工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ブラックチェリーのエレガントなデスク

Cherry_elegantdesk01

左右に小さな袖を持つ、やや大ぶりのデスクです。(1,630w 790d 710h)
全ての部位を1本の丸太原木から吟味し付くし、贅沢に木取りしたものですので、質感など統一感にあふれた仕上がりになっています。

左右に抽斗の袖をぶら下げ、中央に薄い抽斗を設けたシンプルな構成。
左右の抽斗は内寸は310mmほどと、ほぼ標準的な横幅を確保し、細かな文具を整理できる既製品のトレーがジャストフィットするサイズになっています。

また左右の抽斗は比較的深く設計しましたが、トレーを用い内部を2段に使えるよう左右の側板に細い棚受けを埋め込んであります。

甲板の奥行きは760mmほどありますが、2枚矧ぎの構成。製材された隣り合わせの板を木表で矧いだ構成です。
見え掛かりではその厚みはわずかに12mmしかありませんが、内部にもう15mm入り込んでいて、実際の厚みは27mmです。

引き出し部位も上端にあえて白太を残していますが(左右、中央ともに1枚の板から裁断したもの)、甲板も前後に同じように少し白太を残す木取りにしています。
色調のコントラストでのアクセント効果といった意味合いがあります。
チェリー エレガントデスク2

意匠と構成

脚部は柔らかなテリ脚ですが、少し細めに絞り込むことで、あえて華奢な感じにしました。
構造的な堅牢性には何ら影響はありません。

こうした構成のデスクの場合、背部は左右を1枚の板で通すことで、構造的強度を確保することができますが、前部は左右、中央と切断されてしまいますので構造上不安にならざるを得ませんが、今回の場合、左右の袖の下部棚口と、引き出し前板の後ろに棚口(写真では隠されていますが)を配することで、左右を通して1つに緊結されることになり、より堅牢性を高めています。

同様に脚部の意匠を重視するのであれば、脚部の下のH型の貫は設けたく無いところですが、全体の構造的強度のため、設けざるを得ません。
またこの貫ですが、画像のように前後を円弧状になだらかに大きく角面を取っていますが、これは柔らかなラインを出すための処理ですね。

甲板の納まりですが、前後左右ともに本体の上部棚口に穿った溝に挟み込むように納め、伸縮と反張に対応させています。
ただ間口が長く、中央部の反張への対応では懸念が生じますので、袖部分の仕切り板をそのまま甲板まで延伸させ、これを吸い付き桟として機能させることで、甲板の緊結と反張に対応させています。

抽斗

中央部はユーザーの足の納まりなど考慮し薄くせねばなりませんが、左右の抽斗との関係では、角を90度にカットするのではなく、婉曲に納めるため、45度づつカットした部品を介する構成としました。
これは制作上かなり面倒な加工を強いられもしますが、美の追究のためには厭わず挑むのが心意気というものです。
当然ですが、これら棚口の一連の部品は1本の板から連続した木取りで行っています。

このエッジ部分の緊結ですが、Dominoを活用しています。
まさにこの種の構造のディテールを叶える強力な相棒がDominoという先進的なツールというわけです。

前板、側板の接合仕口は天秤差しです。
私はこの種の仕口を抽斗に用いる事は決して多くはありませんが、きまぐれでやることもあります。

天秤差しの抽斗

ただ一般に見受けられるようなダボテールマシンやハンドルーターなどでの機械加工ではなく、主要部はハンドメイド。
その証拠に天秤のピン部位はわずかに2mmという寸法。
鋸のアサリがちょうど入る程度の極限的なサイズですが、それにより天秤差しの仕口としての機能とともに、意匠としての美麗さが醸されます。

中央部の天秤差しが切れているのは吊り桟の溝のためです。

因みに、この吊り桟ですが、抽斗の奥行き、約430mmをフルに引き出せるよう、側板そのものはさらに150mmほど延伸させた長さにしてあります。

抽手はオリジナルな手作り。濃色のローズウッド製です。

hr

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