工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

《Shaper Origin》の驚き

2017年が明けましたね。
本年もこのBlogの運用を通し、日々の活動を記したり、思考のプロセスを残したり、さらには木工関連の情報を共有したりと、これまで同様に活用していこうと思います。

どうぞ本年もヨロシクお付き合いください。
そして遠慮なくコメントを入れてください。

コメント投稿ですが、これまで過去に1度でも投稿したことがあれば、[submit]ボタンを押せば、そのままダイレクトに反映し、ただちに表示されます。

初めての場合は、管理者(私)による認証のプロセスを経てのものになりますが、Macから離れている時間帯は無理としても、数時間後、あるいは数日後には反映するはずです。

さて、本年初のエントリですので、少し明るい話題をと考えてみましたが、なかなか見いだせないというのが正直なところですが、ただ1つ、近未来(数ヶ月後という程度の)にリリースされそうなマシンがありますので、これを紹介させていただきましょう。

過去、本BlogではFestool社のDomino、およびハンドルーター(OF 1400EQ)など、いくつかのマシンを国内のこうしたインターネット世界では最初に紹介してきたわけですが、今回はどうなのでしょう。
今現在、国内の木工関連のサイトからの発信はなさそうですが、ご覧になった方はいらっしゃいますか?

しかし、米国の木工関連ツールの販売店サイトなどには昨年6月頃から関連記事が上がっていましたので、知っていらっしゃる方は少なく無いかも知れません。

私も忙しさの余り、あまり深く追求することなく推移し、どなたかが発信されるのを待っていたわけですが、発売まで時間切れになりそうなこの時期、やや中途半端な記事にならざるをえないという限定的な条件をお許し頂いた上で、触れて見たいと思います。

さっそく紹介しましょう。
《Shaper Origin》というマシンです。

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ハシバミの効用と、視覚的美質と、経年変化への怖れ

ハシバミとは

ハシバミ(端嵌?orハシバメ?)は無垢材を扱う木工の仕事においては比較的一般に広く用いられる手法の1つです。

私のハシバミ(裏側)

私のハシバミ(裏側)

無垢材は置かれる環境(湿度=大気中の水分量)の状況変化により、間違いなく反ろうとします。
木は伐採してしまえば死んだも同然と思いがちですが、さにあらず、いくらでも動こうとします。
樹種により多少の差はあるとしても、あるいは同種の木であってもそれぞれ固有の条件で反ってしまうものなのです。

家具などに木部を取り入れる場合、このような特性をそのままにしておくわけにはいきませんので、何らかの方法で反りを止めねばなりません。

これには、人々が古来から編み出してきたいくつかの手法があるわけですが、表題のハシバミもその代表的な手法の1つというわけです。


私のハシバミ(表側)

私のハシバミ(表側)


木の物理的特性として、反るのは繊維方向と直交する側、つまり木口側になるので、ここに反りを止めるための板を嵌め込む手法がハシバミです。

繊維方向と直交する側に、無視できるほど反ることの無い繊維方向の部材を結合させ、全体の反りを止めようという手法です。
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残念なミニサンダー購入(RYOBI S-555M)

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はじめに

サンディングは木工作業では欠かせない工程です。
加工、仕上げ工程の最後の段階、つまり塗装を施す前段階である〈素地調整〉は必須の工程で、一般にはサンディングマシーンにより行われます。

広い板面をサンディングする場合にはワイドベルトサンダーをはじめ、様々な機械設備がこれに対応するでしょう。

うちの場合、非力なものではありますが、三点ベルトサンダーで行います。

広い板面や、ベルトサンダーの定盤に適切に置かれる形状のものであればこれらで良いのですが、複雑な形状の板面などで、被研磨面が水平に維持できないような場合には、ポータブルのサンダーで補助的に行わなければなりません。

こうした領域で活躍してくれるのがミニサンダーという小型のサンダーですね。

通常うちでは2台のミニサンダ−を併用します。
番手を2種必要とするからです。

#240と#320、あるいは#180と#320といったように(仕上げ段階において、きちんと鉋掛けされていることが前提です)。
いちいちサンドペーパーの番手を取り替えて行うというのも面倒なことですから。

今回、これまで複数台使ってきたミニサンダーのうち、30年使い込んできたRYOBIのものを更新したのですが、ここで機種選択を誤りました。

マシン仕様の確認の不十分さがもたらしたもので、ひとえに私自身の迂闊さによるものです。

ただ、自らの失敗談をあえてこうした記事として取り上る無粋さというものは、多少はミニサンダーへの認識を広く共有する意味合いもあるだろうと考えてのものでありご理解ください。
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吟遊詩人・レナード・コーエンという難問(追悼にかえて)

2008 concert tourから

2008 concert tourから CC by Rama

あまりに突然の訃報・享年82

この11月7日、カナダ生まれ、LA在住の吟遊詩人・レナード・コーエンが亡くなった。

11日、Twitterで訃報を知った時の衝撃は強く、信じられず誤報だろうとさえ思った。

なぜなら、数年前には、欧州を中心に400個所でのライブコンサートを精力的に展開していたし、
斃れる10日ほど前にも、新譜(『You want it Darker』(最後段にクリップ))をリリースし、衰えぬ創作意欲を見せてくれていたし、またこの新譜リリースにあたってのインタビューではボブ・ディランのノーベル文学賞受賞への讃辞を語り、そこでは「死ぬ準備はできているが、ボクは永遠に生きるつもりだ」「120歳まで生きるよ(笑)」と、柔らかな笑みを浮かべ静かに語ってくれていたばかりだったからね(RO69the Guardian)。

「永遠に生きるつもり」とは根拠の無い生への意欲の表明でしかないとしても、「死ぬ準備はできている」( ‘I am ready to die’ I’m ready my Lord.)との前言を飜し、生きる意欲を掻き立てたのは彼が禅僧としての修行の日々を積んできたことにも、その抗いの背景を見つけることができるかもしれない。

彼が師事していた禅僧の老師(佐々木承周)は120まで生きるとされていた(実際は107歳で没している)。

死はいつも突然だ。
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〈日高工房オープンワークショップ〉への参加から

日高さんの木の器と奥様の手料理

日高さんの木の器と奥様の手料理

11月最初の週末、信州、佐久の山里・香坂にある日高英夫氏の工房において、阿部蔵之氏主宰による【日高工房ワークショップ 「 スーパー座刳り装置の公開・解明 」- 木の大学講座イクスカーション2016】が開催され、参加させていただきました。

日高氏は松本クラフトフェアの第1回めから毎年のように出展していたシェーカーの優れた作り手であり、多くの使い手を魅了してきたその作品の質において揺るがない評価を確かなものとしてきた木工家でした。

残念ながら今年2月に病に斃れ、帰らぬ人と為り、主のいない工房と有り余る材木が遺されることになってしまったのでした。

この日高氏と生前から親しく交流していた阿部蔵之氏と、ご遺族・日高氏の夫人である雅恵さんと協議の上、遺された工房を開放し、若い木工家らに日高氏の制作の背景を伝え、さらには使い手を失ってしまった木工機械と道具、そして多くの用材を引き継いでもらうことを通し、日高氏の業績を追悼しようと、この【日高工房ワークショップ 「 スーパー座刳り装置の公開・解明 」- 木の大学講座イクスカーション2016】が企画されたのでした。

松本クラフトフェアの初回(1985年)がスタートする、その年に松本に移住した私でしたが、日高氏とはクラフトフェアで2.3言葉を交わす程度で、親しくしていたわけでも無く、木工基礎を学んだ松本技専(職業訓練校)では2年先輩にあたる親しさからも、制作の背景を知りたい欲望もありましたし、一部の木工機械のモーターを三相200vから、単相100vに換装する作業を請け負うこととなり、当地の2人の若い木工家、および知人木工家2人のつごう4名の木工家とともに参加することに。
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集塵ダクト工事(追補)ブラストゲートなど

設置時、全ての端末に取り付けたブラストゲートですが、125φのブラストゲートが足りず、一部ゲート無しでそのまま配管していたのでしたが、やはり状況によっては風力が削がれてしまいそうで導入することにしました。

読者のacanthogobiusさんからもサジェスチョンいただいていたところですが、瑞東産業製のブラストゲート(「集塵用ダンパー」という名称で「大源商会」が販売)は5,000円を超える価格で腰が引けてしまっていたところ、国内でももっと廉価な物があることがわかり、導入することに。

末松工業株式会社製、スカイダンパー

末松工業株式会社製、スカイダンパー

■ 末松工業株式会社製、スカイダンパー:125φ:2.910円(わずかに2,000円の差とは言え6掛けですので、この差額は小さくない)

ネット上ではあまり話題に上がるところではなく、やや不安もありましたがこの程度の板金製品にさほどの品質差があるとも思えず発注。

結果、選択の誤りはありませんでした。完璧な製品です。
たぶん、「瑞東産業製」のものと遜色ないでしょう。
亜鉛メッキ鉄製、1.5tの厚みがあり、剛性もしっかりしています。

「瑞東産業製」の画像と見較べて見ても、瓜二つ。
もしかすると、同一のものでどちらかがOEMなのかも知れません(画像上だけの判断で詳細は不明)。
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集塵ダクト工事

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はじめに

集塵ダクトの施工を試みましたので、その覚え書きを。

恥ずかしながら旧工房では集塵ダクトは無く、マシンに125φ、100φ、2種のホースをおのおの繋ぎ、集塵していました。

新たな工房ではこの集塵システムは必須の要件でしたので、まずは機械屋へ施工の依頼をしました。
ところが、機械屋推奨の集塵機(バグフィルター方式)本体の価格は予算オーバー。
そこで、中古も出てくるだろうからということで、これが入手できた段階で,ダクト工事も同時に行おうという合意で様子を見ていたわけです。

ところが現在に至るもこの機械は現れず、移転以降、旧工房と同じスタイルで推移していたという情けなさ。

これにはさすがに業を煮やし、ダクト工事だけでも先行して行うことに。
それも、業者依頼ではなく、セルフ施工でっ。

セルフ施工ですが、実は当地域の友人の幾人かはセルフで施工しているという事を知っていたからです。
その多くは小規模なものでしたが、中には大きな作業所全域にダクトを巡らせているなど、かなり本格的なものでした。

そこで具体的に調べれば、資材も手軽に入手できることが確認でき、それではと思い立ち、踏み切ったのでした。

ただ、しょせん素人の戯れ、施工を終わってみれば、さっそくいくつもの反省点が出てくるという始末。
ここでの紹介も意味があるとすれば、他山の石としてのそれでしか無いというものです。

エクスキューズはここまでとし、さっそく施工内容に入っていきます。
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チェリーの仏壇

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私は木工屋ですのでテーブルからキャビネット、椅子など、全般にわたり制作してきましたが、どちらかと言えばややキャビネットメーカーに傾斜していると言えるかも知れませんね。

そんな日常に時折仏壇の制作依頼があります。

桜が散り始める頃、以前より個展などをご覧いただいてきた画家のご婦人から仏壇制作の依頼が飛び込みました。
長期療養中であったご主人を亡くされ、間もなくのお話しでした。

これまでは描かれる絵の額の制作を請けた程度の関係でしたが、こうしてご主人のご位牌が納まる大切なものの制作依頼とあり、少し緊張が走りましたね。

遠方でご活躍されるご子息、娘さんとともに来訪され、ご相談させていただき、設計見積もスムースに運び、49日の法事には間に合いませんでしたが、最優先で制作に励んだものです。
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余談:センチメントな旅・牛窓

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島

牛窓の海、手前は前島、後ろに小豆島、右上に屋島


今回の旅に先立ち、瀨戸内に面した小さな港町、牛窓に1泊した。
ここは芸術祭の催しがあったわけではないが、私個人の感傷的な思いが残る場所で、半世紀を超えての訪問だった。

当時、ゼネコン社員だった父親の仕事に伴い、4年ほどの期間、家族5人がこの牛窓に居留した。

瀨戸内の港町の思い出ははるかかなたではあったが、車で乗り入れれば、当然にも街並みは大きく変貌していたのだが、一歩路地に足を踏み入れればその頃の家並みは残っており、毎日のように駆け抜けた往時の面影を追い、一気にセンチメントな気分に支配されてしまった。

当時この港町は小さな漁港で造船所もいくつかあったが、今は木造の造船所は無く、辺り一帯はヨットハーバーに変わり、ちょっとしたリゾートの港町にイメージを変えていた。

海に目をやれば、確かに数艇のヨットが白い帆を上げプカプカと浮かんでいる。

丘に登れば当時もオリーブ畑が拡がっていたが、これは今も変わらない。
オリーブと言えば小豆島が有名だが、この牛窓でもかなり古くから栽培していた。
ただ今では純然たるオリーブ栽培というよりも観光資源としてのものに転換しているようだった。

当時、3つ年長の兄はオリーブの実を潰し、学帽に塗りつけ、テカらせ、粋がっていたものだ。
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瀨戸内国際芸術祭 2016 Setouchi Triennale 2016

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夏の終わり、妻の瀨戸内の実家への訪問に合わせ「瀨戸内国際芸術祭2016」のいくつかを探訪することになった。

このアートフェス、全国的にどの程度知られているのか分からないし、私自身、今回の帰省がなければさほど関心を持つものではなかっただろう。

そうしたややネガティヴなツアーだったものの、思いの外楽しめたというのが実感。
ただ時間的制約で渡った島は2つだけ。
小豆島とその東隣の豊島。

以下、簡単に書き留めておきたいと思う。
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