Takemitsu Songbook・武満 徹のセンチメンタリズム
秋だから、ということではないのだろうが、3.11からこのかたの、流したいく筋もの涙を拭うための歌も時には必要だ(いや、むしろ哀しみを哀しみとして純化させ、希望へと昇華させるための涙だってあるだろう ‥‥)。
この新しい武満徹ソングブック。7人の素敵な歌手たちが、武満への深いリスペクトを込め、丁寧に、深く、美しく歌いあげてくれている。
ボクにとり武満徹とは世界に轟いた『ノヴェンバー・ステップス』の作曲家である前に、無類の映画好きとして、黒沢映画などに映画音楽を提供した作曲家であり、「三月のうた」、「死んだ男の残したものは」、「MI・YO・TA」などのポピューラーソングの作曲家、というイメージの方がむしろ強い。
無類の映画好きといっても様々で、ボクのように年間20本ほどしか観る機会の無い者だって映画ファンを自称することはできるが、彼の場合は年間200本を超えるときもあったというので、並では無い。
ただ『エル・スール』、『ミツバチのささやき』(いずれもビクトリ・エリセ)や、タルコフスキーに魅入られていたという話しを聞くと、いきなり親近感を持ってしまう。
あぁ、少しは感性、美的基準においてそんな遠くにいる人では無かったんだと思えてきて、ちょっと嬉しくなる(その捉え方の水準においては違ってはいても、だ)。
このアルバムはそうした彼が遺した映画やドラマのための音楽を中心として編まれている。
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