工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

高山から学ぶ

steam wood

曲げ木へ



うちのようなWorkshop的なスタイルでの家具制作を旨とする者にとって、いわゆる産業としてのスケールとクォリティーを獲得している家具関連製造現場を参照するというのは悪いことではない。
制作する対象が例え同じようなものであったとしても、その制作スタイルもプロセスも技法も、様々に異なってくるのだが、しかしボクたちにとってはそれらから多くの示唆を受け、学ぶことも多い。

昨日は縁あって飛騨の家具産業のその一端を垣間見る機会があり参加。
高山市内の大手の家具製造会社、および成形合板、曲げ木加工などを主要業務とする複数の工場を訪問、見学の労を執っていただいた。

高山市内には関連する業界に所属する知人も幾人かいるのだが、こうした産業規模で営むところへの訪問はショールームへの立ち入りを除けばこれまでなかっただけに興味深く拝見させていただく。

多くの点で示唆を受けたり、感心したりと、その期待を裏切らぬ成果があった。
とかく我々小規模で営む木工職人にとって、その制作スタイル、制作技法、工房運営などの基盤というものはどうしても唯我独尊的なものに陥りがちであり、世界大的な市場を相手にし、株主の厳しい監視の目にさらされながらの経営下における商品開発、あるいは生産合理化へのあくなき追求には目を見はるものがある。

ただ今回は東海北陸自動車道が使えて以前よりずいぶんとアクセスが良くなったとはいえ、吹雪の中を片道5時間のコースを日帰り日程で組むという強行軍で、やや時間に追われての見学となり、悔いるものがあり残念ではあった。
せめて温泉に浸かり、飛騨の地酒の新酒を交わし、朴葉ミソでの飛騨牛ステーキでもいただくというゆるりとした時間も用意すべきだった。

さて、家具に少しでも関心のある人には良く知られているように、家具産地としての高山の特質は脚物と言われる分野における製造技法の伝統の蓄積と力量にあるといって良い。
したがって今回もこの分野を特化しての視察となった。

つまりは成形合板の製造加工、あるいは曲げ木と言われる平滑な無垢材を目的とする曲面に曲げていく加工術を主たる対象とするものだったが、その基本的システムの知見はあっても現場で見学することで得られるものは大きかった。

いわゆるテキストとしての知識では得られることのない、家具材の供給力減退という現在的課題、あるいはBRICs諸国の台頭、中国要因という国際経済のドラスチックな変容の下での現場が抱える問題を目の当たりにしながらの説明にはいちいち同意しつつも、その打開へ向けての意欲、木材加工業、家具製造業を愛し、誇りとする経営者たちの前向きな姿勢には心強く感じ入るものでもあった。

新雪

等伯? by iPhone



画像は東海北陸自動車道、庄川付近。

桧、唐松の樹幹の黒の世界に、木々に積もる雪の白さが映え、より輪郭をクリアに見せ独特の美しさを醸していた。
同行したデザイナーのY氏がまるで長谷川等伯の世界だ…、と漏らしていたが、モノトーンの墨絵のように、浮世から隔絶したかのような凛とした静寂が支配する世界に、美しい一幅の画を見せられたようで、それは美しいものだった。

ふぶき

吹雪(ひるぜん)by iPhone



hr

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  • お仕事でしたか。すごい雪ですね~。お気ををつけてご帰還を。
    今日東京は18℃の予想。

    • 慣れない雪道は恐怖すら感じさせます。
      お仕事関連とは言いましても、遊学のようなものですね。
      次回はゆっくりとしたいものです。

  •  おつかれさまでした、こちらは少し雨が雪に変わったかなという程度でした。
     東海北陸道はトンネル〜橋梁〜トンネル、、、の連続で疲れますね、ヨメが富山ですので通りますが、冬は覚悟が要ります。
     いい季節にこちらへお越しの際は是非当方へもお立寄り下さい。

    • たいすけさん、降雪時の高速道路走行はホントに緊張します。
      現有自家用車に切り替えて間もない頃、関ヶ原の雪道でかなりの破損を経験
      https://koubou-yuh.com/blog/?p=1196

      いずれぜひ立ち寄らせていただきたいと思います。
      仏前に座るということが果たせていませんし‥‥。

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