工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

講壇、あるいは説教壇(Pulpit)

講壇

教会で牧師が説教するための壇です。
牧師からの依頼で制作しました。

いくつもの意匠を提案させていただき、最終的に残ったのがこれです。
この意匠は必ずしも教会という特異な場における壇というものでもなく、一般的な講演台などにも用いられるデザインかもしれません。

構成と特徴

駆体は凸型の断面を持ち、上部のテーブルトップの部分は〈〉の形に傾斜させた枠が特徴的です。

この凸部分に合わせ、台輪も様式的と言えば良いのか、少しデコラティヴに構成しています。
駆体のボリュームと上部枠部位のボリュームの差があるため、これだけの台輪が必要とされたというところです。
そのため、これ自体、なかなかやっかいな作りではありました。

この講壇ですが、まずは何よりもマホガニーで制作して欲しいとの必須の条件が。
私がホンジョラス産の真正マホガニーを在庫してることを良く知る顧客でもある牧師からの依頼でした。

在庫する限りあるマホガニーの中から、最上品をふんだんに用いたものです。
いずれも矧ぎ無しの1枚板で構成しています。
教会の講壇を なんちゃってマホガニー(アフリカ産など、名称だけはマホガニーを僭称しているものの、その実 似て非なる材種)や、複数枚の矧ぎで構成するなどはもっての他ですから。

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systainer® と マックパック と システムケース と L-Boxx(続

昨年末の記事が途中になっていましたので、続けます。

承前)
電動工具メーカー・BOSCHは日本国内でも古くから市場展開していますので、ユーザーの方も多いのではと思います。
ここ数年、BOSCH製品を購入された方は systainer®、マックパック、システムケース とは異なる筐体に入ってきたよ、という人も多いことでしょう。
そうです。電動工具収納ケースの世界で第四の規格品が展開されています。
L-Boxx〉というシリーズですね。

詳細は不明ですが、独のSortimo という車載関連のメーカーが開発した可搬型の収納ケースです。
この〈L-Boxx〉、電動工具メーカーではBOSCHが先行して採用しているようで、他の工具メーカーがこれに追随採用している様子は今のところ不明です(最下段に収納ケースごとのメーカー対応図表を置きました)。

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迎春

2019. 1. 1

                                                                                                                                                                                   2019年も明けましたが、本Blogをこれまでにも増して、ご愛顧の程、どうぞよろしくお願いいたします。

工房 悠

systainer® と マックパック と システムケース と L-Boxx

sustainer

工房の年末整理を終えたところかもしれませんが、今回は電動工具などの収納整理に関わる四題噺でも…。

既にこのBlogではFestool社が先行的に採用してきたsystainer®という規格品の収納Boxについては何度か触れてきたところです。

さて、これと互換性があると思われる収納Boxが国内でも販売され始めていることにお気づきお方も多いかもしれませんね。

マキタや日立工機(おっと、現在はこの社名は無くなり、本年8月から「工機ホールディングス株式会社」[HiKOKI] という名称に変更されてますね)などの工具を購入したところ、この収納Boxに納められていることに気付かれた方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、名称はsystainer®ではなく、〈マックパック〉(マキタ)あるいは〈システムケース〉(HiKOKI)という名称で・・・。
(HiKOKIの場合、海外においては〈STACKABLE CASE SYSTEM〉、あるいは〈HIT-System Case〉とも呼称されているようですが、いずれも製品としては同一のものと考えられます。国によって、あるいは時代の変遷により呼称も違っているのでしょうか)

余談ですが、Link先のWebサイトをご覧いただければお分かりのように、HITACHI という名称は欧米においても強いブランドイメージがありながら、本家本元の日本ではHITACHIの名称は消え去り、HiKOKI (ハイコーキ)などと良く分からない社名に変更されるというのは、いちユーザーとしても残念なことではあります。
この新しい〈工機ホールディングス株式会社〉という会社ですが、日立本体との資本関係も全く無いとのことですのでやむを得ない経緯なのでしょう。

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職能の獲得と経験

先のノギスに関する、クソリアリズム的小論ですが、自分でもアホクサと思いつつMacのキーを叩いたのでしたが、この種のチップを書き始めたらいくらでもでてきそうで、程々にしないといけませんね。

しかしこれらは一見何気ないものに思えても、実は現場においては有用なことが多いものです。
そうでありながらも、意外と気付かず鈍くさい方法を取り続けるということもあるでしょう。

職人もモノづくりに向かうその思考スタイル、あるいは手の捌き、道具への関わり方、そうしたものは千差万別で、私も他人の手法を視てるとすごい、すごい、と感心することも屡々ですし、逆に鈍くさいことしてるな、と思うこともあるものです。

ある程度の規模の木工所であれば、親方、兄弟子、あるいは後輩と、様々なキャリアの職人の共同体的な職場状況で多くのことを学ぶことができます。

私は木工を生業として生きていこうと決め、その後いくつもの木工産地、あるいは木工家といわれる人を訪ね歩いたのでしたが、最終的に選んだのは信州の松本民芸家具でした。

理由ははっきりしています。
大量工業生産物ではない、本来の木製家具の製作現場の職人集団として形成され、意志のある若者を積極的に受け入れ、修行する場としては最適だろうと考えたからです。

そこでは熟練の親方から老齢の職人、勢いのある兄弟子にしごかれ、玄翁で叩かれながらも、彼らの仕事を盗み見し、仕口の加工法、段取り、あるいは巧緻な逃げなども含め、多くの事を学ぶことができたものです。

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佐藤俊介 《Bach 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ》全曲演奏

秋の好日、浜離宮朝日ホールでの『佐藤俊介 Bach 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ』を聴いた。

佐藤さんは以前より古楽器による演奏団体、オランダ バッハ協会のコンサートマスターをしており、その頃から注目していた演奏家だったが、本年6月にオランダ・バッハ協会の栄誉ある芸術監督の座に就き、今回の日本国内ツアーはいわば凱旋公演のような趣の演奏会だ。

しかもバッハ・無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの6曲を演目に選ぶという力の入れよう。
もう、こうなれば四の五の言わずに聴きにいくしかない、との思いで駆けつけた。

浜離宮朝日ホールは久々だが、リサイタルの劇場としては規模も適度なホールで音響も悪く無い。
立地は築地市場の隣なので、然るべく寿司などを腹に収めてから入場するにはもってこいだしね。

あまりたらふくに満足しちゃうと眠気を催すのでマズイだろうが、パンフレットのページを繰る音さえ憚れるような雰囲気だったし、なんの、この日の演奏は緊張感にあふれ、18世紀半ばに描かれた五線譜から読み解かれ、バロックヴァイオリンから放たれる厳しく、あるいはまた優雅な調べは、天上から舞い降りる神の教えのように、充実した3時間余の時間を楽しむことができた。


遠目では良くは確認できなかったが、佐藤さんが手にするのはバロックヴァイオリン(私の席は前後の真ん中、左右の中央部)。

ネック部分はやや太く、指板がモダンヴァイオリンが黒檀なのに対しネックと同じ素材(メープル?)に象嵌で模様が施されており、柔らかく暖かみのある音色が特徴的でバロックヴァイオリンならではのものだったようだ。

たぶん、この音色の違いはヴァイオリン本体の違いとともに、パンフレットにも記されていたがガット弦であることでの響きの柔らかさに繋がっているのだろう。

佐藤さんは元々はモダンなヴァイオリン奏者として研鑽を積んできたわけで、たぶんこの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータも最初はモダンヴァイオリンで弾いていたのだろうと思う。
しかし今はオランダバッハ協会に所属しているという事を越え、自身の積極的な選択からバロックヴァイオリンを弾く。

ガット弦という自然素材ならではの困難はむしろ、毛の数が少ないというバロック弓と合わせたとき、良い響きを醸すとも語っていて、一方彼自身は五線譜はただの記録でしか無く、21世紀に生きる自分の解読と奏法で弾くのが私のスタイル、と語る潔さと対比したとき、その深遠な世界をのぞき見る思いがしてくるではないか。


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木材加工におけるノギス

木工加工でノギスを用いる意味について

私はたとえ有機素材を対象とする木工にあっても、その制作過程における基本的なスタイルにはプロダクト的な思考が欠かせないと考えています。

もちろん、木工製品の評価や魅力というものは意匠であったり、フォルムであったり、素材感であったりと、工業製品には無い美質や感性に訴える領域が重要であることは言うまでもありません。

構想から設計段階においては自身の信ずるフォルムを練り上げ、あるいは美質の追求をとことん行いつも、しかし具体的な設計においては、そうしたプランを木工加工プロセスへとロジカルな思考で落とし込まねばなりません。

なぜなら構築的な性格を持つ木工、機能性をも求められる家具においては加工精度の高さは所与のものでなくてはならないからです。
そうした必須の条件を満たしてはじめて、目的とするフォルムを生み出し、ねらった美質も醸されてくるというわけです。


ここ数回にわたって展開しているノギスによる枘の計測という状況を事例として、具体的に考えてみましょうか。
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《小型ノギス》木工加工向けのカスタマイズ

ノギスの先端・ジョーのカスタマイズ化

木工作業における小型ノギスですが、使い始める前のカスタム化について少し触れておきましょう。
小型ノギスを木工加工作業で用いる場合、買い求めた時の状態では使い勝手は良くありません。

木工作業における小型ノギスの用途も様々です。
その中でも部材断面の寸法を計測するケースが多いと思いますが、次いで多い測定対象は枘加工での枘の寸法ではないでしょうか。

そこでここでは枘の寸法を計測する際のノギスについて考えて見たいと思います。

丸鋸昇降盤での枘加工のような事例では、カットした鋸のアサリ部位にノギスのジョーを挿入し、その厚み、幅などを計測することがよくあると思います。

枘を加工し終えれば、厚みも幅も容易に測定できますが、加工途上では鋸を入れたアサリ幅の溝(2.2〜3.0mm)があるだけで、ここにノギスを挿入して計測しようとしても、そのままではノギスのジョー先端はアサリ溝幅より大きいために挿入できません。

そこでこの丸鋸による切削で付けられた溝に挿入可能なところまでジョー先端を切除せねばなりません。

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OEMでも ちょっと意外なクォリティだった《小型ノギス》


画像の説明(上から)

  1. 200mm仕様のちょっと大型のノギス
  2. 150mm仕様の標準サイズのノギス
  3. 100mm仕様の小型ノギスA(Bad)
  4. 100mm仕様の小型ノギスB(Bad)
  5. 100mm仕様の小型ノギスC(Bad)
  6. 100mm仕様の小型ノギスD(Good!)

ノギスは木工に限らず、精度が要求されるモノづくりの作業においては欠かせない大切な計測器です。
150mmほどが計測できるサイズのものが一般的ですが、木工でのホゾ加工などではポケットサイズの〈100mm〉という仕様のものが何かと好都合なものです。

オンラインでもホームセンターでも数種の小型のノギスが市場展開されていますが、その多くはバーニア目盛りが打たれたスライダーと呼ばれる可動部分の上下のパーツは“ネジ止め”になっているものが主流になっているかと思います。

これがいけません。
やがてはこの小さなネジは緩み、目盛り精度が崩れ、さらには脱落して使用不能になってしまうこと屡々です。

木工職人歴ン十年の間、お釈迦にしたポケットノギスの数、たぶん2桁にもなるでしょう。
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天板止め コマ金具(オリジナルな クランク型金属製)の頒布

前回紹介したクランク型金属製のコマ金具ですが、いくつかの問い合わせがありました。
その多くはこうした金具は市場には出回っておらず、入手できないものか、といったものです。
確かにあらためてググってみても、ヒットするのはこのようなクランク型のものは前回記事で紹介した小さな米国製のものしかなく(国内での販売は無いようです)、国産では皆無です。

そこで、私の手元に若干の余剰もありますので、希望の方に頒布させていただきます。

数に限りがありますので、予定数に達した場合、先着順で締め切らせていただきます(このBlogで告知します)

《コマ金具》

  • 素材:鋼鉄製
  • 仕上:GB色メッキ
  • Size:25×35 2t 木ねじ下穴;5×15 mm
  • 縦、横 2種
  • 頒布の単位:縦、横 ともに50個単位
  • 頒価:1個、60円(税込)、送料別途(ゆうパック料金)

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