工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

仕口は楽しんで

70414aご多分に漏れずボクも木工修行の手始めは訓練校から。

授業で本格的な家具制作をスタートさせる前に座学と並行して手道具を使っての様々な仕口のトレーニングをしたことがあった。鳥海義之助著の「木工の継ぎ手と仕口」にある代表的なものをやっていたと記憶するが、ボクは時間外も含めひとり様々な仕口にチャレンジして楽しんでいた。

木工のテクニクスなど大層なモノではないと考えられるかもしれないが、どっこい長年にわたり職人から職人へと口伝と手業で伝えられてきた技法の体系の豊かさには驚かされるものがあった。

ここに紹介する仕口は決してめずらしいものでもなく、ボクも比較的多用するものうちの1つだ。
“核相欠留接”と呼称するが、他にも“襟輪付鬢太留”(えりわつきびんたどめ)などとも言う。英米では(Lock Miter Joint)
小さな燭台を入れる筺を依頼された。かなりの数量なので、クライアントに確認してもらうための試作品。

お若い人で海外通販などでルータービットを探す人は見掛けたことがあると思う。
ボクの形状とは若干異なり、“Lock”部位は台形で処理されているけどね。
特徴は外形は留であるが、“Lock Miter”とあるように内部は外れにくい(切れにくい)構造になっているところだ。

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手作り家具という市場の1断面

前回記述した納品先での話。
納品作業終了した後、少し時間が取れたので、近くで材木屋が経営してるホームセンターおよび併設の木の家具のショールームへとギャラリーオーナーに連れられ覗いてみた。
これまで何度も訪問している地域であり、客からもその店舗についての話題があったりしていたので知ってはいたのだったが、そうしたところはあまり興味もないので立ち寄らずにいた。
でも何事によらず、嫌わずに知見を高めるためにも見るのは悪いことではないと思ったね。
まず驚いたのは建築構造材を中心として、化粧材などが豊富に展示販売していて、それはなかなか圧巻だった。
米国でのDIYの世界ではこうした展開はごくありふれたものなのだろうが、国内ではちょっとめずらしいかも知れない。
針葉樹だけではなく、外材中心に広葉樹も様々な樹種があり、聞いたこともないような、恐らくはアフリカ材と思しき、堅そうなマメ科、カキ科の類の樹種が多く陳列されていた。
大工さんなどにも、現場で緊急に調達するにはありがたい存在かもしれない。
無論、こうした販売形式であれば価格はめちゃくちゃ高いものになるだろうが。(業者感覚からすると、という意味で)
一方の木工家具の建屋には、テーブル類を中心として所狭しと数十台にも及ぶものが置かれていた。
材木屋というだけあって一枚板の天板が壁沿いにずらーっと並んでいたが、中には現在国内では入手困難と思われるものもあり、これにも圧倒された。
さて家具だが、このコーナーでは冒頭記述したようにあまり覗きたいとは思えなかったという感覚に大きな間違いはなかったと思わせる内容だった。
要所要所に「クラフトマンの私が作りました」と、写真入りで作業服姿の老齢作者が紹介されている。
確かに一枚板のものを中心に並べてあったが、板のグレードもさほど良いものとは思えなかったし、デザインもいわゆる“手作り風”のもので、洗練さとは異なる品質のように思えた。
例えば天板を触れば、たちどころに鉋など一切使わない仕上げであることが伺えた。
中に一枚、虎斑ギラギラの樺のテーブルがあったのだが、何気なく触ってみると大きくうねっている。虎斑のところで波打っているのだ。恐らくはその山、谷の寸法差は数mmほどもあろうかと思われるものだった。
これは鉋などによらずに、手作業でのポータルサンダー仕上げのものなのだろう。
樺はかなり堅い。ミズメ樺など削ったことのある人はお解りいただけるだろうが、虎斑をしっかりと仕上げ、その結果光線の当たり具合で見事にツヤと照り返しが浮かび上がる、つまりその木が持つ木理をしっかりと引きだしてやるにはある程度の手鉋の練度が要求される。
そうしたことを回避し、ポータブルサンダーで何度も何度も粒度を替え、ペーパーを取り替え、強力に加圧し、やっとのことで仕上げたのだろう。
虎斑のところは木理としては逆目になっているために機械切削では逆目が深くえぐられ、鉋でかなり削り込まないと良い板面は得られない。
これは普通にサンダーで仕上げようと考えても無理。無理を通せば木理はめちゃくちゃ。結果、“波乗り”仕上げにならざるを得なかった、ということだろう。
これを製作した某クラフトマンなる人は、そうした品質への関心は薄いのかもしれない。
これは多くの要素の内の1つの表象にしか過ぎないかも知れないが、デザイン、仕口、仕上げ精度なども天板削りと同じ水準と考えて概ね差し支えないだろう。
こうした木工は決してめずらしいことではなく、ごくごくありふれたものなのかもしれない。
ボクたちが当たり前と考えている木との関わり方、家具への思考、求める仕上げ品質の基準、デザインを含めた美意識、そうしたものとは異質なものが市場を席巻しているというのも消費社会の偽らざる一面なのだ。

ささやかな抵抗

乗用車が初回の車検ということでディラーへと預けに出掛けたがショールームには更新されたばかりの同車種がまばゆいばかりに磨き上げられて鎮座していた。
排気量が2/3ほどに圧縮され、逆にトルク、馬力とも強化されたという低燃費のエンジンが搭載された新戦略車種であるが、「試乗していきませんか」との誘いには乗れなかった。
買い換えへの衝動を留めるのは困難とも思えたからだ。
各メーカー、地球温暖化への対策として様々な方策を講じている。その最先端の1つはトヨタのハイブリットシステムだろうが、日本では人気のないディーゼルエンジンの低燃費対策も欧州では根強い人気がある。
レシプロエンジンの低燃費化は技術的にはまだまだ可能性があるとして、これを主たる戦略としてとり続けるメーカーもある。
生き残りを賭けてメーカーの組んずほぐれつの合従連衡もほぼピークを過ぎた感じもあるが、アジアでの乗用車メーカーの台頭を横目で見ながら、まだまだ今後も世界戦略における方向性の見定めの困難さは続いていくことだろう。
一人勝ちのトヨタでさえレクサス戦略の低迷の中、今後も同じ地平に安住できるかは分かったものではない。
とりあえずボクは低燃費車の買い換えなどは資金面からして望めない以上、できるだけ車両の活用を低減し、徒歩で、公共交通機関で、自転車で、と他の移動方法を積極的に活用して、地球温暖化の促進に荷担することを少しでも減らしていく方向で考えていこう。
ディラーからは最寄りの駅まで送ってもらい、久々に県庁所在地まで足を向け、所用やら、買い物で時間を費やしたが、途中時間つぶしに入ったスターバックスコーヒーでiBookを起動したところ、オヤ?無線LANの端末が親機を感知。ちょっとびっくり。
cross店員に尋ねるも、この店舗ではネット接続サービスは提供されていないという???。
このCROSSというのはどこの無線LANサービスのこと?
しかし残念ながら、親機、子機間の無線交信は強力にできているものの(無線モニターが示している)、認証が取れない(こっちは相手先がどこかも分からず、認証されようがない)ので、煩わしさもありAirMacを終了手続きをして、この文章作成に入った。
以前、確かにこの店舗ではなかったが、他のスターバックスコーヒーの店舗ではYahoo.BBのモバイル無線LANのサービス(無料)があり、数回試しに利用したことがあった。現在このサービスは終了のはず。
不思議な体験だ。帰宅してこのCROSSなるものの正体を確かめようとするも、ネットからは適切な情報は得られず。
前回のエントリでもスターバックスコーヒーについて触れたが、ボクは利用はできるだけ控えようと心掛けている積もりだが、最大の店舗展開ともなれば、ついついその味の好みと、居心地の良さで、抑制のタガがはずれてしまう。
(実際、喫茶店を探そうとしても、地方都市では今や完璧に淘汰され、なかなか良い喫茶店を探すのは難しい)
何故抑制するのかと言えば、はやりコーヒーショップとはいえグローバリズムの象徴の1つであるからなのだが、こうした意識をどのように自覚的に制するのかは、全く不如意でだらしない。全くスタバから見透かされてしまっているようだ。
文庫本を開き、Macを叩いたりしていると、女性店員がサービス盆にコーヒーサーバーとレモンケーキを載せやってきてマニュアルのものなのかどうかは知らないが、爽やかな笑顔で言ってくれた。「新しく用意されたブレックファーストブレンドというコーヒー豆のものですが、一杯如何ですか。このレモンケーキにとても合います」
断る必要もないので、紙のデミタスカップに入れたコーヒーと小さく刻んだケーキを恭しく頂戴してしまったのだ。
さすがにこの時ばかりは「あのぅ、紙のカップではなく、磁器のマグカップで頂くわけにはいきませんか」とは言えない意気地無しだった。
普段はエスプレッソのドピオの一点張りで、デミタスカップに入れていただくのには、十分理由がある。
世界的にも、このスターバックスコーヒーのサービスに於ける紙カップ、プラスティックカップは使わないように、という運動も知っているし、可能な限りゴミになるようなものは出したくないからね。
意気地無しのボクだが、少しは美学が残っている。
スターバックスの環境への取り組み(CSR)
■ FoE Japan くらしとまちづくりプログラム/スターバックスさん、おいしいコーヒーを使い捨て容器に入れないで!

春爛漫の東海道

浜名湖
花吹雪舞う中、東名高速を一路西へ。好天に恵まれ快適なドライブ。とは言ってもトラックでの納品行とあっては、周りの華やかな行楽客には溶け込むことのできないやや緊張を伴っての旅路。
昨日は小雨混じりの生憎の天気であったので、積み込みも今朝になってからというあわただしい日程だったが、予報通りの好天でありがたかった。
当地でのソメイヨシノの開花は10日ほど前のことになるが、往路至る所で今が盛りと咲き誇り、ドライバーの眼を楽しませてくれていた。
さしたる所用があるわけでもないのに、途中浜名湖サービスエリアに立ち寄り、浜名湖を遠景に取り込み、ポケットに忍ばせたコンパクトデジカメ(コンデジ、とか言うの?)で、撮影を試みる。
少し緊張を解き、周りの空気に合わせ、惚けるのも悪くない。
このサービスエリアは規模が大きい。最近ではスターバックスコーヒーも進出し、終日賑わっている。地方から遠出の一見の客からは「ほぅ、これがあのスタバかい」などと喜ばれているのだろう。
‥‥、
無事、納品も終え、夜も更けての帰還となったが、日曜の夜だというのに、東名高速上り線は異様な混雑でとても疲れた。
数ヶ月にわたる製作によるかなりまとまったボリュームでの納品であったので、これらの仕事を終えた解放感がかろうじて2時間の走行を助けてくれたように思う。
画像下は納品の1つ。
いずれまた、仕様を含めきちんとアップしたいと思う。
ソファ

木工家具制作におけるサンディング (その7)

サンディングバナー
スピンドルサンダー
スピンドルサンダーとは垂直に固定された電動機の軸(スピンドル)の延長部分に様々な径の筒状のスピンドルを連結させ、これにエンドレスのサンディングペーパーを巻き付けたものである。
これを高速回転させ、被加工材を手動にて押しつけて研削する。
スピンドルサンダーの普及はどの程度なのかは不明なるも、簡単な構造の機械ではあるが設備されていないと良い研削作業はできないのではないだろうか。
椅子などのいわゆる曲モノ(クセモノ)を対象とせず、例えハコモノ専門の業種であっても幕板などの成形部位の研削などにも有力な機械だ。
いくつか種類があるので、それぞれ紹介する。
3、(a) エアスピンドルサンダー
スピンドルサンダーの筒体は様々な素材のものがある。
スポンジ、フェルト、ゴムなど。それぞれ被研削曲面へのなじみを良くするため柔軟な素材が用いられる。
このうちエアスピンドルサンダーというのは中空のゴム袋、つまりタイヤ状のものに適切な圧力でエアを充填し、これにエンドレスのサンドペーパーを装填したものだ。
エアスピンドルサンダーうちにあるのは100φ、200wのサイズのものだが、このサイズは様々なものがあるだろう。
説明するまでもなく曲面形状の部位を研削するものだ。
椅子の脚部、笠木、帯など様々な2次曲面に有用。
当然にも研削可能最小Rは筒の径に規定される。
うちの曲面加工工程を簡単に示すと‥‥、
型板作り → 材料へのスミ付け → 帯ノコでのaboutな切削 → 縦軸面取り盤(あるいはヘビーデユーティールーター)での成形切削 → エアスピンドルサンダーでの研削、となる。
材種により、あるいは高品位な精度が要求される場合には、サンダーの手前に鉋掛けを入れることも多い。
しかし良く研磨されたカッターを取り付けた縦軸面取り盤の曲面切削加工であれば、かなりの程度に逆目も止まり、ナイフマークも極小で済ませることが出来、そのままサンディングに移ることは可能だ。
番手は#180ぐらいから始めて、塗装システムにもよるが一般的には#320あるいは#400ぐらいで良いだろう。

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松材とのお付き合い

ここ数日、工房内は松ヤニの臭いが漂っている。
以前記述した、ある顧客宅の建徳解体材からの木取りによる家具制作をしているからだ。
この臭いは決して嫌なものではないし、むしろ日本で古来から最も広く使われてきた材種の1つであれば、愛おしささえ感じる。
普段アメリカ材などに現を抜かしている身からすれば、せいぜい罪滅ぼしの意味も込めて、ありがたく仕事をさせていただこう。
木工をされる方であればどなたも周知のことながら、木材は広葉樹(被子植物)、針葉樹(裸子植物)という2つの種類に区分されるが、その切削、研削などの加工における感触というものは全く異なる。
独立経営し始めた頃、世話になっている製材屋からの依頼で土佐杉の大きな1枚板(60×900×1,800)の座卓を十数台製作したことなどもあったので、針葉樹の仕事は経験がないわけではない。
しかし久々に針葉樹との格闘は針葉樹固有の困難性とともに冒頭述べたようなある種の快楽とがない交ぜになったボクにとっては稀少な経験ではあるだろう。
困難性という言い方はあまり正しくは無いかな。広葉樹との違いから求められる固有の感性と言うべきか。
何よりも鉋掛けにおける切削のテクニックが異なる。
良質な檜などであれば、こんなにも鉋掛けは楽しいのか、と思われるほどスイスイと良い鉋屑が排出されるだろうが、ひねくれた、節だらけの赤松となるとそんなに簡単はいかない。
針葉樹全般に言えることであるが、春目と冬目(春材vs秋材、あるいは春材vs晩材などとも称する)の堅さが大きく違ってくるので、鉋の刃は常に最良の状態に維持されねば具合が悪い。
本来針葉樹と、広葉樹とでは鉋の刃の仕込み勾配も刃先角度も違ってくるのだが、ボクは残念ながら針葉樹専用に準備はしていない。
土佐杉の座卓を作っていた時に直径が1,2mを越える杉の輪切りを持ち込まれ、これをテーブルにしてくれと言われ、安請け合いしたことがあったが、あれは最悪の契約だった。二度と受けるものではない。
無知を晒すような話であるが、杉材の木口の切削が如何にやっかいか。これを直径1.2mの面積を平滑に削り上げるのである。
ボクは無謀にも手鉋2丁でやり遂げましたよ。
その間、削っては研ぎ、削っては研ぎ、ついには鉋の裏が無くなり、裏打ち、裏出し、削っては研ぎ‥‥。
つまり、晩材の木口はめちゃくちゃ堅いのに比し、春材はぼそぼそに柔らかい。これが数mm置きに配列されている年輪を、シャープに削り上げるには完璧な鉋の仕込み、研ぎ上げが求められる。
もう2度とするもんじゃありません。
身体はバキバキ。それまで肩こりなど縁が無かったが、さすがにこの時ばかりはその辛さを知りました。
この話を親方筋にしたら笑われました。オマエ、バカだね。鉋などでやろうとするのが大間違い。
これが広葉樹であればそれほどの苦労はしなかっただろう。春材と晩材との細胞の堅さのあまりの差異ゆえのものだった。
次に困るのは、松材の場合、ヤニだ。使う機械という機械にヤニがこびりつき、その処置がやっかい。シンナー、アセトンで拭き取らねばならない。(プレナーの送りも調子が悪くなっちゃった)
しかしそうしたやっかいな木ではあるけれども、松材の持つ明瞭な木目、力強い木目、削り上げられたツヤ(サンディングなどしたくないほどの)などに他の樹木にはない固有の魅力があることは認めざるを得ないのだ。
この後、同じ解体材で水屋、座卓、他いくつかの調度品を作る予定なので、せいぜい仲良くお付き合いさせていただこう。
さすれば、近くの大工の棟梁のところに行って、松材を削り上げる鉋の仕込みについて教えを請いにいかねばならないかな。この歳になって今さらだけれどね、ははは。

日本のデザイン ━「21_21 DESIGN SIGHT」の目指すもの

さる3月30日に六本木に新しいランドマークが出現した。
「東京ミッドタウン」
「ザ・リッツ・カールトン東京」も「サントリー美術館」も興味があるが、ここはやはり「21_21 DESIGN SIGHT」に注目したい。
まだ訪ねてはいないが、たまたま視たNHK番組《クローズアップ現代「“デザインの力”が世界を制す〜問われる日本の戦略〜」》では、
この「21_21 DESIGN SIGHT」の企みの中心的デザイナー、三宅一生氏深澤直人氏の2人が国谷裕子さんのインタビューを受ける形で、この新たな企画について語ってくれていた。
個人的にもこの2人の仕事へは敬意を表しているので、興味深く視聴させていただいた。
(三宅一生氏のプリーツはすごく斬新的な服飾デザインとして評価したいし、ボクのケイタイ〔au:INFOBAR〕は深澤直人氏のデザインによるものだ)
インタビューの前段として、Apple社の iPod 、イケヤの世界的展開のインテリア家具を取り上げ、これらがヒットしている最大の要因がデザインにあることを明かす。また英国では国家的プロジェクトとしてデザイン教育に取り組んでいることを示す。
次にこうした海外企業などのデザインにおける世界的戦略の中で、果たして日本の現状はどうか、という視点からその課題を探る、というものだった。
三宅一生氏は服飾デザインという本業では第一線を退き、それらは若いデザインナーに担当させ、こうしたパブリックなプロジェクトにこれからの人生を捧げようという意欲を感じた。(本来であれば国家的プロジェクトとして取り組むべき課題なのかもしれないが、そんなことを言っていたって始まらないから‥‥‥)
一方深澤直人氏によれば
〈デザインというのは、それを使う人に、前提を説明せずに、「こんな感じですよね」と言ったときに「はい、そうです」というやりとりが成立すれば良い。受け手側が持っていたマインドをたまたま私たちが職能として具体化するということ〉という。
全くその通りだよね。平明で分かりやすい。
これはこの人の言語感覚というものが造形センスと同じなんだな、とあらためて好感を持つことができた。
こうした有能なデザイナーによる共同のプロジェクトは、普通一般にクライアントの依頼を受けて仕事のチャンスを得ると言うものではないパブリックな試みとして、本人達はもとより多くの関心のある人々を巻き込んで、デザインというものをあらためて定義づけていく意味のあるものとして期待したいと思う。
三宅一生氏が語っているように、日本には古来から、生活レベルで美しいものを愛で、楽しむという文化があったし、もの作りの伝統が豊だ。70年代の工業デザインは世界的にも影響を与えていた。
今は少し元気が無いようだけれど、若い才能が羽ばたきつつあるのは確かなこと。
問題は日本というマーケットの特殊性(自国の狭いマーケットに安住してしまいがち)を打破して、如何に世界性を獲得していくのかということ。(昔はそうした特殊性の中で十分やってこれたが、現在ー未来はそのような閉鎖的視野では立ちゆかない)
近く上京する予定は無いが、機会を見出し、「21_21 DESIGN SIGHT」にはぜひ訪ねてみよう。
以前、このBlog(国立新美術館・ポンピドー・センター所蔵作品展を観て)で「国立新美術館」を取り上げ、「国立美術館」を謳っていながら何故日本のデザイナーによる調度品を使わないのか、と訝ってみたのだったが、日本のデザイナーらにとって屈辱的とも言える日本デザインの象徴的状況を表しているものと見做せば、意味もあると言うことになろうか。

カタクリの群生

かたくり3
暦も替わり、当地では水銀柱も27℃にも上がり、初夏の陽気。
仕事のめどもつき、暖かさに誘われてカメラを担いで出向いたのは近隣の公園に群生しているカタクリのお花畑。

もののふの 八十をとめらが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花

大伴家持 / 万葉集

カタクリは、山地や丘陵に自生する多年草。6〜7年たってやっと二枚葉の中から花茎が出てきて先端に一個の花を付ける。必ず下向きに咲く。
カタクリの名称は、地中20cmほどの深さに付く細長いラッキョウ形をした鱗茎が良質なでんぷんが含まれ、採取されたところから。(現在はじゃがいも、さつまいも、から)
画像はいずれもクリック拡大
かたくり2
カタクリ1

楢の家具調仏壇の品格とは

仏壇aこのBlogで作品を紹介する主たる意図は、こんなもの作ってます、という表明でしかなく、決して営業を念頭に置いたものではない。
もし営業をモチベーションとする記述であれば、つまらない内容に堕することになり、結果読者は激減していくことだろう。
しかしたまには購買意欲を掻き立ててくれるものもあるようだ。
昨年夏頃に小降りの家具調仏壇をアップしたところ、さっそく相互linkさせていただいているギャラリー、CRAFT藍さんから問い合わせがあり、昨年末に話が具体化し、先頃これが完成して納品と相成った。
顧客からの条件はサイズ、内部構成、材質(楢材)、塗装(オイルフィニッシュ)。
要望のサイズは高さにして1mほどのものであったが、あまりデコラティブなものではなく、シンプルに、素材感のあるもので、端正に作りたいと考えたのだが。

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高齢化と生産性の関係

このところ納期が間近に迫った仕事が重なり、大童の日々が続いている。
いささか疲労がたまり身体の“切れ”も良くないようだ。
ボクは仕事は早いほうだと考えているが、若い頃と較べると少しパワーが減退しつつあるのは間違いないだろう。
昔は連日深夜までの業務が続くことも希ではなかったが、今ではそうした無茶はしなくなった。
一定のボリュームのある天板の鉋掛けを何枚も何枚も掛け続け、途中鉋の刃の“裏”が無くなり、裏打ち、裏だしをしながら夢中になって掛け続けたなどということも幾たびあったことか。
そうした無茶はしなくなった替わり、失敗も少なくなり、仕事の精度も高まり、品質は高まってきたことも確かなこと。
先日「障害保険」の更新があった。
100万円、5年満期の貯蓄型傷害保険に加入しているのだが、昔は怪我も多く、その度入院1万円/日、通院5千円/日、の保険を支給され、さらに更新時には数十万円の配当金があった。それがこの5年間、全く怪我もせず、支給など受けていないのに、配当どころか、新たに数万円の追加保険金を納めねばダメになってしまった。
クルマの任意保険同様、外資系の保険に切り替えようとかと真剣に考えてしまったが、保険屋の兄ちゃんとの長年の付き合い上、目をつぶって更新することにした。
悔しいが傷害保険を支給されないのは悪いことではない。
こんなボクでも学習能力はあるのか、怪我もしなくなったし、高精度な加工も出来るようになった。
部品例えば画像のような框モノの加工でも高精度になっているだろうし、無駄な動きもなくなり、淡々とした進捗の中にもここ一番のところではしっかりつぼを押さえつつ進める。
結果、この“面腰”の仕口でも組めば留め部分がビシッと決まり、寸分の隙もなければ見付部分メチも極小に留まる。その後の仕上げも無駄なくラクに進む。
人間、老化というものの侵犯が無ければ、どんどん技量は上達し、仕事も早く生産性も高まっていくのだろうけど、残念ながら思いとは裏腹に老化は徐々に身体を蝕む始めるのだろう。
画像下は仕上がり目近のAVコンソール(TVボード)。
中央はAV機器収納部分(下部はAV機器を載せるスライド部分)。左右はCD(DVD)収納抽斗。
こういうAV機器収納については熱対策が肝要なので、構造としては框組みが良い。背板は基本的には框組に無垢の羽目板がキホンだが、AV機器部分はパンチングの合板にする。上部天板にも熱逃がしの孔が必要だ。スライド部分はランバーコアを用いる。
AVボード