工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

座枠を加工する

座布団椅子
「座布団椅子」に関わる加工を淡々と進めているのだが、今日は座板の部分。
シナの木の格子状の枠組み。
座布団が乗っかる部分だが、座に一般に良く用いられる合板で構成するのではなく、通気性を良くしつつ、かつ美しく組み上げるとなると、こうした格子状の座は最良の方法の1つだと思う。
しかし、たかが隠れてしまう座の部分であるのにも関わらず、加工はやっかいで手間がかかる。
・1つの枠に20のホゾ穴を開け、
・格子の桟を木取り、
・ホゾを付け、
・相欠きに加工し、
・面取りをし、
・組み上げ、
・メチ払いをして、
・サンディング
・やっと塗装
座膨大な作業ではある。
使われる材料も格子状とは言え、1枚の板より低減されるということもない(相欠きにおけるロス)。
実は一時期、これを取りやめ、枠の内部を1枚の鏡板で構成したことがあったが顧客から不評を買ってしまい、元に戻し今日に至っている。
でもうちはホゾ取り盤もあるし、職人としての手の早さは熟練工としてのそれで、かなりの作業効率で進めている積もりだ。
手早く、かつ合理的に制作するにはいくつものポイントがある。
座の部品まず設計における合理性の追求。
・この枠は縦と横の長さが異なる。でも格子そのものは同一。枠のサイズを替えることで対応させる。
・面処理は外枠を除いて、全て面チリ。
(これはメチ払いを不要とさせ、かつ面処理が簡便で、また美しく納まる)
次に加工のキモだが

  • ホゾ穴は全て芯/芯でいく。面チリで、かつ相欠きでいくためにはホゾ位置をオフセットにしなければならないが、これは穴の方ではなく、ホゾを散らすことで対応させる(ホゾ取り盤のハンドル操作)
  • ホゾ穴は外枠部分はタイトに、格子部分はやや逃げ気味に開ける
    (何でもかんでも、きつくやれば良いものではない。そうした追求は本来接合されるべきところが全体のタイトさのために接合不良となりがちで良くない)
    格子部分をやや逃げ気味にすることでスムースにかつしっかりと組むことができる。(ただ厚み方向は弛めないこと)
    何事もメリハリ。
  • 相欠きは緩からず、きつからず。
    要するに、この座の場合は40mm幅だが、カッターの幅を40mmとし、格子幅はジャスト40mmとする、と言ったように(こうしたプロダクトとしての思考は大切。いちいち現物合わせなどしていると、ろくなことはない)
    これにより、ボンドを塗布し、ショックレスハンマーなどでビシッと決めれば、バシッと決まるもの。圧締などしなくても抜けても来ない。
  • 40mmのカッターもプロであれば当然のことだが、アジャストカッター、21~41mmのものを使い、間座(スペーサー)に19mmを挟めばジャスト40mm。(画像)
    この際の昇降盤の切削作業も、40mm,4本まとめて行うなどの合理性を追求すること。

カッター

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外は雨が強くなってきている。
この週末、信州松本では「松本クラフトフェア」が開催されているはずだが、彼の地でも雨に見舞われているのだろうか。
屋外での展示活動なので、大層お困りのことだろう。せめて明日は早めに上がってもらうことを願っておこう。

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  • 勉強になります。
    本体はブラックウォールナット、ラダーは鬼クルミ、座がシナですね。
    ウォールナットとクルミ、やはり雰囲気が違うようです。
    シナはこういう所に出番があるのですね。
    座布団、新しい縫製先は見つかりましたか?
    同じ物と大量に、はホゾ取り盤の出番でしょうか。

  • acanthogobiusさん、木製椅子の材種というものは、部位によって様々に使い分けられるということは比較的一般に行われていますね。
    座板は以前は桂(カツラ)で作っていました、現在はシナですが綺麗ですし、加工もイージー、
    ホゾ取り盤ですが、量産に向いているということもありますが、先に紹介したラダーなど曲面を持ったパーツのホゾなどにはカッターブロックを持つ4軸での一気の加工が可能で、威力を発揮してくれます。(通常の昇降盤での作業ではとても大変)

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