙情的なスイング感でオブリガートを担うソプラノSaxはもしかしたら、と思って検索したら、Branford Marsalis(ブランフォード・マルサリス)。
弟のWynton Learson Marsalis(ウィントン・マルサリス)は現在最も著名なJazzトランペット奏者だが、若い頃から長兄のブランフォードの方が才能豊かと言われていたようだ。
ソロ転向以後のStingはそれまでのファンの一部を置き去りにして、Jazzyで思索的なアルバム作りになっていったが、これはブランフォードとの交流が背景にあったことも理由の1つだろう。
以降もステージでは2人並んで演奏することも多かったようだ。
このYouTubeと同じビデオクリップがiTSから入手できる。
こちらから、(もちろん画質、音質ともにはるかに良い)
「異邦人」については歌詞から、どうぞ。(こちら
最後に何度も何度もリフレーンされる次の歌詞は、同調圧力が過剰なまでに強い今の日本ではとても大切なものに思えてくるね。
♪ Be yourself no matter what they say
*Sting  公式サイト

真夏のおだやかな工房で

成形仕上げ
木工加工の一連の工程で楽しいことを上げれと言われたら何と答えようか。
まず答えに窮してしまうだろうね。
辛いことが多いばかりで、楽しいことなんか何も‥‥、ということではない。
一方、多すぎて、困ったねェ、というのは本音と強がりが微妙なバランスで拮抗している物言いかもしれないが‥‥、
昔、親しくしていた陶芸家を訪ねたときのことだが、うちの若いアシスタントとの間で次のような会話が交わされた。
陶芸家の先生:修行は楽しいか?
アシスタント:(やや間があって)ハイ楽しいです。
陶芸家の先生:バカヤロ ! 楽しい修行などあるか。厳しい修行を乗り越えてこそ、楽しい日々が待っている、かもしれないのだよ。
(ボクの方を向き)杉山くん、ちょっと甘やかしすぎだぞ‥‥。
ハハハ、ちょっとこのアシスタント、気の毒だったかな。嵌められた、という感じだ。
さて話しを戻し‥‥、木工加工の一連の工程だが、留保など一切不要な楽しいこともある。
手鉋で一定の造形物を成形加工することもその1つに入る。

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