工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

刃物研磨に見る職人像

今日は武蔵野地域の百貨店での展示へ向けての搬送、会場セッテイング作業でしたが、昨日とはうってかわっておだやかな晴天に恵まれ、ラッキー 。
会場近隣の小学校では入学式があったらしく、そこかしこに晴れ着に身を包んだ就学児童の親子を見かけた。毎年のことなれどとても微笑ましくこの子達の未来に幸あれと祝福を送りたくもなる。そのほとんどが父親も含めた3人連れであることに気づいたが、あえて会社を休み子供の晴れの席に同席してやりたいという親心なのだろうが、少子化、男女機会均等法、ニューファミリー(旧い言葉ですが)のありふれた姿なのでしょう。
さて、今日は刃物の研磨に見る職人像、という記述です。
ボクが工房を構えたのは郊外の田園地域の一角でしたが、偶然にも隣家が刃物の研磨業を営んでいる職人さんだったのです。

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金具の悩み LAMELLO SIMPLEX


先のエントリーに繋がる金具のこと。
今回はある顧客の要望で、ベンチとスツールを結合させて広く使いたい、との要望をどう叶えるのかの解決方法です。
簡便に、しかもタイトに、という条件でいろいろ考えたあげく、編み出した手法がこれ。
以前、ちら、とご紹介しました。LAMELLOの機能部品(HAFELEではコネクターと称し、LAMELLOではSIMPLEXと称するようです)を使ったものです。
これは15年ほど昔にこの「LAMELLO TOP10」を購入した時に1個サンプルとして付属してきたものですが、頭の隅っこに置いてはあったものの、使う機会がないまま経過。
この度晴れてそのチャンスが訪れたということで、その意味においてはありがたいお客ではありました。

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鉋くずと職人の技量

鉋くず
写真は作業台の前の鉋クズです。汚くてスミマセン。
木工所の手作業場では親方はじめ弟子達がアテ台(作業台のこと)を並べて仕事をしています。
そこへ訪ねてきた人がそれぞれの仕事ぶりをしばらくながめてから、アテ台の周りに山のような鉋屑を多く出している職人を指して、親方に一言。「あの職人は1番良く仕事をしてるね・・・」と。
親方は困ったような顔でつぶやく「あいつは鈍くさいやっちゃ」
「?、はぁ。」
「いやね、仕事が上手くて速い奴はあんなに鉋くずは出しゃしないものよ。余分な仕事をしてるだけさ」

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東京の桜

Table
今日は納品搬送で上京。都心の桜はちらほら、1分咲きといったところでした。今週末の花見は少し早いでしょう。来週末あたりが見頃でしょうか。
2個所への納品でしたが、いずれもマンションでのお住まい。
こういったところで困るのは大きなテーブルなどの搬入アプローチ。
やはり予想していた通りに難儀な搬入作業でした。
持っていった台車もあまり役立たず。結局手作業での搬入になりましたが、無事傷つけることなく納品できたので安堵したのでしたが、教訓その1,受注するときは、お住まいへのアプローチを詳細にわたり聞いておく、ということですね。

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ウォールナット テーブル 制作 その6

テーブル
昨日ウォールナット テーブルが完成しました。さっそく大阪へ配送手続きを済ませる。
ある運送会社のミニ引っ越し便というタイプです。ドライバー+1名 ですので、届け先の指定する部屋まで設置してもらえます。
通常であれば極力自車便で配送するのですが、展示会が直後に控えていますので、客の許しを請い、業者に託しました。
その代わり天板などは厚めの合板でしっかりと覆うなど、がちがちに梱包しました。
この天板は脚部 幕板とはコマ(金具)にて緊結させています。
幕板に抽斗を設けるという仕様でしたので、このような手法を取りました。

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小川幸彦 陶芸の世界 (追補)

磯ざきせいろ
急に東京都内への納品が決まったり、大阪への搬送があったりと、梱包作業で追われた1日でした。
来週には相模大野の百貨店での展示が控えているというのに、準備も滞っています。
にもかかわらず、2月に1度の頻度の病院通いは欠かせません。
いえね。少し喘息を患っていまして呼吸器科に通ってるのですが、担当のドクターがめずらしくもマスクをしていた。聞いてみるとやはり花粉症とか。呼吸器科の先生も花粉症になるんですか、と口から出そうだったけど止めときました。
帰路がお昼近くになったので、近くの蕎麦屋に立ち寄ることにしました。
島田市内の「磯ざき」というお店(参照
客をお連れしたり、近くを通りかかった時に立ち寄る蕎麦屋で開店当時から懇意にさせて頂いています。

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陶芸家 小川幸彦 回顧展

陶芸家 小川幸彦さん(1998没)の七回忌の機会に回顧展が地元島田市で開催されることになりました。
会場は「島田市博物館」、8月6日〜9月25日の会期です。

多くの方にご覧いただけるようご案内します。

小川幸彦 陶芸の世界
 〜須恵器から志戸炉焼きまで〜
・会期:8/6(土)〜9/25(日)
・会場:島田市博物館 (問い合わせ:0547 371000
【博物館講座】
・開催日:8/28(日)
・内容:小川幸彦の作陶について
・講師:阿部和唐(陶芸家)、鈴木正彦(陶芸家)

今日は少しこの小川さんとの交流を話してみましょう

1989年頃だったか、静岡市内の良く知られた飲食店の新規店舗内装を請け負い、カウンター、テーブル、椅子などを制作させていただいたのでしたが、小川さんとはこのオープニングパーティーでご紹介を受けてからの交流でした。

最初の印象はむき身の日本刀が振り上げられているかのような人で、あまり良い印象ではなかったというのが本音です。

ボクの手がけた家具へのいくつかの評価を皆の前で披露されたのでしたが、このことがあまり良い印象ではなかったことに繋がったのかもしれません。
決して酷評というものではなく、造形的な領域での批評であったのですが、それは見事に正鵠を射るもので、「この男は一体何者なのだ。陶芸家のくせに木工のことがいやに詳しい…」たじたじとさせられるものでした。

小川幸彦3
炉器凡字文瓶子

小川幸彦2
炉器線文偏壷

小川幸彦1
志戸炉釉大鉢

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ウォールナット テーブル 制作 その5

鉋がけ
天板の仕上げ、鉋がけです。
テーブルという家具の最も重要な部位の仕上げですね。
かつて、Webサイトを公開した時にどこかで鉋がけについて触れたこともありますので重複するかもしれませんが、無垢の家具制作においては要諦でもありますから、簡単にではありますが考え方について少し記述します。
今回のブラックウォールナットの天板は1.8m × 0.9m というボリュームですが、2枚矧ぎというかなり高規格の構成になりました。
この材木は、5年ほど前に原木を求め製材管理してきたものでしたがとても材質が良く、製材の現場では1枚、1枚挽き裂かれるたびに小躍りしてその品質に感嘆の声を上げたものでした。
1本の材木から製材された板で、しかも隣り合わせの部位を用いて2枚矧ぎにしていますので、とても自然な感じで矧ぎ合わせることができました。
うちでは内外の様々な広葉樹を用いますので、鉋がけという作業を通してそれぞれの材種についての感触を得ることが出来ます。木はそれぞれに固有の細胞構成を有していますので、鉋を掛ける時のフィーリングで、それぞれ固有の性格というものを教えられます。
このブラックウォールナットという材種はあらゆる広葉樹のなかにあって最高の品質を有するということは、様々な要素から語られてきたことではありますけれど、ボクたち木工家、家具職人にとってはやはり鉋を掛ける時にその性質というものを身体を通して感じることができます。
文章化することに長けた文筆家ならまだしも、ボクなどが書き記してもなかなかこのフィーリングというものは分かっていただけるものではないでしょう。自身で鉋の技能を修得し、実際これほどのボリュームの天板を削り上げねば、理解して頂くことは無理かもしれない。
いえ、何も木工職人の特権的立場からの物言いをするつもりはないのですが、やはり熟練技能の世界の共通言語でしかあり得ないと言うことで勘弁願うしかないかもしれません。

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春キャベツの休日

ロールキャベツ
自営業というのは日曜日であってもなかなか業務から離れられないというのが常というもの。かてて加えてブログなぞに手を染めてIT社会のなかで浮遊するということは現代的快楽の一つでもある反面、心身でのストレスを抱え込むというものです。
そこで心身のチェンジが必要になります。何でも良いのですが、調理というのは格好の気分転換です。
料理とは言っても、貧乏暮らしのB級グルメ。数年前、「清貧」という言葉がメディアに氾濫したこともありましたが、もともとそのような倫理的思考などとは縁遠いので、あくまでチープな普通の素材で料理を楽しみ、己の舌を喜ばしてやろうという純粋な欲望に従うまでのことです。
八百屋には春野菜が出回ってきました。昨日立ち寄った店では早くも筍がそれなりの価格で売られていましたが、地元のものが出回るまでの辛抱です。
まずは春キャベツを求め、今日はロールキャベツです。
ボクにとって青春時代のロールキャベツとは、新宿アルタ裏(当時はそんなビルなかったが)の「アカシヤ」の「キャベツ」です(そこのあなた、今ニヤケタでしょう。そうです、あの名物アカシヤの「キャベツ」です)。

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飾り棚と、現代住宅事情

飾り棚
ある美術骨董コレクターの顧客から木工品を観察させていただいたことがある。
写真のものがそれなのだが、所謂「飾り棚」あるいは「書棚」と称されるものだ。
ボクはこうしたものを拝観するすることは嫌いではない。
その顧客からはこれがどのような時代のもので、名のある木工家によるものなのかを鑑定して貰いたいということであった。
残念ながらボクはそれほどの鑑識眼を持ち合わせているのではなかったので、とりあえず写真だけ撮らせて頂き、あらためて然るべき人に尋ねてみようということでその場を凌いだのだった。
しかし明らかに骨董としては上物。材種は桑。造りも柱建ての飾り棚、麻の葉文様の透かし彫りが入った開き扉。天、中、地のバランスの良さ。
どう見てもそこらの木工職人の手になるものではなく、手練の指物師によるものであることだけは明らかだった。
ディテール以前にこの品が訴える品格の力というものが、圧倒してくるのだった。

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