工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

カップボードはブラックウォールナットで

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スタジオでの撮影でいきたいところだが、汚い工場でのものになっちゃった。
せめて日が落ちてからというわけで、夕食後三脚とストロボをい担いで工場に入り、数10枚のシャッターを切る。
光学フィルムではそうもいかないが、デジカメだとなんぼでもいける。
ストロボ撮影では調子を掴むまでが難しいからね。

簡易なディフューザーでのバウンスと、2灯ワイアレススレーブの設定でいけば、簡単に“それなり”の結果が得られる。
調子の難しさとは、マスター側発光とのバランスだが、経験を積むことで少しは上達するかな?

ところでこれらは震災前に納品する予定のものだったが、納品先は被災地の1つ、岩手県下ということで先延ばしされていた。

普段利用している運送屋はトラックを失うなど深刻なダメージを受けたようで、代わりの適切な業者を探すのはなかなか困難だった。
それも何とかクリアさせ、やっと落ち着き先へと旅立たせることができる。

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このブラックウォールナットのカップボードは工房悠設立後間もなくデザインされたもので、思い入れも浅からぬものがある。
最初に買い上げてくれた客は大手金属産業の研究者で、米国帰りの若いエンジニアだった。

帰国の際、持ち帰ってきたカップボードが余りにも大きすぎ処分することに。
それに代わるものとして、彼の国で慣れ親しんできたウォールナットの高品質なものを探していたという話しだった。
アメリカ暮らしで身についた、暮らしの中の家具の重要さを良く知る人だった。

これは1,900mmを超える高さがあるが1本立ち。
柱は通したかったからね。
そのせいで運送屋にはさんざん嫌われてしまうわけだが。

上部の帆立はガラスで構成されているので、いわゆるキュリオボード様のもの。

Topライト付。
光源はLEDといきたいところだが、色がどうも気に喰わず、やはりハロゲンでいく。
したがって棚板もガラス。
ただし、木枠に落とし込む。
ガラスのエッジを見せるのは安っぽくなるからね。

中央はいつもは120深さほどの抽斗で構成するのだが、今回はトレーを置いた。
大理石を納めることでちょっとユニークになったかな。

背板は無垢板を框で組んで嵌め込む。

顧客はさぞ首を長くして待ち望んでいることだろう。
被災を超え、新たな希望をブラックウォールナットのいくつかの家具とともに育てていってくれるはず。
自然災害とはいえ、強いられた苦難を超えリスタートしようという時、これらの新たな家具も随伴させてもらうというのは、シアワセな家具たちだと思う。

hr

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  • 工房「悠」の真骨頂ですね。
    下手な食器は入れられないですね。
    スタジオに持ち込むのも大変なので、工場の隅に
    スタジオ作られたらいかがですか?
    搬入には立ち会うのですか?

    • “真骨頂”であるかはともかくも、注文主は弊Webサイト[Gallery]にあるカップボードを気に言ってくれての制作依頼であることも確かのようですね。

      奥様はお茶もなさる方ですが、洋食器にもこだわりがあるようです。

      > スタジオ作られたらいかがですか
      それが望ましいですが、うちの場合は手狭で無理ですね。

      >搬入には立ち会う?
      新幹線も全線開通しましたので、出向くことにしています。
      また納品後、“それなりの”撮影も試みたいですね。

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